私のフリーランス人生は、ランサーズに登録した2014年12月1日からはじまり、2020年5月後半にちょうど2,000日を迎えます。
7年近く、ひとつのお仕事をさせていただき、フリーランスとしてもうすぐ2,000日を迎えられることに今は、感謝しかありません。
そういえば自分ごとなのに、フリーランスの意味や語源についてあまり考えたことがなく、意味さえ知らなかったことに気づきました。
そこでコトバンクで調べると、次のように書かれていました。
〘名〙 (free lance)
① 中世のヨーロッパで、主君をもたずに自由契約で諸侯に雇われた、主として騎士。
② =フリーランサー
出典 精選版 日本国語大辞典
(フリーランスとは – コトバンク)
中世の騎士、これが語源なのかとしきりに感心していたとき、ふと「待てよ、この話、どこかで見たような……」という気がしました。
しばらく考えて思い出せたのが、Cool Workersの「フリーランスで働くという意味。言葉の由来、海外事情などと合わせてご紹介」に載っていたお話でした(ぜひご参照いただければ幸いです)。
日々さまざまな文献に触れるため、過去の情報はどんどん塗り替えられ、忘れていくことをここで再認識した次第です。
久々にアクセスして読むと
・freeは自由と訳せる(フリーランスは自由)
・現代のフリーランスは中世の傭兵の生き方と相通ずるものがある
という内容に共感したり
・アメリカは労働人口の3人にひとりがフリーランス
・ミレニアル世代の半数がフリーランス
との情報が、ちょうど別の執筆業務でアメリカの雇用制度について調べたばかりだったため身近に感じ、ピンポイントに心に刺さりました。
ランサーズの「フリーランス実態調査2018年版」では、アメリカのフリーランス人口は5,730万人、労働力人口の35%にあたる、一方日本は1,119万人、労働力人口の17%と判明しています。[1]
アメリカは日本よりもフリーランス人口が圧倒的に多いわけですが、そのことについて前出記事では次のように分析していました。
何事も合理的かつ契約ベースで物事が進むアメリカでは、フリーランスという働き方を選択する人も多いのかも
出典:「フリーランスで働くという意味。言葉の由来、海外事情などと合わせてご紹介」(Cool Workers、2018年11月5日更新)
一理ある……と私も思ったのですが、「何事も合理的かつ契約ベースで物事が進む」については、日本も基本的に変わらなくなってきた事柄ではないかと感じました。
すべてにおいてそうとは言い切れませんが、合理的でないと却下される事案もありますし、契約書に印鑑をついてはじめて多くの物事は本格的に動き始めます。
ではなぜ未だに大差が生じているのか、それは雇用制度の違いでしょう。
次章以降、日本とアメリカの雇用制度の違いを説明いたします。
目次
日本の雇用制度の特徴
新卒一括採用+終身雇用+年功序列が主流
一部を除き日本は原則、大学、高校を出て就職する場合は在学中に面接を受け、内定を獲得して、卒業翌月の4月に入社します。
多くの場合、面接等で人物を見て合否を決めていくメンバーシップ型採用で、特に学生は社会経験がないもしくは乏しいため、可能性を見極めるポテンシャル採用が主流です。
総合職・一般職に分けられ研修、OJT[2]を経て配属先が決められます。
総合職は幹部候補生として、半年~数年でさまざまな部署を経験します(ジョブローテーション)。[3][4][5]
そのため就職してもなかなか、本音で希望する職に就けなかったりします。[6]
また給与体系もおおむね、年功序列です。年齢給、勤続年数で徐々に上がっていきます。[7][8]
崩壊していると叫ばれるなか、公務員、民間でも一部上場、大手企業などは未だに、一度就職したら定年退職までずっと勤続できる終身雇用が定着しています。[9]
労働者の権利が守られている
特に労働組合がある企業では毎年2月頃、賃金アップの交渉が行われ(春闘もしくは春季労使交渉)、勤務時間や職場環境改善についても個人に代わって交渉をしてくれます。[10]
また日本では労働基準法(労基法)、労働組合法、労働関係調整法があります。
この3つの法律を労働三法といい、一定条件の下では労働者を使用者側が自由勝手に解雇できないようになっているなど本当に多々、守られています。[11]
このように組織に属して働く多くの方は、法や会社、組合の保護下にあります。
何かしらの大きなできごとや転機がないと、自分で自分を守るほかない点でハードルが高いフリーランスに移行することは、まずないと考えます。
アメリカの雇用制度の特徴
一言でいえばポジション採用
私も浅識だったのですが、関口定一中央大学教授(当時)によると、実はアメリカも昔は企業による学生の一括採用がなされていました。
アメリカの大手総合電機メーカーなどが、大学側から推薦された工学系専攻の学生らを訓練生として採用したのがはじまりのひとつだったそうです。[12]
いわゆる日本の国民健康保険のような、原則的に国民全員が必ず加入する国民皆保険制度が存在しないため、アメリカでは、失業時の保障もないように思えましたが、調べてみると連邦失業税制度で守られています。[13]
そして、次の報道も記憶に新しいです。
連邦政府が19日発表した全米の失業保険申請は、14日までの1週間で28万1千件と前週から35%増えた
出典:「米、失業保険の申請急増 中西部では前週の20倍超に」(日本経済新聞、2020年3月21日)
そんなアメリカでは総合職・一般職ではなく、いわゆる“後釜”を探すリプレースメントなどの職務に合った人を採用します。
これをジョブ型採用といい、先のメンバーシップ型採用とは対とされています。
もちろん給与も職務ごとに決められます。[14]
エンプロイメント・アット・ウィル
日本では「随意雇用」といわれますが、インディアナ州弁護士の本間道治氏によるとアメリカ雇用法では、随意雇用が大前提となっているとのこと。
エンプロイメント・アット・ウィルは、使用者と労働者、双方の希望が合致すれば雇用され、お互い必要がなくなれば関係が解消されるといった内容です。[15]
すなわち会社都合解雇もリストラも、ボスが独断で自由に行うことができ、この点が日本とは異なります。
一見フェアではなさそうですが、労働者もまた、労働条件や職場環境などが悪くなれば日本のように2週間前までに退職願を出さずとも即時、自由に辞められ、会社や職を選び直せます。[16]
会社員でもフリーランスでも状況やリスクに差はない
日本とアメリカの雇用制度はこんなに違うということを、具体的におわかりいただけたと思います。
そしてアメリカの労働者は、会社に雇用されても、フリーランスとして活動しても、さほど取り巻く状況やリスクは変わらないことにも、もう気づかれたでしょう。
日本とアメリカどちらのフリーランスも、クライアント様とは随意契約であり、プロジェクトや仕事が終了してしまえば、そこで一旦契約はなくなります。
また、契約条件や取り巻く環境が変わったり、リスクが高まったりすれば、自ら交渉し改善要求。
希望がかなわなければ、残っているプロジェクト・仕事が終了したところで自由に関係解消可能です。
よってアメリカでは、サラリーマンになってもフリーランスになっても自分で自分を守るしかなく、フリーランスに移行する際のハードルはそれほど高くないのです。
日本でも雇用制度が変わる?
経団連と大学関係組織で構成された、採用と大学教育の未来に関する産学協議会の報告書「Society 5.0 に向けた大学教育と採用に関する考え方」では、将来的なジョブ型採用の推進を提案しています。
その一環として、一部の希望する大学と企業において、大学院生(修士・博士)を対象としたジョブ型採用につながる長期インターンシップの試行に合意したとのことです。[17]
これまで日本で長期に亘って行われてきた新卒一括採用だけでなく、今後はジョブ型採用を含め、採用形態が多様化していくことでしょう。
また、働き方改革の一環ではじまった同一労働同一賃金の制度によって、年功序列による給与体系も、順次見直しが進んでいくと思われます。
会社がどこまで従業員を守りきれるか、その結果によって今後、日本でもフリーランスへ転身されるサラリーマンが増えていくでしょう。
まとめ
日本のフリーランス人口(割合)はこれから、確実に増えると私は予想しています。
日本もこれから雇用制度は大きく変化し、フリーランスに移行する際のハードルは今よりフラットになっていくと思えるからです。
仕事を獲得していくのは厳しくなるかもしれませんが、語源のとおり中世の騎士になったつもりで日々切磋琢磨し、誰よりも“いい仕事”をしていこうと思います。
<参考・参照サイト>
[1] 「【ランサーズ】フリーランス実態調査2018年版」[PDF](p.5)
[3] 「金融業界で働く 「時代の変化を感じる」金融の仕事8選」(ジョイキャリア、2020年4月6日)
[4] 「佐藤優「一般職を選んだ方が幸せかもしれない」」(東洋経済、2020年2月27日)
[5] 「ジョブローテーション制度とは。適切な期間は?目的とメリット・デメリットを解説 | 人事のキホン4」(NOCアウトソーシング&コンサルティング株式会社、2016年8月30日)
[6] 「新入社員を苦しめる「配属ガチャ」発生の背景」(Livedoor NEWS、2020年4月13日)
[7] 「年功序列型の賃金とは 日本型経営「三種の神器」」(日本経済新聞、2019年7月3日)
[8] 「初任給「上げた」7割 年功賃金見直しは5割に」(日本経済新聞、2019年7月3日)
[9] 「コロナ危機で中堅・中小企業を「正しく救う」ために政府は何をすべきか」(YAHOO!ニュース)
[12] 「アメリカ企業における新卒採用─その実態と含意」[PDF](独立行政法人労働政策研究・研修機構、p.2)
[13] 「米国の失業保険制度」[PDF](独立行政法人労働政策研究・研修機構)
[14] 「アメリカの採用プロセスと採用活動成功のための5つのポイント」(PASONA)
[15] 「特集 アメリカでしごと エンプロイメント・アット・ウィル――日米雇用法の違い」[PDF](一般社団法人日本在外企業協会)
[16] 「At Willの原則」(PASONA)
[17] 「採用と大学教育の未来に関する産学協議会・報告書「Society 5.0 に向けた大学教育と採用に関する考え方」」[PDF](一般社団法人 日本経済団体連合会、2020年3月31日、pp.36-41)
この記事を書いたのは
- 本業ライター。2014年12月、Lancers登録を機に業務開始。主にビジネスやライフスタイル関連の記事を執筆。必要に応じて取材・撮影もこなす。
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