私は発達障害(自閉症スペクトラム障害、ADHDの併発)の影響もあり、普通の仕事が難しいと感じてフリーランスという働き方を選びました。フリーランスは「得意を生かし、苦手なことはしない」という選択をしやすいため、発達障害の人でも働きやすい業務形態だと感じています。
<発達障害とは>
発達障害は、主に自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)のことを指しています。知的な問題は無いものの、全体を通して身体が疲れやすく繊細なこと、コミュニケーション面において人よりもエネルギーを使うことなどが特徴として挙げられます。
どうして発達障害は普通の仕事が難しいのか
一般的な仕事は、「何かに秀でること」よりも「まんべんなくできること」を求められます。事務仕事を例に考えると分かりやすいですが、あまり難しくない仕事をソツなくこなし、ミスをしないことが大切になります。しかし、発達障害の人は「得意なことなら集中力が続くけど、苦手なことは練習してもできるようにならない」「能力のばらつきが大きい」のが一般的です。苦手なことを人並みにできるようになるには時間がかかりますし、苦痛を伴います。
また、発達障害の方の多くは慢性的な疲れやすさや体調不良の問題を抱えています。さらにコミュニケーションにおいても一般的な方よりエネルギーを使います。その結果、心身共に「充電切れ」の状態になりやすいのです。
ただし、一言で「発達障害」と言っても程度や診断名によって症状や困難さは様々です。発達障害以外の性格面や育ってきた環境の影響もあるため、この記事に記述していることが全ての発達障害の方に当てはまるわけではありません。
フリーランスとして働く「メリット」
スケジュールが自由
体調を崩しやすく、マイペースに作業を進めたい人にとって重要な特徴です。例えば、フリーランスのスケジュール的なメリットは以下のようなものがあります。
・急な体調不良にも対応できる、休んでも人に迷惑をかけない
・自分の体調に合わせたスケジュールを組むことができる
・ゆっくりしたスピードで仕事をしても怒られない
・自分のペースを乱されることがない
とにかく「やるべきことを納期までに終わらせれば良い」という業務形態なので、それ以外の面ではかなり融通が利きます。
通勤に消耗しない、頻繁に外出する必要がない
発達障害の人(特に自閉症スペクトラム障害)は、きっちり行動するのが得意な反面、臨機応変な行動が苦手と言われています。電車通勤をする場合はどうしても遅延が発生し、迂回経路を検索したり、会社や取引先に連絡したり、上司に謝ったりと様々な「臨機応変な業務」が加わります。これは一般の方にとっても負担になりますが、発達障害の人にとってはなおさら負担になると考えられます。
また、発達障害の人の中には嗅覚や視覚、聴覚が過敏な人が多くいます。電車の中は人が多く、感覚が過敏な人にとっては辛い空間と言えるでしょう。
フリーランスは家や近所のカフェ、図書館、コワーキングスペースなど自由な場所で作業ができます。そのため、満員電車に乗る必要もありません。通勤にエネルギーを使わなくて済むのは大きなポイントです。
コミュニケーションを取る相手を選ぶことができる
フリーランスは組織で仕事をする必要がないため、「この人と仕事したい」と思う人とだけ関わることができます。また、連絡手段も電話ではなくメッセンジャーやチャットワーク、スラックのみを使うことも可能です。そのため、
・納得できない上司と関わる必要がない
・仕事相手と無理に対面でのコミュニケーションをしなくても良い
・苦手な電話を使わなくて良い
というメリットがあります。職場の人間関係で悩まなくて済むため、ストレスがかなり軽減されます。
フリーランスとして働く「デメリット」
お金の管理が難しい
発達障害の人(特にADHDの人)は、お金の管理が苦手な傾向があります。しかし、フリーランスは家計の管理はもちろん、事業の収支、振り込み日や金額の把握、確定申告などを全て個人でやらなければいけません。一度コツを覚えてしまえば問題ありませんが、周りに聞く人もいない状態だと大変な思いをするでしょう。
対策は、事前に準備して分からないことは専門家に直接電話で聞くこと、経済的な余裕が出てきたら税理士さんを雇って苦手な業務を外注化することなどがあります。
不規則な生活になりがち
スケジュールの自由さが魅力のフリーランスですが、自己管理ができないと不規則な生活になりがちです。発達障害の人はただでさえ体調を崩しやすいので、生活が不規則になると体調が悪化する可能性があります。生活リズムをできるだけ一定に保つようにしましょう。
対策は、誰かと住むことや稼働時間を決めること。私は一人暮らしをすると夜中までダラダラ作業してしまうので、シェアハウスに住み、早起きの住人のリズムに合わせるようにしています。また、「作業は18時まで」と決めて、夜は作業しないように気をつけています。
サポートしてくれる上司がいない、仲間が作りづらい
会社員はミスをしても上司が助けてくれます。同僚も助けてくれます。しかし、フリーランスは誰も助けてくれません。ミスをしたら、誰もカバーしてくれません。そのため、自分のミスで仕事を失ってしまうこともあります。
対策は、コワーキングスペースやオンラインサロンなどでフリーランス仲間を作っておくこと。同業の仲間がいると、ちょっとした会話の中から仕事のヒントをもらえますし、営業代わりにもなります。フリーランス仲間は大切にしましょう。
気分のムラが大きいと収入が安定しない
「今日は気分が悪いから仕事をしない」「今日は調子が良いからたくさんやろう」といったように、作業をモチベーションに頼ると収入が安定しません。発達障害の人は気分のムラが大きいことも多いので、モチベーションに頼らずに作業できる環境を整えることが大切です。
対策は、やる気のスイッチが入る場所を確保しておくこと(コワーキングスペース、お気に入りのカフェなど)、誰かとチームを組んで集中して作業することなどがあります。
駆け出しの頃は苦手な作業もする必要がある
フリーランスの特徴の一つに「得意を生かし、苦手なことはしない」があります。しかし、それはある程度仕事が波に乗ってからのこと。例えばライターの場合、最初は営業から調査、執筆、編集、校正校閲など全ての作業を自分一人でこなす必要があります。私は執筆作業は好きですが、営業や編集作業はあまり好きではありません。それでも外注化する資金的余裕がないので、自分でやる必要があります。資金面である程度余裕ができるまでは、苦手な作業もこなす必要があります。
フリーランスという仕事の具体例
「フリーランスは発達障害の人にも向いている」とお話してきましたが、具体的にフリーランスにはどんな職種があるのでしょうか。代表的な職種についてご説明します。
ライター
インターネットや書籍で調べ物をし、指定された分量で文章を執筆する仕事です。大学のレポートと要領が似ています。初心者にも始めやすいフリーランス的働き方の一つです。
様々なことに興味がある人、文章を書くのが苦痛じゃない人に向いています。一つのことに強い興味を持つタイプの方は特化型のライター、興味が移り変わる人は雑食型のライターになることがおすすめです。
ただし、発達障害の方がライターをやる場合は懸念事項があります。それは、最初のうちは小さな案件を組み合わせて生計を立てなければいけないため、多くのクライアントさんと関わる必要があることです。連絡や納品作業が頻繁にありますので、クライアントさんとのやりとりに消耗する可能性があります。
WEBサイト製作
企業のホームページを製作する仕事です。1つのホームページを作るのに数週間〜数ヶ月かかるため、忍耐力の必要な仕事です。また、専門的知識が必要なので勉強する必要があります。一人で黙々と作業したい人には向いていますが、様々なことに興味が移り変わる人には難しいかもしれません。
デザイナー
広告などのデザイナーもフリーランスの代表的な仕事です。ライティングやWEBサイト製作と比較すると、感覚的にできる仕事が多いです。ただし、発注数が少ない(案件が取りづらい)ので、コネ作りや営業も大切になります。
ブロガー、アフィリエイター
個人のサイトで文章を執筆し、主に広告で収益を上げる方法です。全てが自由で個性を出しやすく、クライアントワークが苦手な人に向いています。ただし収益が出るまでに長い時間がかかる特殊な仕事です。その上、必ずしも収益が出るとは限らないので、収入・将来性ともに不安定な職種と言えるでしょう。
まとめ
発達障害の人がフリーランスという働き方をする最も大きなメリットは、「得意を生かし、短所を伸ばそうとしなくて良いこと」だと思います。苦手なことを全て排除するのは難しいですが、徐々に減らしながら快適な生活を目指すことは可能です。ご自分の強みを生かして、ストレスの少ない生活を作っていきましょう。