会社員を辞めてフリーランスになる!前に知っておきたい健康保険の基礎知識


会社員を辞めてフリーランスになる!前に知っておきたい健康保険の基礎知識

会社員の時は大して気にしていなかった健康保険。フリーランスになると、ご自身で健康保険を切り替えて、毎月支払いをしていかなければなりません。

 

実は、どの健康保険が適しているかは人によって様々で、加入する種類によって毎月の保険料額も違ってきます。

 

この記事では会社員からフリーランスになる方に向けた、健康保険の基礎知識をご紹介します。

 

 

フリーランスが入れる健康保険

 

会社員からフリーランスになる場合に入れる健康保険は、以下の4つです。

 

・会社の任意継続保険者
・国民健康保険
・健康保険組合
・配偶者の扶養家族

 

どのような違いがあるのか、詳しくみていきましょう。

 

 

 

 

会社の任意継続保険者

 

前職の健康保険に継続して入る方法です。協会けんぽに2ヶ月以上継続して加入していると、退職日の翌日から20日以内であれば任意継続保険者の申請ができます。

 

加入できる期間は2年間で、保険料額も2年間変わりません。扶養家族がいる場合、他の健康保険よりも「世帯全体の保険料額」を安く抑えられることがあります。

 

保険料額の計算方法は、

 

退職時の標準報酬月額×9.63%~10.61%

 

となっており、自宅住所地を管轄する都道府県ごとに異なります。

 

基本的に在職中と同じ給付内容となりますが、傷病手当金と出産手当金は受け取れません。また、一度でも保険料の支払いが滞ると、任意継続保険者の資格は失われます。

 

 

<参考・参照サイト>

・「任意継続とは」(全国健康保険協会) 

 

 

 

 

国民健康保険

 

個人事業主や、その他の健康保険に加入していない方を対象とした健康保険です。

 

保険料額は毎年6月に決定し、自宅所在地の市区町村によって異なります。主に「世帯所得」「加入人数」「40~64歳の人数」を基準に計算されます。

 

国民健康保険の特徴は、所得に比例して保険料額が変わることです。年間の収入が増えると保険料額が高くなり、年間の収入が減ると保険料額が安くなります。

 

また、国民健康保険には「扶養家族」という概念がないため、世帯の一人一人が国民健康保険に加入することになります。そのため、扶養の親族が多い方は保険料の負担が増える傾向です。

 

 

<参考・参照サイト>

国民健康保険【2018年版】

 

 

 

 

健康保険組合

 

健康保険組合は、健康保険に関わることを運営する公法人です。

 

フリーランスの代表的な健康保険組合は、文芸美術国民健康保険組合(以下、文美国保)です。文美国保に入るには、組合加盟の各団体の会員でなければなりません。

 

平成29年7月の情報によると、「デザイナー健保会」「日本イラストレーション協会」「日本デジタルライターズ協会」など全国で64団体が加盟しており、所定の条件を満たしたデザイナーやクリエイター、ライターなどが加入できるようになっています。

 

文美国保の特徴は、収入に関わらず保険料額が一律であることです。そのため、高所得の方は国民健康保険よりも健康保険組合に加入した方が保険料を安く抑えられます。

 

健康セミナーや人間ドックの割引が受けられるなど、文美国保独自の特典もあります。

クリエイティブ系フリーランス必見!「文芸美術健康保険組合」とは?
でも詳しく紹介していますので、読んでみてください。

 

 

<参考・参照サイト>

社団法人 全国国民健康保険組合協会

文芸美術国民健康保険組合

 

 

 

 

配偶者の扶養家族

 

被保険者である親族の収入で生活をしていて、ご自身の年収が130万円未満の場合には、配偶者の扶養家族の認定を受けられます。

 

被保険者1人分が世帯全体の保険料となり、扶養家族の保険料はかかりません。年収は過去の収入ではなく、認定された以降の「見込み年収」を基準とします。

 

扶養家族になると、毎年「被扶養者調査」が行われます。扶養家族の条件を満たしているか調査し、条件を満たしていないと被扶養者から外されます。

 

フリーランスとして年収が130万円を超えない見込みであるなら、配偶者の扶養家族に入ることを検討してみると良いでしょう。

 

 

<参考・参照サイト>

・「健康保険(協会けんぽ)の扶養にするときの手続き」(日本年金機構)

・「ちゃんと知ってる?健康保険の扶養家族について」(働く人に知ってほしい「社会保険・労働法・税金」)

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健康保険に入らなかったらどうなる?

 

日本は「国民皆保険制度」となっており、すべての国民はなんらかの健康保険に入らなければなりません。

 

健康保険に入らないと、医療機関でかかった医療費が全額自己負担になり、最悪の場合、予告なく資産が差し押さえられることになります。

 

ここでは、健康保険に入らなかった場合の一例をご紹介します。

 

 

<参考・参照サイト>

「平成30年度版 国保のしおり」(江戸川区公式ホームページ)

 

 

 

 

健康保険料の支払いに関する督促を受ける

 

どの健康保険にも入らずに保険料を納めなかった場合、国民健康保険機構から保険料の支払いに関しての「督促・催告(とくそく・さいこく)」を受けます。

 

まず、自宅に督促状が届き、それでも保険料が支払われないと電話や訪問による督促が行われます。お住いの市区町村によっては、延滞した保険料に加えて、延滞金を請求される場合もあります。

 

 

 

 

医療費が全額自己負担に

 

次に「短期被保険者証」という保険証が発行され、さらに滞納が続くと「被保険者資格証明書」というものに代わり、医療機関でかかった医療費が全額自己負担になります。

 

健康保険を使わない治療は「自由診療」扱いです。自由診療は、医療機関が独自で医療費を決めるため、高額な医療費を請求される場合があります。

 

健康保険証がある場合の医療費は、実際にかかった医療費の3割負担で済みます。後日、健康保険証を持ち込めるのであれば、いったん全額自己負担にし、後日返金対応をしてくれる医療機関もあります。

 

 

 

 

預貯金や資産の差し押さえになる

 

それでも保険料を支払わずにいると、国保の給付の全部または一部が差し止められます。最終的には財産調査が行われ、予告なく資産の差し押さえになる可能性があります。

 

「健康保険料の支払いがもったいないから」

「ケガや病気もなく、医療機関にかからないから」

 

といった理由で、健康保険に加入しない事態は避けましょう。

 

収入によっては保険料の軽減措置もあるので、健康保険料の支払いが厳しい場合には、自宅所在地の市区町村の窓口に相談してみてください。

 

 

 

 

健康保険の保険料を抑えるためにできること

 

医療機関を使っても使わなくても、毎月、健康保険料を納めなければなりません。

 

健康保険の保険料を抑えるポイントは、以下の3つです。

 

・退職前に加入先を決める
・家族構成と予定収入から判断する
・青色申告をして特別控除を利用する

 

確認していきましょう。

 

 

 

 

退職前に加入先を決める

 

会社員からフリーランスになる場合、「開業届の提出」「国民年金の切り替え」「会計の準備」など、健康保険の加入以外にもやるべきことが山積みです。

 

会社を退職してから日が経ってしまうと入れなくなる健康保険もあるので、会社を退職する前に加入先を決めておきましょう。

 

また、会社を退職した翌月分から保険料の支払い対象になるので、保険未加入の空白期間を作らないようにすることが重要です。

 

 

 

 

家族構成と予定収入から判断する

 

健康保険の保険料は、主に「家族構成」と「予定収入」で決まります。

 

それぞれの健康保険の概要を把握した上で、まず扶養家族の人数を把握しましょう。「単身の場合」と「扶養家族がいる場合」では、最適な健康保険の加入先は違ってきます。

 

次に、今後の収入がどのようになるか目星をつけることで、「被扶養者」として加入すべきか、「扶養家族」として加入すべきかの判断ができるようになります。

 

生計が立てられるほど収入が見込めないのであれば、親族の扶養家族に入るのも手です。

 

 

 

 

青色申告をして特別控除を利用する

 

フリーランスになると、所得に応じた所得税を収める「確定申告」の義務が生じます。

 

確定申告には「白色申告」と「青色申告」があり、健康保険料を節約するなら「青色申告」を選びましょう。

 

青色申告には、「青色申告特別控除」という申告所得を65万円減らせる特典があります。青色申告特別控除を受けると、所得税と住民税が安くなり、健康保険料の所得税割が安くなります。

 

青色申告特別控除を受けるには、複式帳簿し、貸借対照表と損益計算書の提出をする必要がありますが、手間を考えても十分なメリットがあります。

フリーランスの青色申告はたった1つの条件さえクリアすれば3つのメリットが享受できる
で詳しく紹介していますので、読んでみてください。

 

 

<参考・参照サイト>

・「個人事業主の方へ 青色申告特別控除を利用しましょう」(すみだ税理士事務所)

・「青色申告で税金・国民健康保険税を減らす!!」(税理士法人あさひ 小山城東本部/MFクラウド公認メンバー)

 

 

 

 

働き方に合わせて健康保険を選ぼう

 

日本では健康保険に加入することが義務となっています。会社を退職した後には、健康保険の切り替えを忘れないようにしましょう。

 

健康保険を賢く利用するコツは、それぞれの健康保険の特徴をよく理解し、あなたの働き方にあったものを選ぶことです。

 

会社員からフリーランスになるタイミングで、ぜひ健康保険のことも気にかけてみてください。

 

 

 


この記事を書いたのは

Cool Workers運営部
Cool Workers運営部ライター
フリーランスや副業などの“自由なはたらき方”、税金、働き方改革に関する情報を発信しています。Cool Workers運営部は、様々な働き方をしているメンバーで記事を作っています。