フリーランスに求められるのは人と競わない、争わない力
私事ですがフリーランスになって丸5年、2019年12月1日をもって6年目に突入します。
フリーランスのみなさん、とくに私と同じライターの方は身に染みて感じていることかもしれませんが、ここ5年で仕事を獲得していくことがなかなか難しくなってきました。
早い話が同業者の増加。
ライターを生業とする方が年々増え、とくにクラウドソーシングサイトでの受注は本当に狭き門となってきたと実感しています。
私も仕事を獲得していくことの大変さを感じつつあります。
そんな中で、どうやって生き残っていくか、一緒にチームで活動させていただいている数名のライターと何かおもしろい展開はできないものか、などを執筆時以外は考えるようにしています。
そのとき私が大前提としていることが2つあり、それが「競わない」「争わない」です。
私は、人と競わない、争わない力こそが、フリーランスに必要なスキルと考えていますし、今の私の原動力となっています。
なぜ競わない、争わないことが大事なのでしょうか。
詳しく説明していきましょう。
目次
競わないとはブルーオーシャンを探すこと
デジタル大辞泉によるとブルーオーシャンとは、次のように説明されています。
デジタル大辞泉の解説
ブルー‐オーシャン(blue ocean)
経営学の用語で、競争のない未開拓市場のこと。新しい商品やサービスを開発・投入することで創出される競合相手のいない市場。
出典:「ブルーオーシャンとは」(コトバンク)
ブルーオーシャンを探す、言い換えるとブルーオーシャン戦略です。
これは2005年、W・チャン・キム、レネ・モボルニュ両氏により共著『ブルー・オーシャン戦略』で提唱されたものです。
ちなみに、日本では入山章栄さんらによって翻訳され、『[新版]ブルー・オーシャン戦略』としてダイヤモンド社から発行されています。
戦略とは、字のごとく「戦」を略すことですが、孫子は兵法で、
「是故百戦百勝、非善之善者也。不戦而屈人之兵、善之善者也」
と記しています。
意訳すると「戦わずして勝つに越したことはない」ということです。
つまりフリーランスは同業者といかに戦わずして、仕事を獲得していくかを考えることが求められているのです。
また、絵本作家として活動している西野亮廣氏も、著書『革命のファンファーレ』で次のように記しています。
他人と競った時点で負け。自分だけの競技を創れ。
出典:「革命のファンファーレ」(20ページ)
西野 亮廣 (著)
幻冬舎 出版 (2017年)
もし、あなたの現在地が同業者やライバルがウヨウヨしているレッド・オーシャンで、「どうもうまくいかないようだ」と実感されているのであれば、積極的に誰もいない海、未開拓の青い海へと移っていくこと、すなわち競わない力の発揮が求められているのです。
未開拓の青い海ですが、手あたり次第どういった方法でも開拓していっていいわけではありません。
フリーランスが絶対、手をつけてはいけない場所が実はあります。
それは最安値という聖域です。
最安値の受注で待ち構えているもの
小売業であれば「他店よりもお安くします」という宣伝文句で、価格競争を仕掛けることはあります。
一方で、フリーランスの最安値というものがいかに不毛か、すでにお気づきの方も多いと思います。
私の実体験ですが、安い価格で発注しているクライアントほど求めるものが多いです。
フリーランスになって1ヶ月もしないときに受注した案件が、以前の記事
「フリーランスライターで食べていけないと感じたら実践すべき6つのこと」(Cool Workers)
でお伝えした入力業務に続く記事単価最安値の案件でした。
当初の業務内容は単なる執筆でしたが、あとになってクライアントはSEO対策、バズる記事、異常なアクセス数までも求めていたことを知ることとなります。
現実的にいえばフリーランスは、価格に応じた制作物を納品すべきですし、クライアントもまた価格以上のものを期待すべきではありません。
しかし安価で委託しているクライアントにかぎって、価格相応では納得しません。
おまけに正当な評価も得られず、最悪、争いが生じます。
最安値というブルーオーシャンに足をつっこむと、そこで待ち構えている“求めるものが多いクライアント”に捕まった挙句、意図せず争いに巻き込まれ、不毛な結果を招くことになるのです。
ここまでは対クライアントについて述べましたが、対同業者についても同じことがいえます。
サラリーマンは同僚らと出世をめぐり競い合いますが、フリーランスになった日から競う必要はどこにもないのです。
フリーランスは一国一城の主ですから、スタンスとしては各国の首脳と似ています。
お互い仲良くし同盟を組み、情報交換し合うのと、仮想敵国をつくり孤立し、誰からも相手にされなくなるのでは、どちらが得策でしょうか。
やはり人と競争するのはやめるべきです。
そしてもうひとつ、争わない力について見ていきます。
争わないとは失うものを減らすこと
若気の至り、人として未熟、そのような理由で一度は誰しも、人と争った経験がおありでしょう。なかには相手から仕掛けられ、応じざるをえなかったケースもあるかもしれません。
かくいう私も、争いと無縁だったのかといえば、そうではありませんでした。
一冊の本と出会うまでは。
争うことで生まれる利益はない
その本とは私が一時期、書評記事の執筆を行っていたときに書店で手にとった『運の良くなる生き方』(以下、「当書」とします)でした。
著者である西中務氏は弁護士で、当書に次のように記しています。
「争わない」は弁護士の基本
意外かもしれませんが、「争わないほうがいい」とは、弁護士の基本です。
出典:「運の良くなる生き方」(51ページ)
西中 務 (著)
東洋経済新報社 出版 (2017年)
かつて争いや裁判があってこそ成り立つのが弁護士と考えていた私にとって、この一文は衝撃でした。
当書によると、司法試験に受かった者が学ぶ司法研修所では、紛争処理で優先すべきは「話し合い」「裁判に至っても和解」での解決と教えているそうです。
つまり、争いを避けるのが弁護士なのです。
争うと時間と労力を消耗する
実際に私も丸5年、フリーランスとして活動してきましたが、できるかぎり仕事上で争うべきではないと考えています。
なぜなら多大な時間と労力を消耗するからです。
以前、私が執筆させていただきました記事
「フリーランスライターで食べていけないと感じたら実践すべき6つのこと」(Cool Workers)
でお伝えしていましたが、修正依頼を出したところ猛反発され、お互い不毛なやりとりをする結果となったことがあります。
私はこれ以上のやりとりはメリットがないと判断し、途中で報酬を支払い中断、別の方に依頼立てしました。
感情をグっと抑え、結果的に争いを避けたからこそ、私はそれ以上の消耗を避けられたうえ、より良い後任の受注者とも出会え、良い記事を納品できたと考えています。
争うと人間関係も失う
もし仮に、先ほどの不毛なやりとりを続け、争いをやめなければお互い感情を害し、禍根を生み、業務を強制終了した挙句、クラウドソーシングサイト上で酷評をつけ合い、その酷評を見た新たなる(後任)受注者は私との契約を避けたことでしょう。
このように人間関係まで失いかねませんから、今まさにクライアントや発注者と係争中の方はぜひ、
・すでに失ってしまったもの
・今まさに失おうとしているもの
・争いをやめて得られるもの
を今一度、考え直していただければ幸いです。
まとめ
・信用
・利益
・時間
・労力
・仕事上のパートナー(クライアント、発注先)
など、仕事上で争うと失うものが多すぎることがお分かりいただけたと思います。
しかし何も失わないようにするため、相手の言いなりになる、我慢すればいいのかといえば、それは違います。
主張すべきことは主張しつつ、争いを避けねばなりません。
無理難題、理不尽なことを要求するクライアントの存在もよく耳にしますが、大切なのはこちらから争いを仕掛けず、たとえ仕掛けられても、挑発に乗らないことです。
フリーランスに必要なのはやはり、競わない力、争わない力なのです。
この記事を書いたのは
- 本業ライター。2014年12月、Lancers登録を機に業務開始。主にビジネスやライフスタイル関連の記事を執筆。必要に応じて取材・撮影もこなす。
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