働き方改革の副業解禁で何が起こるのか?
政府の働き方改革が2019年4月から本格的に施行されます。
それに先駆けて、政府によるテレワークの推進が2017年から始まっています。昨年には副業解禁のための就業規則の書き換え推奨モデルも発表されました。
政府の働き方改革は、企業がその制度を活用しやすいように、さまざまな方策やモデル事業を促しています。
その結果、多様な働き方の改革が大手企業を中心に広まりつつあります。
今回は、2018年に政府が打ち出した副業全面解禁に関する改革、さらに今年から施行される労働基準法改定や働き方改革が、中小企業の社員にどのような影響を及ぼすのか、本当に幸せを呼ぶ自由な働き方となるのかを考察していきます。
働き方改革の副業の全面解禁
副業と兼業の違いとパラレルキャリア型副業
副業と兼業という言葉があります。
会社の残業ゼロ制度が進むと、残業代を生活費や住宅ローンの支払いに充てている人は、生活できなくなるというリスクがあります。
だからといって、転職したとしても、今の会社よりも給料が下がってしまう可能性の方が高い時代です。
そんな中発表されたのが、政府の副業全面解禁です。
現在、「残業できないなら、副業を!」という人も増え始めました。
私の家にダスキンの集配をしてくれる方も、ダスキンの社員さんではなく、昼間は別の企業の正社員として働き、会社帰りにダスキンの商品を集配したり集金したりしているそうです。
この方は、60歳を過ぎたため、嘱託職員として再雇用されたと聞きましたが、「会社では、経理として黙々と働いているので、ダスキンのお仕事はおしゃべりができて楽しいのよ!」と仰っています。
このように、昼間の仕事と全く異なる仕事を、業務後の副業にすることを、厳密には副業ではなく、兼業といいます。
兼業というと、「兼業農家」という言葉が耳に馴染んでいる人も多いかと思いますが、昼間の仕事と関係ない夜の仕事をしている人は、兼業農家と同じで、兼業サラリーマンや兼業OLともいえるのです。
兼業を始める理由は人それぞれだと思います。
兼業でも、自分のやりたいことをやって、自分の可能性やスキルを違う世界で試しているようなパラレルキャリア型の兼業なら良いのですが、ただひたすらにお金儲けのためだけに頑張り、辛抱して働いていたのでは自分のためになりません。
(「パラレルキャリア」については「フリーランス白書からわかる『パラレルキャリア型フリーランス』の実態」で詳しく解説しているので、そちらを参考にしてください。)
我が家に来てくれるダスキンのパートさんは、「私、こんなにおしゃべりが楽しいなんて自分でも驚いているのよ」と仰っています。
もはや彼女はお金儲けだけが目的ではないのでしょう。
このような働き方も、パラレルキャリア型兼業といえます。
お金というよりは、自分が楽しい思える人とのつながりが、彼女の若さを保っているそうです。
このように、兼業でも自分の新たな一面の発見ができます。
老後のことを考えて、若いときから兼業や副業を始めるなら、やはり同じ業種で自分のスキルを活用して本業以外の仕事をするという副業の方が、スキルアップにつながる可能性が広がります。
ですが、自分でどうしてもやってみたいことがあるなら、あるいはやってみたいことがなくても、目の前にできることがあるなら、まずは始めてみましょう。
やっているうちに、見えてくるものもあります。
「石の上にも3年」といいますが、私の場合は鈍いせいか、もっとかかったように思います。
副業のデメリットは上司の管理と社員のモラルに任せる?
現在は、不景気により生産人口が不足し、労働力確保のため賃金を上げて会社が倒産する時代です。
そんな中、日経新聞にある記事を見つけました。
記事によると、システム開発大手SCSKは、IT大手企業としては異例の届け出制の副業全面解禁第1号だそうです。
そのことについて社内で説明会を開催した結果、社員の4分の1を上回る届け出があったほどの反響ぶりだったそうです。
しかし、同業種の副業には、情報漏えいや長時間労働などのさまざまな問題があります。
その対策として、同社では、副業をする社員は会社に対して副業について絶対に報告する義務があります。
上司が副業の状態や副業の業務時間について徹底的に把握できるよう、部下が報告するシステムだそうです。
同社の執行規則の副業部分を抜粋したものがこちらです。
出典:「副業を全面解禁したSCSK、社員の興味は想定以上」(日本経済新聞 電子版、2018年12月26日)
届け出制での副業許可ですから、情報漏えいや超過勤務について、この心配も回避できます。
同社では、副業の業務に従事した時間の自己申告も義務づけており、副業と併せて残業の管理もしているようです。
ただし、社員の自己申告ですから、上司と部下の信頼関係と社員のモラルを信じることになります。
政府の働き方改革は副業では解決できない
政府の働き方改革は、有給休暇の消化や過剰労働時間の削減に積極的です。
「5連休5万円支給制度を3500人が利用したオリックスの働き方改革にみる残業が減ることで会社で起こりそうなこと」で、中小企業の副業解禁のスパイラルについて触れました。
大企業と中小企業の経済格差が今よりももっと大きくなるかもしれません。
しかし可能性は無限大です。
自由とは、自己責任の幅が大きくなって、能力格差を生み出すのです。
大企業のような、巨大な勢力と発言権を持つ労働組合や、大勢の社員の労働力や莫大な資金力に守られている人はともかく、中小・零細企業の社員は、労働環境に明らかな差が生まれます。
その結果、日本もアメリカのように、実力社会となってしまう可能性もあるのです。
自由な働き方の時代になってしまえば、自由だからこそ、能力や個性が収入に大きく影響していきます。
そして、AIの時代となり、仕事も奪われかねません。
自分にしかできない仕事力を見出せない人は、潰れてしまう時代となる可能性もあるのです。
その結果、柔軟な発想力と自分の能力の活かし方を工夫できる「自分だけ」の何かを見つけられる人だけが生き残れる時代となるでしょう。
だからこそ、自分の能力の新たな可能性を見出すには、パラレルキャリア型の副業あるいは兼業がおすすめなのです。
働き方改革と副業解禁によって、企業の需要とフリーランスの供給が次第に高まっていくことでしょう。
まとめ
私が、社労士事務所を開業したばかりの頃は、労働基準監督署で年間契約の嘱託社員として働いたり、派遣で社労士法人の賃金計算を行って、2年の間生活を維持していました。
端から見ると、社労士が副業で、フルタイムの仕事が本業に見えます。
でも、私は腐っても社労士事務所の個人事業主なのです。
自分の事務所の仕事が本業です。
それこそ1年目は月~金はフルタイムの垂直型パラレルキャリア型副業、土日は社労士の本業をしていました。
2年目からは水平型パラレルキャリア型副業です。
月~木の9時~14時が副業の派遣、月~木の15時~20時、金土の終日が本業の社労士です。
この経験が、経営方針に関する知見や人脈形成につながり、後の経営に非常に役に立ちました。
そうこうしているうちに、跡継ぎのいない大手社労士事務所のクライアントを全員譲ってもらえるという、思ってもみない幸運にも巡り会えました。
「仕事はご縁が持ってくる」と昔聞いたことがあります。
人生何が起こるかわかりません。
垂直パラレルキャリア型で土日に社労士やっていたときは、こんなことが起こるなんて夢にも思いませんでした。
「やろうと思えば何でもできる」その意気込みさえあれば、チャンスは無数にあるのです。
今は不運でも、明日とんでもない幸運がやって来るかもしれません。
「諦めたときが終わり」と何かの漫画で台詞があったように思います。
人生は、本当にそのようにできているのだと思います。
この記事を書いたのは
- 元社労士のフリーランスライター。資格も多数保有。今は主婦として家族を大切にし、活動時間短めで気ままに執筆中。
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