こんにちは。コワーキングスペース「Basis Point」の運営会社、Ascent Business Consulting代表の北村です。
最近、何かと副業の話題を耳にしますが、アフィリエイトや金融商品の話ばかり多いような気がします。
それ以外の話題で「具体的に何やって、どれくらい稼いでいます」という話はあまり多くありません。
というのも、副業を認める会社はまだまだ少なく、全体の1/4程度。一方で、副業に興味がある人は、全体の6割以上と、ギャップがあるからです。
つまり「副業やりたい人は多い」ですが、「副業を実際にやれる人は少ない」ので、外に出てくるリアルな情報が少ない、と言えます。
ただ、確実に副業をやる方は増えています。
しかも、副業で月に20万以上稼いでいる人も、副業者の3割はいるのです。(参考:https://www.jil.go.jp/institute/research/2009/documents/055.pdf)
ここで不思議なのは
「月に20万円以上副業で稼いでいる人は、一体何をしているのか?」
です。
中にはアフィリエイトやECで商売をしたり、自作のプラモデルや手芸を売る方などもいますが、「初期投資が必要」であったり「リスクが高い」「特殊な技能が必要」といった理由で、尻込みする方も多いのではないでしょうか。
また「副業」といえど、「本業」に役立ったり、人脈が構築できる副業をしたい、という方も多いと思います。
そういう仕事は、一体どこにあるのでしょう。
副業マーケットはどこに存在しているのか
商売の話は、マーケットから考えるのが鉄則です。
つまり「副業者を欲しているマーケット」の所在です。
私はコワーキングスペースを経営していますので、ここについては自信を持って申し上げることができます。
結論から言えば、副業者に惜しみなくお金を払うのは、大企業と、スタートアップ企業です。
ただし、大企業は「土日だけ」「夜だけ」という依頼の仕方をあまりしません。
彼らは高額のフィーを払いますが、それなりのリソースを要求します。
具体的には「週3日、月額200万で」といった形です。
このレベルになると、フリーランスの方の「副業」としては良いと思いますが、現在就業中のサラリーマンが副業で、という形は時間的に厳しいのではないかと思います。
では、サラリーマンにとって、負担が少ない割には稼げる副業のマーケットはどこにあるのか。
それは、「スタートアップ」にこそ、存在しています。
スタートアップでの仕事こそ、真の意味で「副業者」を欲している企業であり、「これから副業をやってみたい」という、ハイスキルの方々に向いた仕事です。
なぜそう言えるのでしょう。
まず前提として、スタートアップは多くの場合、野心的な試みをしていますので、スキルがあり、能力ある人を求めています。
しかも、スタートアップは「仕組みを作ること」そのものが事業の成否を分けるので、様々な専門家が必要です。
しかし一方で、大企業に比べて資金力に乏しいので、そういった能力ある人を多く雇うことはできません。
また、会社のステージによって「一定期間だけ」「週に1日だけ」専門家がほしいといった、断片的なニーズがあり、普通に雇ったのでは、「そんなにたくさん仕事はない」「オーバースペックになってしまう」といった事情もあります。
スタートアップ企業が求める「スキル」とは
以上のような理由から、ある程度スキルに自身のある方、副業をやってみたいという人材の方々には、スタートアップ企業に協力する、という選択肢を持っていただくと良いと思います。
では、具体的にはスタートアップ企業はどのようなスキルが歓迎されるのでしょうか。
まず考えつくところは、プログラミングやデザインなどの、アウトプットが見えやすく、成果が明確なスキルです。
これらは確かに仕事があります。
ただ、成果が明確な仕事は取りやすいのですが、競合も多く、仕事に長時間拘束されがちですので、月に20万以上稼ぐとなると、結構たいへんです。
また、どうしても「作業依頼」であることから、「内職」といった雰囲気になりがちです。
それでは、他にやれることはあるのでしょうか。
あります。
それは専門知識や人脈、ノウハウが必要なコンサルやアドバイザリーサービスです。
例えば、あるスタートアップは、新規参入したい業界があります。
ただ、そこは特殊な商習慣の業界で、開拓には紹介者が必要でした。
そこで月に30万円程度を支払い、定期的に業界の人とパイプをもたせてもらう……といった仕事が実際にありました。
あるいは、小売店舗向けのアプリを開発しているスタートアップの話です。
創業者は自分の出身の業界(アパレル)のニーズしかわからない。
そこで、幅広く小売の知識を持つ、知人の小売店向けコンサルタントをやっている人物に声をかけ、週に1回、マーケティングの会議に参加してもらい、月に20万円ほど支払っていました。
他にも、外資系の薬品メーカーに勤めていた人が、次の職を探している数ヶ月間だけ、営業のコンサルタントとしてスタートアップに参画して、月50〜60万円を稼いでいる。
大企業向けにマーケティングのコンサルティングをしていた人物が、スタートアップ向けに「マーケティング戦略のプランニングと効果検証」で月に20万円ほどを得ている。
上のような事例は決して珍しくありません。
要するに、「専門的アドバイス、人脈」は、スタートアップの誰かにとって貴重なものであるケースは、決して少なくないのです。
スタートアップ企業はノウハウを持つ人を「知人経由」「SNS経由」で探している
しかし、そういった仕事はどこにあるのでしょう?
もちろん、転職サイトにはありません。
クラウドソーシング上にもありません。
実際、殆どのそういった仕事は、「ちょっとした知り合い」を通じて紹介されています。
スタートアップの経営者は、何かしらの会合であったり、イベントであったり、そういうところで知り合った方々に、「誰かいい人いないですか?」と聞いて回っている。
また、ベンチャーキャピタルや仲間の経営者に聞くことも多いです。
最近では自分のSNS上で、「誰かこんな人いないですか?」と聞いている人も多いです。
有名な話ですが、スタンフォード大学のマーク・グラノヴェッターは「弱い紐帯の強み」というテーマの論文で、「仕事は、強い結びつきの人よりも、ちょっとした知り合いからもたらされることが多い」ということを明らかにしました。
それは、「自分の価値に希少性を感じる人」は、自分が普段付き合っているネットワークの外の人にいる可能性が高いからです。
グラノヴェッターは彼らに単純な質問をした。「転職するまでに、転職に力を貸してくれた人とどれくらいの頻度で会っていましたか」と。
すると、「頻繁に」という答えはわずか一七%にすぎず、五五%は「ときどき」、残り二八%は「ほとんど会っていない」との答えだった。
彼らの大半は、大学時代の旧友、かつての同僚、以前の雇用主などを通じて仕事を見つけていたのだ。
こうした人たちとの接触は散発的で、職場以外で一緒に過ごしたことがあるという回答はほとんどなかった。
グラノヴェッターによれば「通常、この種の絆は最初に結ばれた時点でさえそれほど強くなかった……。ばったり会ったとか、共通の友人を介してといったきっかけで絆が復活したのだ。人が存在すら忘れていた相手から重要な情報をもらうという事実は、注目に値する」。
『つながり 社会的ネットワークの驚くべき力』ニコラス・A・クリスタキス (著), ジェイムズ・H・ファウラー (著), 鬼澤 忍 (翻訳)、講談社出版
「副業」についても同様に、「ちょっとした知り合い」や「会合で出会っただけの人」からもたらされると予想できます。
つまり、普段からより広範囲の「知人」を持つ人のほうが、副業マーケットにおいて、成功できる可能性が高い、と言えるでしょう。
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もちろん、最初から高い単価を取ることができる仕事を手にする人は少ないと思います。
自分自身の力量を高めるために、敢えて低単価でも引き受ける、という方もいるでしょう。
しかし、そうして磨いたスキルや、培った人脈は確実に仕事の幅を広げてくれます。
結局の所「勝てる」人たちは、本業でも副業でも、スキルを磨いているだけではなく、より大きなネットワークを持つ人である、というのは、もはや自明である、と言って良いと思います。
この記事を書いたのは
- コワーキングスペース「Basis Point」の運営会社、Ascent Business Consulting株式会社の代表をしています。みなさまに「自由なはたらき方」をご提供することを目指し、その実現に必要な複数の事業を展開しています。