ドラマの影響もあって、フリーランスの医師というものが注目されています。フリーランスの医師とは、医局や病院に所属しないで自由に働く医師のことをいいます。
実際には、フリーランスの医師の実態はどのようなものなのでしょうか。
フリーランスの医師とは
フリーランスの医師とは、医局や病院に所属しないで、自分の実力のみで医療現場をわたりあるく医師をいいます。ドラマでは、「ドクターX‐外科医・大門未知子‐」でとりあげられています。ドラマでも、やはり医師としての実力の高さが人気の秘密でした。
実際には、フリーランスの医師というものが存在するのでしょうか。以前は、医者は医局や病院に所属することが当たり前でしたが、最近では実際にフリーランスとして働く医者も増えてきているようです。特定の病院に所属せず、自分で病院を開業をすることもなく、非常勤勤務のような形で働くことが多いようです。
フリーランスの医師が増えてきている原因となっている理由は、まず、病院に勤務している医師の勤務実態にあります。病院に勤務している医師は、就業時間が長く、休日もほとんどなく、超過勤務があたりまえでとても忙しく、過剰労働による医療ミスや医師自体の健康について問題となっています。
病院に勤務しないで開業するという方法もありますが、自分で開業するには、診療場所や診療設備を用意して、スタッフも雇わなければならず、それだけの資金を準備できない医師もたくさんいるのです。
現在の日本では、ドラマの中のような医師派遣会社は存在しないと思われます。人材派遣会社がスタッフを派遣する場合に、医師を派遣するのは法律で禁止されているからです。ただし、例外的に産休などで休んでいる医師の代替や、僻地での医療要員などの目的で医師の非常勤やアルバイトを紹介することは認められています。
現在の日本の現状では、フリーランスの医師は、ほとんどがアルバイトのような非常勤医師として働いています。ドラマなどでのイメージのような、特定の手術だけを患者から直接依頼されて請け負うというものとは少し違うようです。
現実的には、手術はチームとして行いますので、病院でのチーム医療にフリーランスとして参加するのは難しいですし、手術を行うには責任が伴い、いざというときの訴訟にフリーランスが個人として対応するのも難しいのです。
フリーランスの医師が増えている理由
フリーランスの医師が増えている大きな理由は、勤務医の超過勤務問題や、開業するための資金を用意することができない問題は上記に述べたとおりです。しかし、ほかにも、フリーランスの医師が増えてきている理由があります。
医師になるには、医学部を卒業しなければなりませんが、2004年度以降から、研修医は卒業した医学部の医局へ入る義務がなくなりました。このことにより、医学部を卒業した医師は、研修医の間に自分の好きな研修場所を希望できることになるようになりました。医師としてやる気のある人は、最新の医療技術を学び、さまざまな医療現場で研修できるように、自ら希望を出すことができるようになり、研修医の段階から優秀な医師は多方面からオファーがくるために、人脈を作りやすくなりました。
優秀な研修医は、研修医として働いている間に人脈を作ることで、フリーランスとして働く環境が整いやすくなったことも、フリーランスの医師が増える原因となっています。
さらに、現代では女性の医師が増加しています。医師といえども女性であれば、結婚、妊娠、出産をするときには、勤務医や開業医のようにフルタイムで働くことは難しくなります。フルタイムで働けない女性の医師に、フリーランスで働く働き方を選ぶ人も多くなっているようです。
そして、フリーランスという働き方が注目されている現代では、医師の世界においても、紹介会社が普及してきました。せっかく医師になったのに、過剰な超過勤務でプライベートな時間がほとんどないという現実の前にして、フリーランスで働くことのできる環境が整い、勤務医として働くことをやめて、フリーランスとして働くことを選ぶ医師も多くなってきたのです。
フリーランスの医師のメリットとデメリット
勤務医になるか、開業医となるか、フリーランスの医師となるのかは、その医師本人の価値観の問題によるところが大きいのではないでしょうか。メリットとデメリットを比べて、自分のライフスタイルにあっている方法を選択することが大切です。
メリット
フリーランスの医師の最大のメリットは、自分のライフスタイルにあわせて働く時間を決めることができることではないでしょうか。時間があるときにはたくさん働いて、時間がないときには働く時間を少なくするというような調整をすることができるようになります。フリーランスの医師としての時給は、一般のアルバイトに比べたら破格の単価ですので、うまく仕事を得ることができれば、勤務医よりも高い収入を得ることができる場合もあります。
医局といえば人間関係が難しいイメージがありますが、医局に所属しないことで人間関係にも気を使わなくてよくなります。
医師として開業した場合には、資金のやりくりやスタッフの雇用などさまざまなことに気をつかわなければなりませんが、そのような経営責任も、フリーランスで自由に働いている場合には負う必要がありません。
デメリット
フリーランスの医師として働いていこうと思った場合、医師免許がある以上、一般のフリーランスよりは有利であるとしても、やはり勤務医や開業医と比べると、社会的地位が低くなります。収入が不安定なるので、たとえば住宅ローンの審査などで不利になる場合もあります。勤務医であれば休暇の間も保障がつきますが、フリーランスの場合は働けない場合には、収入が得られなくなります。
医師としての技術についても、アルバイトのような非常勤での勤務のみですので、病院や医局にいれば必然的にはいってくる医療技術を高めるための情報を得ることが難しくなり、研修などに参加する機会もなくなってしまいます。医療技術の高さを誇るドラマのようなフリーランスの医師になるには、本人が自ら努力していかなければならないのです。
さらに、フリーランスの医師は、今まで病院がやってくれていた保険や税金の手続きを自分でしていかなければならず、事務処理能力も必要になってきます。
最後に
フリーランスの医師の実態は、ドラマと違うようですが、自分の医師としての能力で仕事をしていくという点では変わりません。フリーランスで働く医師が増えてこれば、将来的に、医師がフリーランスとして働きやすい環境がもっと整備されるかもしれません。優秀なフリーランスの医師に依頼して手術をしてもらうという日もくるかもしれませんね。
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