昨今IT業界を中心に、従業員の副業を認める会社が増えています。
会社側としては、本業以外の仕事を通じて身に付けた経験を本業に活かしてほしいという狙いがあると言われています。[1]
確かにこの点は事実でしょうが、私は会社側の狙いは実は別のところにあるものと考えています。
社会の変化が激しく日を追うごとに過酷さを増す競争環境の中で、会社側も従業員の雇用や給料を保証することが難しくなるため、従業員には将来を保証しない代わりに副業を認めることで別の口で所得を増やなさいという考えが根本にあるのではないでしょうか。
私たちもこの変化に飲み込まれず、本業以外で定期的に収益を確保できる手段を獲得する方法として、副業を検討してもよいのではと思います。
目次
副業をはじめようと考えたきっかけ
副業をはじめようと考えた背景
私が副業をはじめた背景には、勤め先が慢性的な業績不振で昇給を望みづらい環境だったことがあります。
外資系の小売業者に勤めていましたが、ほぼ毎年赤字決算で仮に黒字の年でも利益を本国に吸い取られてしまい、筆者も含めた管理職以上は昇給を見込めない状態が数年続いていました。
当時はマーケティング部門に所属していましたが、長年集客に苦戦していたにも関わらず、勤め先の上層部はWebサイトやSNSを活用したプロモーションには後ろ向きで、DMやチラシといった費用対効果の低い前時代的な手法に執着していました。
そのような環境で上層部が指示する手法を用いつつ、費用対効果を改善することを常に求められていました。
そのため、各種費用を極限まで切り詰めることで経費率を下げ、なんとか上層部からの評価が下がらないようにするという後ろ向きな仕事を続けていました。
後ろ向きな仕事を続けることに、不満と共に自分が何の価値もなく社会に不要なおっさんへの道を歩んでいるのではという恐怖を抱えていました。
そこでまず転職を考えましたが、今までのキャリアや年齢を考えると転職したところでキャリアアップは難しく、転職できたとしても既存の従業員がやりたがらない業務やブランドを任され苦戦する可能性が高いことは明白です。
であれば、まずは現状の仕事を続けつつ週末や空いた時間を活かし自分のできることでお金を稼ぎ、余裕ができたら新たなことを学んで将来に活かそうと考えるようになりました。
そこで頭に浮かんだのが副業でした。
副業で何をするか
副業では、まず以前の職場で身に付けたマーケティングリサーチやPOSデータの分析を用いてクライアントを支援しました。
中小企業の一部で、早急に商品や業界の市場情報が欲しいものの多忙でリサーチできないという悩みがあることを知っていたため、彼らのニーズに応える形でサービスをはじめました。
そこで実績を作ってから、独学で得たオンラインプロモーションや運用についての提案も行い、クライアントからの売上を伸ばすことにしました。
対象となる業種についてですが、今までリサーチを経験したことがある業界、特に食品やトイレタリーなどの消費財やポイントサービスなどを中心に行いました。
馴染みのない業種にチャレンジすることも検討しましたが、業務の進捗が遅れクライアントからの信頼を失うことや副業の遅れが本業に影響を及ぼす恐れがあるため、馴染みのある業種に限定しました。
仕事場については、作業時間全体の約90%は在宅でした。
残りの10%は、クライアントとの対面での打ち合わせや、データ取得のために国会図書館やJETROへ行った際の移動時間で、時間を無駄にせず作業に集中できました。
副業で何を達成したいと思ったか
副業を通じて本業以外で稼ぐ手段を得ると同時に、業務領域を広げることで自分の商品価値を高めることが狙いでした。
そうすることで、転職や独立をした場合への備えもできますし、勤め先に支配される人生から脱却できると考えていたからです。
副業で見つけたこと
会社にいるだけでは見えない・得られない様々なこと
副業をしていると、良いことや良くないことを含め、勤め先では体験できない様々なことを知る機会があります。
私が行ってきた副業の中には、クライアント1社に対して私を含め、複数のメンバーがプロジェクト体制でサポートする案件がいくつかありました。
その中でも今までの勤め先や取引先では見たことがないような切れ者と知り合い、自分の無能さを思い知らされることもあります。
同時に、彼らの作成する資料や考え方を新たな知識として取り込むこともできますし、彼らから得たものを自分が持つ他の案件に応用することもできます。
また、意思決定のプロセスやプロジェクトマネージメントについても各クライアントで異なる部分があるため、自分の中で参考にできるやり方とそうでないものを見極める機会を得ることができます。
上手いやり方を実際に見るのは、会社や独立後に自身でマネージメントをする際に役に立ちます。
このような様々な経験を通じて自分をアップデートできる機会がたくさん存在することが、副業を通じて得られる貴重なことだと言えます。
今の自分(As is) と将来像(To be)を明確に持つこと
副業を検討する段階で自身の将来像を明確に持てと言われても、答えに窮する人が大半だと思います。
私もそこまで考えていませんでした。
ただ、副業をはじめて1年以上経過してもお金に関する目標のみで将来像に欠けたままですと、仕事の選び方も場当たり的になりかねないですし、モチベーションの維持も難しくなる恐れがあります。
副業をより有意義なものにするためにも、自分の現状となりたい将来像を頭の中に描き、将来像に近づくための手段として副業を行うことがモチベーション維持につながると考えています。
大事なのはチャレンジ精神ではなく確実にやり切ること
最近は至る所で「チャレンジ」「リスクを取れ」といった言葉を見かける方も多いと思います。
なりたい将来像に向けてチャレンジしていくというのは、個人的には素晴らしいと思います。
ただ個人の立場でクライアントと接点を持ち、しかも誰からのバックアップもなく自分で全責任を引き受けないといけない場合は、少し話が違ってきます。
頼れるのは自分のみという環境で必要なものは、自分にとって困難なことにチャレンジするよりも、自分が確実にできる範囲内でクライアントと合意を形成した上で確実にやり切ることです。
会社員であれば、困難な案件にチャレンジし結果的にクライアントが求める成果を出せなかったとしても、それが原因でクライアントから出入り禁止や社内で左遷、退職勧奨の対象となることは稀でしょう。
しかし個人としてクライアントと仕事をしている場合は、成果が出なければ報酬もないでしょうし、クライアントとの信頼関係も崩壊します。
二度と受注することもできないでしょう。
だからこそ石橋を叩いて渡るような確実さが求められますし、自分の将来像に近づくためにチャレンジする場合でも、できる範囲内での納期や作業領域を設定した上で受託する慎重さが求められます。
副業を行う上で困難だったこと
筆者はほぼ在宅で作業を行い、そして納期を守ればいつ働いてもいいという融通が利く環境で副業に従事していますが、それでも副業を行う上でいくつか困難な局面に会ったことがあります。
副業のための作業時間の確保
副業を行う上で、安定した作業時間確保は不可欠です。
それほど多忙でない時期であれば平日で計10時間以上、週末も合わせると計16時間ほどは副業に費やすことができますが、繁忙期はほとんど副業ができません。
また、忙しくない時期でも本業の方で勤め先の業績悪化や欠員発生など予想外の事態で作業時間の確保が困難になることがあります。
他にも、依頼された副業の内容が予想以上に大変だったために睡眠時間を削って作業したことも何回かありました。
副業を確実にこなすためにも、作業時間の確保と納品までに必要な作業時間の正確な見積りは必須です。
ここで躓くと、睡眠時間を犠牲にするといったことになります。
クライアントとの共通認識確認
クライアントからリサーチや分析を依頼される際、クライアント側がリサーチの対象範囲や詳細さのレベル感などをあまり深く考えず依頼してくることが多々あります。
このような状況で、私も色々質問しても埒が明かないと判断し、内容を詰めず受託したことがありました。
その結果、納品後にリサーチ内容の一部がイメージしていたものと異なるというクレームを受け、修正作業を無料で行うことになりました。
この経験から学んだことは、仮にクライアントが不快そうな顔をしようと言いづらい雰囲気を感じようと、業務内容を詳細まで詰め双方で共通認識を得ないといけないということです。
クライアントに嫌われて受注できなかったら困るので内容が不明快でも受託、というのは身を滅ぼすことになりかねません。
副業の売上目標と作業時間の見積り
はじめのうちはどれだけ稼ぐか目標設定できない人も多いと思います。
私自身も最初のうちは月々の売上目標を設定できなかったのを覚えています。
私は代わりに、副業開始時から各案件に要した作業時間を集計していました。これを売上に紐づけたことで自分の作業速度と単価を視覚化し、3ヶ月目くらいからは売上目標額とそれに必要な時間を概算で設定できるようになりました。
空いた時間を副業につぎ込んで稼げるだけ稼ぐという考え方の方も一部いますが、長時間労働はストレスを貯めこむ恐れがあります。
ストレスを感じ過ぎない範囲で長期間続けるためにも、無理のない目標設定や作業時間の見積りが必要だと考えています。
最後に
現在の収入に対する不満や今後の収入増に期待できないなど、金銭面を理由に副業を検討している方は少なくないでしょう。
しかし、ご自身が副業を通じて学びたいことや私生活とのバランスも考慮した上ではじめることをおすすめします。
みなさまの今後の生活やキャリアがより一層、充実したものとなることを願います。
<参考・参照サイト>
[1] 「兼業・副業に対する企業の意識調査(2019)」[PDF](株式会社リクルートキャリア、2020年3月24日、p.4)
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