フリーランスの仕事の幅を広げる英語。ぜひ知っておきたいその可能性。
グローバル化により、英語を使用する機会が国内でも多くなっているように思います。楽天のように、社内では英語が公用語として義務化する企業も存在します。
その一方で、「使える」英語を学習する環境は、必ずしも整っているとはいえません。
英語の主要な資格試験のひとつであるTOEICを、日本では英語力を測る物差しとして導入する企業は多いです。ところが、TOEICを採用する国は日本や韓国が大半であるという現実があります。世界全体でみればヨーロッパ共通参照枠(CEFR)に準拠したケンブリッジ検定がメジャーですので、TOEICをビジネスでの英語力を測る物差しとして機能しているか不明な点があります。[1]
また海外の大学に入学する際に必要とされるTOEFLも、中国や韓国に平均点で差をつけられるなど、日本人の英語力は国際的にみて高くはありません。[2]
英語が必要とされるにもかかわらず、英語力がそれほど高くない日本人。できれば英語を必要としないでフリーランスで仕事に従事したい人もいるでしょう。
フリーランスひとつ取っても仕事の幅は広いですが、では英語はフリーランスにとって必要なのでしょうか。今回はそのことについて考えてみたいと思います。
英語を使用する職業
まずは、英語を使用する職業一般について考えてみましょう。
英語を使用する職業といって思い浮かぶのは何でしょうか。
真っ先に浮かぶのは翻訳や通訳でしょう。
翻訳といっても、日本語から英語、あるいは英語から日本語という双方向で翻訳業務が存在します。英語から日本語への翻訳に限っても、産業翻訳から技術翻訳、出版翻訳まで幅広くあります。
最近ではWEB媒体で海外のニュースをリアルタイムで閲覧できるようになりましたので、WEB翻訳という仕事も加わりました。社会人が英語を読めないわけではありません。それでも日本語よりも英語を読むのに時間がかかる人も多いので、海外のニュースを日本語に翻訳することには、需要があります。
その一方で、インバウンド産業で英語の通訳の必要性が高まっています。
海外から日本への旅行者数は2017年には2800万人強もいるというデータがあります。[3] 最近はAI(人工知能)を活用した翻訳機も存在しますが、まだまだ人間による通訳にはかないません。
やはり人と接すること自体を楽しみたいという外国人観光客のニーズがありますので、通訳や英語を話せる人の需要はまだまだあるといったところでしょうか。
英語を使用できる職業の視野を広げてみる
確かに英語そのものに関わる職業に絞るならば、上述のように翻訳や通訳、あるいは英語教師も範疇に含まれるでしょう。しかしながら英語を使用する職業となれば、範囲はずっと広がります。
翻訳や通訳などは、フリーランスの代表的な職業でしょう。その一方で、オフィスを中心とした業務を数多く存在します。たとえば、
・バイリンガルセクレタリー
・マーケティング
・人事や総務
・営業
・クレジットやアナリスト
・外国為替ディーラー
・貿易実務
・オペレーター
・経理や会計
といった業務です。[4]
つまり、英語を必要とする職業は溢れているといえます。それと同時に、専門性が重要なのはいうまでもありません。
さらにいうと、英語を使用する仕事の求人は、日本に限りません。
アメリカやイギリス、オーストラリアなどで働けば、必然的に英語を使用する環境に放り込まれます。そのとき、英語以外の専門性やキャリアが重要になるのは当然でしょう。
たとえば英語を使用する職業のひとつに国際会計が該当します。[5] 国際会計は世界共通の会計を目指し、ヨーロッパを中心に普及しています。
海外の会計制度を熟知する必要もあり、英語力は当然必要になります。それと同時に、会計についての専門知識が必要になります。国際会計の場合、正社員への就職としてキャリアアップにつながりますが、これに限らず英語を運用できるかどうかで、フリーランスの幅も広がります。
私が知り合いになったフリーランスで印象的なのが、香港で働いていた理容師です。香港の一等地コーズウェイベイで場所を間借りして、理容師として働いていた方です。
外国語ができるからこそ現地で生活し、営業を行ない、仕事を受注できます。私の場合はたまたま客としてこの理容師と出会いましたが、外国語ができるというだけで仕事の幅が広がることを実感しました。それと同時に専門性が大事だということも。
日本ですと、「ランサーズ」や「クラウドワークス」といったアウトソーシングによる求人サイトが有名ですが、こういった業務形態は日本に限りません。
オーストラリアには「freelancer.com」と呼ばれるフリーランス用の求人サイトが運営されています。また広義では、配車を手掛ける「Uber」もフリーランス的な職業といえます。極端な話、英語さえ運用できれば、英語を使って配車サービスを提供できるわけです。
もちろん、英語は世界共通語として使用されていますので、ネイティブだけではなくノンネイティブでも英語を運用できるワーカーは数多く存在します。そのため、競争率がグッと高くなるのは致し方ありません。
しかし、フリーランスを行なう上で、自分の専門性やこれまでのキャリアに加え、英語が使用できることは強みになるでしょう。
国内に絞っても仕事の幅が広がる
ビザなどの関係もあり、いきなり海外に出てフリーランスで働くことを厳しいと考える方もいるでしょう。しかし日本国内に滞在、それどころか在宅でも、英語が身についているだけで仕事の幅が広がります。
私の場合、オーストラリアとイギリスの大学院に計3年留学経験があります。そういうこともあり、英語の読み書きだけでなく、英語での情報収集なども素早く処理できるようです。
この能力がライターの仕事に非常に役に立った経験があります。
私が契約している法人でライターの業務を請け負っていたとき、プロフィールで留学経験があるのを知ってか、英語を使う業務で声をかけていただきました。海外の最新のトレンドについて英語で情報収集し、それを日本語で「まとめる」というもの。日本語では情報が出回っておりませんので、英語で文献を当たるしかありません。
翻訳の難しさというのは、英語のロジックや表現と、日本語のそれとが一致しないことにあると、私は考えます。英語力というよりも、日本語力も必要とされる非常に難しい業種だと思います。
しかし、英語で資料収集し、日本語にするというのは、そこまで高いスキルを必要としません。それでも需要は非常に高いです。
私のような科学技術系を基礎に置くライターの場合、とくにその傾向が高いです。トレンドが日々変化するなか、情報をいち早く収集する能力には英語力は欠かせません。
加えて専門性が高いため、報酬も高いというのが実情です。
フリーランスで英語を使用する業種というと翻訳や通訳で、それらを志す、あるいは実際に現役で活躍するフリーランサーはたくさんいます。その一方で、ライターで語学が必要なのが盲点になりやすいのも事実。
もちろん、翻訳のついでに英語で情報収集しライターを行うフリーランサーもいますが、ライター専業でサブで外国語ができるとなるとなかなか見当たらないというのが背景にあると思われます。
外国語に関していうと、英語以外の言語を運用できればさらにその価値は高まります。
第二外国語ひとつとっても、言語ごとに強みを発揮するポイントが違います。
商社では、フランス語やスペイン語、ポルトガル語といった、アフリカや南米で使用される言語の習得のために、語学研修するといいます。[6] これらの国は、資源や農作物など輸入のための重要拠点だからです。
英語はいまでは小学生から履修するので使えても不思議はありませんが、それ以外の言語となると話は変わります。私も辞書を使えばフランス語やドイツ語を読める程度で、話すまでは至りません。
現在では、市場における中国のウェイトが徐々に高まっていますので、中国語(北京語あるいは広東語)を運用できると強みになるのは間違いないでしょう。
まとめ
いかがでしょうか。
英語をマスターしているということは、スキルをひとつ有していることと同じです。英語に限らず、デザインの能力や文章力と同じく、それを本業にするとなると非常に難しいことが予想されます。
その一方で、しっかりとした専門性をもっているならば、英語を身に着けることで、仕事の幅を広げられるのではないでしょうか。
<参考・参照>
[1] 『CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)』(ブリティッシュ・カウンシル)、『CEFRについて』(Cambridge Centre)、『TOEIC Report on Test Takers Worldwide – 2004』
[2] 『Test and Score Data Summary for the TOEFL iBT® Tests』
[3] 『訪日外客統計の集計・発表 2017年12月推計値(平成30年1月16日発表)』(日本政府観光局(JNTO))
[4] 『語学を活かす仕事』(井上昭正 著)
[5] 「英語による国際会計知識学習者のキャリア事例研究」(第一工業大学研究報告 第27号)
[6] 「商談、交渉、マネジメント…仕事で使える「商社の語学」」(週刊ダイヤモンド 2016年12月10日号)
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