フリーランスになるということは、自分の能力やスキルなど腕一本で仕事をするということ。別の言い方をすると、自分の能力やスキルの対価としてクライアント(依頼主)から報酬を得るのがフリーランスと言えます。
フリーランスとして仕事を円滑に進めていくためには、この契約の仕組みをしっかりと理解して様々なリスクヘッジをしておく必要があります。フリーランスは、会社員と違って自分を守ってくれる「会社」はありません。「自分の身を守るのは自分。フリーランスだからこそ、契約書を作って自分を守っておかないと」とフリーランスの先輩に言われて、筆者も自前の業務委託契約書を作成し案件を受注する時には業務委託契約書を取り交わすようになりました。
本記事では、フリーランスが業務委託契約書を作る時に注意したい3つのポイントをご紹介します。
契約書作成の必要性と自分で契約書を用意するメリット
フリーランスが業務委託契約書を作る時に注意したい3つのポイントをご紹介する前に、前提知識として「なぜ契約書を作成する必要があるのか」そして、「その契約書を用意するのは誰になるのか」をお話ししたいと思います。
契約書作成の必要性
業務委託契約、つまりフリーランスがクライアントから仕事を受注することは、口頭での約束でも成立します。契約書を作成しないと契約が成立しないという訳ではないのです。
ですが、問題が発生した時に「言った言わない」で揉めないように書面に残すことが大切。特に、証拠として決定的な重要性を持つ「契約書」として残しておくことが非常に重要になります。
「契約書を取り交わす」というと、クライアントを信用していないように思われるのではと不安に感じる人もいるかもしれません。
ですが、契約書を作成することで、お互いに果たすべき責任が明確化されるというメリットがありますし、契約を遵守しようという責任感がお互いに生まれるというメリットもあるため、契約書を作って契約を締結することはお互いの信頼を高めることにもなるのです。
自分で契約書を用意するメリット
日本は欧米諸国と比べて契約社会とは言い難いので、まだまだ仕事の取引を契約書なしで進めている企業も少なくありません。そのため、企業によっては、契約書の雛形を持っていないというところもあるので、自分で契約書の雛形を用意しておくとスムーズに仕事が進められます。
基本的に、契約書というのは「契約書を作成する側にメリットがあるように作られている」ものです。
例えば、報酬の支払い期間についても、払う側としてはできるだけ遅く払いたいし、受け取る側としてはできるだけ早く支払ってもらいたいもの。自分が作成した契約書では「末締め翌月末払い」としているのに、クライアントが作成した契約書では支払い期間が「末締め翌々月末払い」となっていたら、クライアントが用意した契約書を使用することは不利になります。
つまり、交渉を有利に進めるためには業務委託契約書は自前で用意し、その契約書で契約を締結できるように話しを進めるということが大切です。
準委任契約と請負契約の違い
業務委託契約書を作るための前提知識として、契約書の必要性と自分で契約書を用意するメリットをご紹介してきました。最後にもう1点「準委任契約と請負契約の違い」についてお話ししようと思います。
業務委託契約には、準委任契約と請負契約の2つの契約形態がありますが、この違いは、次の章の業務委託契約書に入れるべき項目を理解するために大切な内容なので、しっかりと理解しておくことが大切です。
準委任契約
準委任契約は、決められた作業内容を遂行することが求められる契約形態です。つまり、「労務」の提供の対価として「報酬」を得る契約形態であり、そこに「成果物」は発生しません。クライアントから要求された作業を、プロとして善管注意義務を持って行うことが求められます。
請負契約
一方、請負契約は、決められた成果物を納品することが求められる契約形態です。つまり、「成果物」の対価として「報酬」を得る契約形態であり、納品する成果物の品質に責任は負いますが、どのように作業を行ったかについては責任を問われないこともあります。
業務委託契約書に入れるべき項目
いよいよフリーランスが業務委託契約書を作る時に注意したい3つのポイントを具体的にお話ししていきたいと思います。業務委託契約書に入れるべき項目は、業務委託の内容にもよりますが、一般的に必須とされるものをご紹介します。
①委託業務の内容
まずは、「どのような業務を委託するのか」を具体的に明らかにする項目が必要です。ここで委託内容を明確化しておかないと、クライアント側からすると「委託したはずなのに!」、フリーランス側からすると「それは業務に入っていないのに!」というミスマッチが生じて後々問題になってしまいます。
例えば、準委任契約であれば「PR顧問業務。月の作業時間は30時間、作業時間に毎週の定例会議も含む。」というように、できるだけ業務の詳細を明確にしておく必要があります。また、成果物が発生する請負契約であれば、納品物の仕様書、納品日、クライアントによる検品などについても明確に定めておく必要があります。
②報酬
支払いについても明確に定めておくことが大切です。どのような業務を遂行したとき、もしくは、どのような納品物を納品したとき、いくらの報酬が発生するのか、また報酬はいつ支払われるかということを、契約書で明らかにしておくようにしましょう。と言うのも、業務委託契約において報酬のトラブルというのは、大変多いトラブルのうちの一つなのです。
例えば、準委任契約であれば「月末締めの翌月末に月額●●円を支払う」、請負契約であれば「納品・検品後、翌月末に●●円を一括で支払う」というように、規定するのが一般的です。
また、支払い方法(銀行振り込みが一般的)についても明記しておきましょう。
③中途解約
仕事の取引を開始したけれど、仕事を進めていくうちに違和感や問題を感じて解約を検討するということはよくあることです。「契約を締結したから、途中で契約を解約できない」というのは理不尽なので、クライアントとフリーランス側どちらからでも契約の中途解約ができるように予め業務委託契約書の中に中途解約に関する定めを入れておくことが一般的です。
例えば、準委任契約であれば「●ヶ月前に通知をすること」を条件に中途解約ができる、請負契約であれば「成果物の完成度に応じた金額を払うこと」を条件に解約ができる、と定めるのが一般的です。
まとめ
日本は契約社会ではないので、契約書を取り交わすということに馴染みがないフリーランスの方も多いかと思います。
ですが、「会社」という守ってくれる存在がいないフリーランスだからこそ、何かあった時のために「業務委託契約書」を作って契約を締結し、自衛することが大切。仕事の内容がより明確になりお互いに仕事に対して責任が芽生えて揉め事も減るというメリットもあります。
業務委託契約書を作る時は、業務の内容と報酬と途中解約の3点は必ず明確に記載しておくことが大切です。
この記事を書いたのは
最新の投稿
- 2024年12月9日社員研修パワーハラスメント研修完全ガイド | 効果的な実施方法と重要ポイント
- 2024年12月6日社員研修コンプライアンス研修とは?企業価値を高める効果的な実施方法と注目すべきテーマを解説
- 2024年12月3日ビジネススキルSNSリテラシーとコンプライアンス対策|企業が注意すべきポイントと具体的な予防策
- 2024年11月30日ビジネススキルレジリエンスとは?現役コンサルタントが解説する意味・効果・高める方法