フリーランスの仕事としてライターをしている方や、フリーランスのライターに仕事を依頼している方の中には、原稿料の源泉徴収をどのように取り扱ってよいのか悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は原稿料などの報酬における源泉徴収の取扱いについて解説します。原稿料以外にも源泉徴収が必要な報酬もありますので、フリーランスとして仕事をしている方はぜひ参考にしてください。
目次
源泉徴収が必要な場合
源泉徴収が必要な支払い
源泉徴収が必要かどうかは、支払い先が個人か法人かによって異なります。法人に支払う報酬の場合は、ほとんどの場合は源泉徴収しなくてもよいので、ここでは支払い先が個人の場合について説明します。
法律で決まっている源泉徴収が必要な支払いは、次の通りです。
(1) 原稿料や講演料など
※デザイン料や作曲料もここに含まれます。
(2)弁護士や公認会計士など、特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
※税理士に税務署類の作成や申告を依頼している場合、その報酬はここに含まれます。
(3)社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
※個人のクリニックなどが社会保険診療報酬を受取る場合が該当します。
(4)プロ野球選手、モデルなどに支払う報酬・料金
(5)芸能人や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
(6)ホステスなどに支払う報酬・料金
(7)プロ野球選手の契約金など
(8)広告宣伝のための賞金、馬主に支払う競馬の賞金
ホステスへの支払いなど支払い内容によっては源泉徴収の取扱いに注意が必要な場合もあります。
具体的にどのような支払いが該当するかや注意事項などは、国税庁のサイトに詳しく記載されていますので参考にしてみてください。
※参考・参照サイト:国税庁「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」
源泉徴収をしなくてもよい場合
国税庁のサイトに下記のように書かれています。
次の二つのいずれかに当てはまる人は、源泉徴収をする必要はありません。
(1) 常時2人以下のお手伝いさんなどのような家事使用人だけに給与や退職金を支払っている人
(2) 給与や退職金の支払がなく、弁護士報酬などの報酬・料金だけを支払っている人(例えば、給与所得者が確定申告などをするために税理士に報酬を支払っても、源泉徴収をする必要はありません。)
したがって、1人で仕事をしているフリーランスは、上記の支払いが発生しても源泉徴収せずに支払えばよいと言えます。
ただし、ホステスに報酬を支払う場合には、1人で仕事をしているフリーランスでも源泉徴収を行わなければなりませんので、注意してください。
源泉徴収をしなければならない人については、こちらに詳しく解説しています。
『【源泉徴収事務の基礎知識】フリーランスが従業員を雇っている場合』
自分が源泉徴収義務者にあてはまる場合
報酬・料金の支払い方
自分が源泉徴収義務者にあてはまる場合には、源泉徴収を差し引いた金額を支払います。請求書がある場合には、請求書に源泉徴収額が記載されており、源泉徴収額を差し引いた請求額が分かるようになっていると思いますので、請求書で請求されている通りに支払いを行います。
源泉徴収が必要な支払いが発生しているにもかかわらず請求書に源泉徴収額が記載されていない場合には、支払い先に請求金額から源泉徴収額を差し引いているのかどうか確認するようにしましょう。差し引いていない金額だった場合には、源泉徴収を考慮した請求書を作成しなおしてもらうか、支払明細を作成して渡し、源泉徴収額を差し引いた金額で支払うようにします。
もし自分が源泉徴収義務者にあてはまる場合に、源泉徴収をせずに支払いを行ってしまった場合はどうなるのでしょうか。
源泉徴収義務者は源泉徴収をする義務があるので、税務署から指摘された場合には不納付加算税や延滞税がかかってしまう可能性があります。請求書に源泉徴収の記載がなかったとしても、源泉徴収義務者であれば源泉徴収をする義務がありますので、源泉徴収が必要な支払いかどうかを注意していくようにしましょう。
源泉徴収税額の計算方法
源泉徴収する税金の金額は、支払い金額が100万円以下の場合には、報酬金額に10.21%をかけた金額です。100万円を超えた場合には、100万円を超えた部分については20.42%をかけます。
支払金額の中に消費税が含まれていて、報酬額と消費税が明確に区別されている場合には、消費税を抜いた報酬金額に10.21%をかけます。もし、報酬額と消費税が明確に区別されていない場合には、消費税込みの金額に10.21%をかけて計算します。
納付書の作成
源泉徴収をする税金の金額が確定したら、次に納付書を作成します。納付書は「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」という名前の納付書です。『【源泉徴収事務の基礎知識】フリーランスが従業員を雇っている場合』と同じものです。
納付書の報酬の支払いの箇所に、報酬区分(納付書の上の箇所にコードが掲載されています)、支払った日付、人数、報酬・料金の総額、源泉徴収する税金の金額を記入します。
税金の納付
源泉徴収をした所得税は、原則として支払った月の翌月の10日までに納付しなければなりません。納期の特例を受けている場合には、納付期限は1月~6月の分は7月10日、7月~12月までの分は1月20日です。
納期の特例については、こちらの記事も読んでみてください。
『【源泉徴収事務の基礎知識】フリーランスが従業員を雇っている場合』
支払調書の作成
報酬を支払って源泉徴収した場合には、支払調書を作成して税務署に提出しなければなりません。1月1日~12月31日までの分について翌年の1月31日までに提出することとなっています。また、義務ではありませんが報酬の支払先に対しても支払調書を交付するのが通常の商慣習となっています。
支払調書は、弁護士、税理士に対する支払いや、ライターに対する原稿料などについては、1人につき1年間の支払金額の合計額が5万円を超えるものについて作成します。
そのほかの支払調書を作成しなければならない場合については、国税庁サイトを参考にしてください。
源泉徴収が必要な報酬を受け取った場合
請求書の作成方法
フリーランスとして仕事をして原稿料などの報酬を受け取る場合、源泉徴収税額を差し引いた金額を受取ることになります。請求書を発行する場合には、源泉徴収税額がわかるように請求書を作成するとよいでしょう。
確定申告での税金の計算方法
確定申告では収入金額について、源泉徴収額を引く前の金額として所得を計算し、納付すべき税額を算出します。既に報酬額から税金を源泉徴収されている場合には、クライアントがその分の税金を納付してくれていることになりますので、さきほど計算した税金から源泉徴収された税金を差し引いて、自分が納付する税金を計算することになります。
源泉徴収されている金額が多過ぎると税金の過納付となり、還付を受けられることもあります。
源泉徴収された額は、クライアントから送られてくる支払調書で確認することもできます。しかし、支払調書の交付はクライアントの義務ではありませんので、送られてこないこともあります。その場合には、自分が発行した請求書に基づいて自分で源泉徴収税額を集計して計算します。
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