【源泉徴収事務の基礎知識】フリーランスが従業員を雇っている場合
フリーランスとして仕事をしている人が従業員を雇っている場合には、給料の計算をして支払いをしなければなりません。給料の支払いをするときには、従業員の所得税を計算して給料から天引きし、納付しなければなりません。これを所得税の源泉徴収といいます。
所得税を源泉徴収しなければならないことはわかっていても、どのような手続きをとっていけばいいかわからない方もいると思います。今回は従業員を雇っているフリーランスに必要な源泉徴収事務の基礎知識をまとめました。
目次
従業員を雇っていると、源泉徴収を行わなければならないのか?
源泉徴収とは?
まずは源泉徴収とはなにかを考えてみましょう。
源泉徴収とは、給料などを支払う場合に所得税などの税金を天引きし、天引きした金額を従業員にかわって国に納付することです。
もし従業員の給料に所得税が発生するにもかかわらず、従業員を雇っているフリーランスが源泉徴収を行わなければ、罰則の対象となることもあります。
国民1人1人が確定申告を行い納付するのではなく、給料を得ている人については雇用している側に所得税を天引きして納付する義務があるのは、特定の時期に申告が集中することを避ける目的のほか、申告漏れや計算ミスを減らすためでもあります。
源泉徴収を行わなければならない人とは?
源泉徴収を行わなければならない人を「源泉徴収義務者」といいます。法人の場合はすべて源泉徴収義務者となりますが、フリーランスである個人事業主は源泉徴収義務者とそうでない人といます。
源泉徴収義務者でないフリーランスは次の2つのどちらかにあてはまる場合です。
(1) 常時2人以下のお手伝いさんなどのような家事使用人だけに給与や退職金を支払っている人
(2) 給与や退職金の支払がなく、弁護士報酬などの報酬・料金だけを支払っている人(例えば、給与所得者が確定申告などをするために税理士に報酬を支払っても、源泉徴収をする必要はありません。)
従業員を雇わずに1人で仕事をしている人は、(2)にあてはまるので源泉徴収義務者ではありません。従業員を雇っていても、家事使用人として雇っているのであり、かつ人数が2人以下の場合には、源泉徴収義務者ではありません。それ以外の場合は源泉徴収義務者になるので、従業員を雇っていて給料を支払っている場合にはほとんどが源泉徴収義務者となるといえるでしょう。
源泉徴収の手続き
源泉徴収の計算方法
源泉徴収を行うには、まず給料の金額から源泉徴収をする税金の金額を計算します。その際、給料の総支給金額から社会保険料などの控除額を差し引いた上で、その金額をもとに源泉徴収税額表にあてはめて計算します。
(参考情報:平成30年分 源泉徴収税額表)
表の中の「甲」「乙」の区分は、従業員が扶養控除等申告書を提出しているかどうかの区分です。扶養控除等申告書の提出がある場合には、「甲」欄になり扶養親族等の人数によって源泉所得税の金額が変わってきます。扶養控除等申告書の提出がない場合には、「乙」欄になります。
納付書の作成
源泉徴収をする金額が確定したら、次に納付書を作成します。納付書は、「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」という名前です。納付書が手元にない場合には、税務署に発行を依頼しましょう。税務署で発行された納付書には、税務署名や源泉徴収義務者名が印字されています。
納付書には、給与を支払った日付、人数、給料の総額、源泉徴収する税金の金額を記入します。複写式になっているので強い筆圧で記入していきましょう。数字を間違えて訂正すると金融機関で取り扱ってもらえない場合があります。数字を間違えた場合には、新しい納付書に書き直したほうがよいでしょう。
税理士や弁護士などに支払った報酬額がある場合には、同じ納付書の該当箇所に記入します。報酬についての源泉徴収税の金額については自分で計算しなければならない場合は少なく、請求書に記載されている金額をそのまま記載します。
税金の納付
源泉徴収をした所得税は、原則として支払った月の翌月の10日までに納付しなければなりません。納付は、税務署や金融機関で行うことができます。
納期の特例
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出して承認を受けると、半年分の税金をまとめて納付できるようになります。これを納期の特例と呼びます。納期の特例の適用を受けるには、給与の支給人員が常時10人未満である必要があります。毎月納付するのは、毎月納付書を作成しなければならず大変なので、従業員の人数が少ない場合には、納期の特例の適用を受けることをおすすめします。
納期の特例は、申請書を提出した翌月から適用されます。納付期限は1月~6月の分は7月10日、7月~12月の分は1月20日です。
年末調整
従業員を雇っていて源泉徴収をしている場合には、年末に1年分の給料を再計算し所得税を確定させ、源泉徴収した金額との過不足がないよう調整をするために、年末調整を行わなければなりません。1年分の所得税と、源泉徴収した金額の1年分の合計額との差額は、12月か1月の給料で清算します。
源泉徴収票を従業員に渡し、翌年の1月末までに源泉徴収票、支払調書、法定調書合計表を作成して税務署などに提出します。
源泉徴収事務を行うにあたっての注意点
ホステス報酬がある場合
従業員を雇っている場合でも、飲食店を経営しホステスを雇っている場合には、ホステスに支払うお金は給与ではなく報酬となります。納付書も別の納付書を作成して支払わなければなりません。源泉徴収する金額の計算も変わってくるので注意が必要です。ホステスの源泉徴収の場合には日数計算に特徴があり、報酬金額の計算の基礎となった期間の初日から末日までの全日数を計算期間として税金を計算します。
国税庁のホームページ「No.2807 ホステス等に支払う報酬・料金」に計算の仕方や納付書について説明があるので参考にしてください。
給料の計算をするときの注意点
従業員の給料を支払うためには、労働基準法にそって給料の計算をしなければなりません。従業員を1人でも雇っていれば雇用保険に加入する必要もあり、給料から天引きして労働者負担分の雇用保険料を納付しなければなりません。給料の支払いについても、法定労働時間や残業時間について考慮していかなければならず、気をつけなければならない点がたくさんあります。
短時間のアルバイトを少人数雇うだけであれば、自分で給料を計算して源泉徴収事務を行うことも可能だと思いますが、勤務時間が長い従業員を雇ったり、従業員の人数が多くなると源泉徴収事務を行うことが大変になってきます。このような場合には、社会保険労務士や税理士に相談するとよいでしょう。税理士であれば源泉徴収の納付書の作成や年末調整を依頼することもできます。
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