正社員とアルバイト社員の時給逆転現象がもたらす職場の崩壊とは


正社員とアルバイト社員の時給逆転現象がもたらす職場の崩壊とは

結婚前の6年間、アパレル業界で働いていたときのことです。

当時の私の立場は、毎月の固定給と僅かなボーナスを貰える、月給制(固定給)の正社員。

 

店舗には学生アルバイト2名、パート(主婦)1名、時短契約社員(主婦)1名、正社員3名の計7名がおり、私以外の正社員は2名とも時給制でした。

 

 

 

そんな職場で、給料の設定を巡り明らかに矛盾する事実が発覚したことから、働くモチベーションを大きく挫かれたことがあります。

 

そしてその矛盾は、薄給の業界で働く正社員にとっておそらく共通の問題でもあるはず。

少し順を追って、お話してみたいと思います。

 

 

 

前提として、当時の職場では以下のような運営が為されていました。

 

 

 

1.タイムカードの暗黙のルール

 

タイムカードは、時給で働いている者にとって給料にそのまま関わるため、しっかりと押すことを命じられていました。

そして「なるべく残業はしないように」とのお達しでした。

 

しかし、月給制の社員にはこんな暗黙のルールがありました。

●昼休憩を毎日30分しかとれなくとも、休憩は1時間とったことにする
●残業が多いと上からかなり怒られるので、残業はタイムカードを切ってからする

 

残業については年々厳しくなっており、本来ならこのような労務管理は違法行為です。

しかし賃金の安い飲食業界やアパレル業界などは、未だにこのような労務管理をしている会社も多いのです。

 

 

 

2.急遽休む人が出た際、呼び出しはいつも時給がかからない固定給社員

 

女性の多いアパレル業界では“育児をしながら働いているスタッフが、子どもの急病でやむを得なく当日欠勤をする”ということがよくあります。

 

彼女達はアパレル業界で長く働いた後に産休育休明けで復帰をした、いわゆる「ベテランスタッフ」であるからして、大切な戦力です。

 

私も女性なので、そのうち自分にも子どもが産まれ同じ立場になることもあるかもしれない…との想いから、快くフォローをしていました。

 

しかし、何故か彼女達が休む当日にマネージャー(数店舗を受け持つ店長)から「代わりに出勤してくれないか?」との連絡が来るのは私ばかり。

私が働いていた店舗には、私を含め3人の社員がいたにも関わらずです。

 

物事を深く考えない性格の私は

●私が一番頼りにされている
●他の社員に電話したが都合が悪く出られなかった

のどちらかの理由だろうと考えていました。

 

しかしある時、他の社員に尋ねた所「そのような電話が来たことは、ほとんどない」といわれ、ひとつの疑問を持つに至ったのです。

 

 

 

3.暇な時期でも、固定給社員に休みはとらせない

 

アパレル業界での2月といえば「初売り」や「冬物セール」で冬服の購入意欲は薄れ、かといって春服を買うにはまだ早い…と1年の中で最も暇な閑散期です。

普段は少なくても5人で回さなくてはいけないお店も、2月であれば3人で回せます。

 

そこで独身の正社員3人で「一人ずつ連勤を作って協力すれば、大型連休を順々にとれるのではないか?」という話で盛り上がりました。

 

それを上に報告すると「申し訳ないけれど、〇〇さん(私)だけ連休は来年で我慢してくれない?」と却下されたのです。

 

結局、固定給社員である私はその年度、有給消化を多く残したままで働き続けました。

 

 

 

***

 

 

 

この状況に「ボーナスもある正社員なのだから、他の社員より責任や仕事量が多いことは当たり前だ」と思った人もいるかもしれません。

 

しかし後になって分かったことですが、当時、時給制社員と月給制社員の給料と労働時間については以下のようになっていました。

【時給制社員Aさんのある月の給料】
時給(1,100円)×180時間 +残業3時間(1,100円×3×1.25)=202,125円
 
【月給制社員である私の同じ月の給料】
月給21万円+ボーナス月額換算2万円=230,000円
(タイムカード上195時間の出勤)

 

Aさんは183時間働き、時給1,100円と残業分をしっかり貰えています。

 

私はタイムカード上は残業をしていないことになっているので、実際のサービス残業や昼休憩30分を加味すると、総労働時間は235時間。

つまり、時給換算すると、実質は978円(230,000÷235≒979)でした。

 

このようにサービス残業を強いられる会社で月給制で働くと、働けば働くほど時間給が低くなってしまうという実態があります。

 

 

 

また問題はそれだけではありません。

 

何故、職場内でも月給制社員である私一人の負担がここまで大きかったのか。

 

それは私を含む職場のスタッフ全員が、責任・給料の2つに関して「時給制社員<月給制社員」と思っていたからです。

 

私は当時、地域の最低賃金が800円であったこともあり、時給制社員の時給は850円程度の安い賃金だと思っていました。

そして時給制社員は同様に、月給制社員である私はたくさんの給与やボーナスを支給されていると考えていました。

 

そのため、ほぼ同期の社員も何となく私を頼るようになり、私も休憩はなるべく他の社員から回すなど、リーダーとして配慮をしていました。

そんな職場の構図だったので、上は月給制社員に多くを求め、時給制社員に責任ある仕事を振ることはほとんどありません。

 

 

 

しかしこれも、時給制社員と腹を割って話したときに判明したのですが、会社が月給制社員と時給制社員それぞれに「お互いの給与の話は絶対にしないように」と通達していたのです。

 

つまり会社にとって月給制社員とは「リスクが限定された、追加労働時間無料の社員」に過ぎないということです。

 

そして月給制社員はたくさん給与を貰っている高待遇なので、難しい仕事や残業を負担するのが当然という空気を作る。

そうすれば、追加コストが必要になる時給制社員をなるべく働かせずに職場を回すことができます。

 

さらに、時給制社員が先述の例のように家族の病気などで急に休んだとき、月給制社員である私が代わりに出勤すれば、会社は丸儲けにすらなります。

 

そんな状況では、すべての負担が月給制社員である私に集中していたのは当然のことでしょう。

 

 

 

こんな働かせ方をしている業界が、実はまだまだ日本には多く存在しているのです。心当たりのある人も多いのではないでしょうか。

 

 

 

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当時を振り返り、私がこの事実に気がついた後もストレスなく仕事を続けるためには、どうするべきだったのでしょうか。

 

 

 

1月給制社員から時給制社員への変更を会社に希望する

 

同じ店舗に月給制社員がいなくなると「便利な存在」がいなくなるので、会社に拒否される可能性が高いでしょう。

受け入れてもらえればラッキーですが、同じようなことで悩む人にとっては現実的ではないかもしれません。

 

 

 

2他の時給制社員にも協力してもらい「自分の時間給の方が低いのではないか?」と会社に提示してみ

 

「これでは自分だけ割に合わないので給料を上げて欲しい」と交渉するのです。

残業や急な出勤は変わらず自分の負担も大きいままなので、100点の解決策ではないかもしれません。

 

しかし、少しは納得感が得られる上に、会社も「便利な存在」を失いたくないので、受け入れられる可能性もありそうです。

 

 

 

3改善を諦めて自分の希望する給料や労働条件をしっかりとまとめ、同業他社への転職を考える

 

今の会社に迷惑はかけますが、初めから条件を提示して転職活動をするのは意外にアリな気もします。

特に、2と併用で行えばお互いの納得感も罪悪感も、薄れるのでとても良さそうです。

 

 

 

育休明けの女性社員が多いアパレル業界や、給与水準の低い業界で働く人にとって、「時給制社員と月給制社員のどちらが得なのか」は明白です。

何も行動を起こさなければ、その状況は何も変わらないでしょう。

 

当時は私も若く、このような選択をすることが頭になかったため、正直いうと何もできませんでした。

そして結局、「専業主婦になって欲しい」という夫の希望を聞き寿退社をするまで、事実に気がつきながらもただ流されて働き続けました。

 

 

 

しかし、時代はこのような働かせ方を許さない方向に大きく傾きつつあります。

 

もし自分の職場に月給制社員と時給制社員の2種類が存在し、そして薄給で悩みながら月給制社員をしている人がいれば、このような便利使いをされているのではないか。

少し疑問を持って、行動を起こしてみてはいかがでしょうか。

 

 


この記事を書いたのは

Cool Workers運営部
Cool Workers運営部ライター
フリーランスや副業などの“自由なはたらき方”、税金、働き方改革に関する情報を発信しています。Cool Workers運営部は、様々な働き方をしているメンバーで記事を作っています。