「2018年は副業元年」ということを見聞きした人も多いと思います。
なぜ今年が副業元年と呼ばれているのか。それは厚生労働省が今年の1月にモデル就業規則を改定し、これまでの副業原則禁止から副業原則容認と大きく方針を変えたことが背景にあります。
モデル就業規則とは、企業が就業規則を作成する際のひな型となるものです。
労働者の遵守事項においてこれまで存在していた「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定が削除され、新しく「副業・兼業」に関する規定が新設されたことで、企業による副業解禁の地ならしが進んでいる状況です。
そんな中、経営者からの「自社も副業解禁に踏み切るべきか」という相談も増えてきています。
今回は悩める経営者のために、副業解禁のメリットと副業解禁時にやるべきことをご紹介したいと思います。
目次
副業解禁のメリット
実は、副業解禁によりメリットがあるのは従業員だけではありません。企業側にも副業解禁のメリットが十分に期待できると言われています。
そこで、私の会社員時代や大学時代で関係のあった人で、現在は経営者として生活している人たちに対して、実際に電話や対面でヒアリングをさせてもらいました。
ヒアリングしてみると、「副業解禁についての考え」「自社で副業を解禁しているかどうか」「副業解禁していない場合/副業解禁している場合、その理由」などについて、副業解禁は経営者にとって3つのメリットがあることが分かりました。
コスト0で従業員の研修ができる
「副業を解禁すると本業がおろそかになって生産性や能率が悪くなってしまうのでは」と考える人も多いと思います。
しかし、実際は副業を解禁することで従業員のモチベーションやスキルがアップした、とプラスの効果を実感している経営者が大半でした。
副業を始めるには、営業から実作業、宣伝広告など、会社に頼らずに自分で試行錯誤しながら実行していくことが必要になります。
副業では企業という枠組みの中にいるだけでは経験できないことを経験できるので、自然とモチベーションもスキルも向上していくのです。
企業としては、副業を容認するだけ、つまりコスト0で従業員の研修ができるという旨味があるのです。
従業員の定着率が上がる
副業を解禁した経営者が口を揃えて言っていたのは、「優秀な人ほど副業をする傾向が高い。」ということ。優秀であればあるほど、さまざまなところから仕事の依頼が殺到します。
優秀な人ほど自己研鑽や収入増加に興味があるので、「副業を始めてみようかな」とか「他社から受けたヘッドハンティングで転職を検討してみようかな」という機会が多いものです。
副業を禁止していると優秀な人は他に行ってしまうこともありますが、副業を解禁していれば自社に留まってくれる可能性も高まります。
副業解禁には、従業員、特に優秀な人材の定着率を上げるという効果もあるのです。
自社のPR、ブランディングに繋がる
副業を解禁した経営者の中には、「副業解禁そのものを、ニュース化して企業ブランディングに繋げるという意図があった」という人もいました。
実際、副業解禁という世の中の流れはまだまだ始まったばかりなので、副業を解禁するという企業はまだまだ少数派です。
一方で、働き方改革には多くの人が注目しているため、個々人がそれぞれのワークライフバランスを模索しているという状況もあります。
そんな中、先手を打って副業を解禁するということは希少性の高いニュース発信となります。
副業解禁した狙いや副業解禁の運用ルールなどで独自の戦略を打ち出すことができれば、企業としての個性も際立つために企業のPRにもつながります。
結果として副業意識の高い優秀な人材を新たにリクルーティングできるという好循環が生まれるのです。
副業解禁時にやるべきこと
これまで述べてきたように、副業解禁には企業として大きなメリットがあることが分かりました。
一方で、もちろんデメリットもあります。デメリットではなくメリットを享受するために、副業解禁時にやるべきことをご紹介したいと思います。
副業・兼業に関する資料を入手する
まず最初に、副業・兼業に関する最新動向を確認し、必要な資料を手に入れましょう。
具体的には厚生労働省のホームページにある「副業・兼業の促進に関するガイドライン」や「副業・兼業の促進に関するガイドラインQ&A」などです。
前述した「モデル就業規則」も副業者・兼業者にとって最低限必要な情報となるので、入手した上でしっかりと内容理解に努めることが重要となります。
他社のベストプラクティスを調べる
副業解禁のために必要な最低限の情報を手に入れたら、次は副業を解禁した他社事例を研究しましょう。
副業を解禁する企業といえば、ベンチャー企業や中小企業が多いのかなとイメージする人も多いかもしれませんが、大企業でも副業を解禁した事例が続々と出てきています。
有名なところであれば、新生銀行やユニ・チャーム、富士通、ロート製薬、ソフトバンク、メルカリなども副業を解禁した企業です。
それぞれの企業に副業を解禁した狙いや副業解禁のルールなどがありますので、事例を調べてみて良いなと思う点があれば自社の副業解禁時にも採用してみましょう。
いち早く副業解禁へと舵を切った企業からは学ぶべきことが多いはずです。
十分にリスクヘッジした副業・兼業に関する規定を作成する
副業解禁には、「情報漏えいのリスクが上がる」「自社の業務との利益相反になる可能性がある」「本業がおろそかになる可能性もある」などの課題があります。
企業は、副業解禁に伴って就業規則を改定する必要があるため、あわせてこれらの課題に対してリスクヘッジした内容に変更することが大切です。
例えば、「社外への機密情報の漏えいの禁止と、漏えいした場合の懲戒処分や損害賠償請求」などを定めることによって、情報漏えい対策ができます。
また、副業を許可制とし、「自社の業務との利益相反になる可能性の高い同業他社での副業を認めない」とか「自社の評判を落としめるような副業は認めない」など、許可しない副業先の基準を明文化することで、副業解禁による自社へのネガティブな影響を抑えることができます。
さらに、一度許可を出したとしても、本業に支障をきたしてしまった場合など、副業の許可を取り消す場合の基準も明確にしておき、規定が形骸化してしまわないように対策を講じておくことも大切です。
最後に
副業が定着していく中で、優秀な人材を引き留め、新たに採用し自社の競争力を上げるためには、副業を解禁させることが一番の近道と言っても過言ではありません。
副業解禁には、働く人だけではなく企業側にも「コスト0で従業員の研修ができる」「従業員の定着率が上がる」「自社のPR、ブランディングにつながる」という確かなメリットがあるので、副業を解禁すべきかどうかで悩んでいる経営者は、今こそ決断すべきです。
「副業・兼業に関する資料を入手する」「他社のベストプラクティスを調べる」「十分にリスクヘッジした副業・兼業に関する規定を作成する」という3つのステップで、副業解禁によるメリットを最大化していきましょう。
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