2018年から変わる配偶者控除・配偶者特別控除のフリーランスへの影響
ニュースなどで「配偶者控除の制度が変わる」と聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。配偶者控除と配偶者特別控除の見直しが平成29年度に行われ、平成30年分から改正されることになりました。つまり平成30年の年末調整や平成31年3月の確定申告から、改正された内容で税金を計算しなければならなくなります。
配偶者控除・配偶者特別控除の制度は、結婚している人はその分の生活の負担が増えるので税金の計算をするときに優遇するための制度です。
今回は、配偶者控除と配偶者特別控除の制度が変わることで、フリーランスの税金の計算や生活にどのように影響するのかを考えていきます。
平成29年までの配偶者控除・配偶者特別控除
平成29年までの配偶者控除とは?
平成29年までの配偶者控除は、税金を納める人が結婚していて配偶者がいる場合に、所得から38万円(70歳以上は48万円)を引いて税金を計算することができる制度です。この制度は適用するために4つの要件があります。
1つ目は、配偶者が民法上の配偶者にあたることです。夫婦別姓にしようと籍を入れていない場合などには、この制度は使えません。
2つ目は、税金を納める人と同一生計の家族であること、つまり同じ財布で生活していることです。
3つ目は、その配偶者の年間の合計所得が38万円以下であることです。
4つ目は、白色申告者の事業専従者でないこと、または、青色申告者の事業専従者である場合にはその年に給与の支払いを受けていないことが必要になります。たとえば、青色申告をしているフリーランスが妻を事業専従者にして専従者給与を支払っている場合には、配偶者控除の制度を使うことはできません。
※参考・参照サイト:国税庁「No.1191 配偶者控除」
平成29年までの配偶者特別控除とは?
平成29年までの配偶者特別控除とは、配偶者に38万円を超える所得があることで配偶者控除が適用できないときに、配偶者の所得金額が一定の場合までは、ある程度の所得控除を認める制度です。配偶者特別控除にも配偶者控除と同じように適用するための要件があります。
自分の年間合計所得金額が1,000万円以下であること、他の人の扶養親族になっていないことという要件が加わり、配偶者の年間の合計所得の金額の要件が76万円未満に変わる以外は、配偶者控除の要件と同じになります。配偶者の合計所得金額が38万円未満であれば配偶者特別控除ではなく、配偶者控除の適用となります。
所得からいくら控除できるかは、その配偶者の年間の合計所得がいくらであるかによって変わります。最高38万円で、配偶者の年間の合計所得金額が高ければ高いほど控除できる金額が少なくなり、一番少ない金額は3万円です。
※参考・参照サイト:国税庁「No.1195 配偶者特別控除」
平成30年からの配偶者控除・配偶者特別控除
改正の具体的な内容
平成30年から改正される配偶者控除・配偶者特別控除も、基本的な部分は平成29年までの制度と同じで、結婚している人の税金の負担を少なくするための制度です。改正のポイントは大きく3つにわけられます。
自分の所得が多いと適用できない
平成29年までは、自分の合計所得がいくらであっても配偶者控除の適用を受けることができました。しかし、平成30年からは、自分の合計所得が1,000万円を超えていると配偶者控除の適用を受けることができなくなります。今まで配偶者控除の適用を受けていたフリーランスの方で、自分の収入が多い方は注意が必要です。
38万円の控除を受けることのできる金額が150万円に拡大
配偶者控除では、その配偶者の合計所得金額が38万円以下(給与収入ベースだと103万円以下)で、38万円の所得控除を受けることができます。これは平成29年までと同じです。
配偶者特別控除では平成29年までは38万円超40万円未満(給与収入ベースだと103万円超105万円未満)で38万円の控除額でしたが、平成30年からは合計所得金額900万円未満の人の配偶者の合計所得が38万円超85万円以下(給与収入ベースだと103万円超150万円以下)の人が、38万円の控除を受けることができます。
38万円の控除を受けようとするために配偶者の収入を103万円以下に調整してきた人もいると思いますが、合計所得金額が900万円に満たないフリーランスにとっては、配偶者が今までよりたくさん稼いでも150万円までの給与収入であれば、38万円の控除を受けることができるということになります。
自分の合計所得金額によって控除額が変わる
平成29年までは、自分の合計所得金額によって控除額が変わることはありませんでしたが、平成30年からは、配偶者控除・配偶者特別控除ともに、自分の合計所得金額によって受けることのできる控除額が変わってきます。もともと配偶者特別控除は、配偶者の合計所得によって控除額が変わってくるものですが、そこに自分の所得金額という要素も増えるために、控除額の表が今までより複雑になります。
結論としては、自分の合計所得金額が低い人であれば今までと変わらないか、今までよりも受けることのできる控除額が増えます。しかし、合計所得金額の高い人だと受けることのできる控除額が減る可能性があります。
具体的な金額は、国税庁のサイト「No.1191 配偶者控除」「No.1195 配偶者特別控除」に掲載されている表で確認してください。
配偶者控除・配偶者特別控除の改正で気をつけるポイント
配偶者のいるフリーランスは、配偶者控除・配偶者特別控除の改正で、平成30年分の確定申告から控除することができる金額が変わる場合があるので、気をつけてください。
この改正で、配偶者の収入が給与収入ベースで150万円までは38万円の控除を受けることができるようになるので、「配偶者は、今までは103万円までしか稼がないようにしていたけど、これからは150万円まで稼いでも大丈夫」と思っている人は、注意が必要です。
社会保険の扶養を考えるときには、130万円の壁(場合によっては106万円)といわれる金額があり、これを超えると社会保険の扶養からはずれてしまいます。仕事をかけもちしているなどで国民健康保険ではなく社会保険に加入しているフリーランスの方で、配偶者が自分の社会保険の扶養になっている場合には注意してください。
まとめ
今回の改正は、年収の少ないフリーランスの方で配偶者が働いている場合、配偶者の収入が今までより多くても控除を受けられる可能性が高いという意味で、意味のある改正といえるでしょう。配偶者がいたり子供がいると支出も多いので、このような税制の拡充は、フリーランスが結婚や子育てといったライフプランを考えやすくなります。
税法改正以外でも子育て支援制度が拡充されてきていますので、フリーランスで結婚や子育てを考えている方はチェックしてみるとよいでしょう。
この記事を書いたのは
最新の投稿
- 2024年12月9日社員研修パワーハラスメント研修完全ガイド | 効果的な実施方法と重要ポイント
- 2024年12月6日社員研修コンプライアンス研修とは?企業価値を高める効果的な実施方法と注目すべきテーマを解説
- 2024年12月3日ビジネススキルSNSリテラシーとコンプライアンス対策|企業が注意すべきポイントと具体的な予防策
- 2024年11月30日ビジネススキルレジリエンスとは?現役コンサルタントが解説する意味・効果・高める方法