フリーランスが知っておくべき決算書の見方


フリーランスが知っておくべき決算書の見方

フリーランスは青色申告者であれば、確定申告のときに青色申告決算書を作成します。自分で作成するのであれば、青色申告決算書にはどのような項目があり、何の金額がその項目に関係してくるのかがある程度わかると思います。しかし、税理士に申告書の作成を依頼している場合には、できあがってきた書類を見るだけになってしまいます。

 

また、決算書には確定申告時の青色申告決算書だけではなく、企業が公表している財務諸表というものもあります。この財務諸表は上場企業であれば一般に公開されているので、取引や株式投資をするときの情報として利用することができます。

 

フリーランスとして自分で事業をしているからには、個人事業や企業の情報が集約されている決算書の見方を知っておいて損はありません。

 

 

 

 

1.決算書の見方を知る必要がある理由

 

まず、一般的に決算書とは何かを説明したいと思います。フリーランスにとってなじみが深い決算書は、青色申告者が確定申告時に税務署に提出する青色申告決算書です。しかし、個人事業ではなく会社にも決算書というものが存在し、財務諸表とよばれています。

 

青色申告者が確定申告をするときには、青色申告決算書も提出しなければなりません。それと同じように法人が申告を行うときにも、決算書は添付書類となっています。この税務署に提出する書類は他の人は見ることができませんが、上場企業の場合は利害関係者が多いので情報公開制度として、財務諸表を一般に公開することが義務付けられています。

 

フリーランスとして事業を行っているということは、自分で事業を経営しているということです。経営者として、自分が税務署に提出している青色申告決算書を理解しているだけではなく、基本的な決算書の見方を理解できていることは大切なことです。なぜなら、決算書はその事業の経営成績や財務の状態を示している資料となるからです。

 

これからの自分の事業を考えていくためや、取引先の事業の状態を知るために決算書の見方を理解しておきましょう。

 

 

 

 

2.決算書とはなにか

 

決算書は、その企業または個人の経営成績や財務の状態を示す書類のことで、いくつかの書類にわかれています。その決算書にも共通する書類は、損益計算書と貸借対照表になります。

 

決算書は、確定申告をするときに税務署に提出するものですが、ほかにも決算書を作成する目的がいくつかあります。

 

金融機関が事業にたいして融資を行うときに審査する資料として決算書の提出を求められることがあります。上場企業では、株式投資の判断材料として使われます。取引を行う上で決算書をみて取引を行うケースもあります。さらに決算書は、個人事業や企業の1年間の活動や財務状態をあらわすものなので、経営者自身が自分の事業の経営状況や経営分析を判断するために使うことができることに意味があります。

 

 

 

 

3.損益計算書

 

損益計算書は、個人や企業の1年間の営業活動をあらわすものです。基本的には、収入と支出が記載されますが、現金ベースでの収入や支出だけでなく、将来収入となるものが確実な収益や、支払うことが確定している費用も計上されます。

 

つまり、どのくらいの収益をあげて、その収益をあげるためにどのくらいの費用がかかり、その結果としてどれくらいの利益が出たのかが記載される書類ということができます。これを一言でいい表すと、「損益計算書は経営成績をあらわすもの」ということができます。

 

損益計算書で見るべきポイントは、事業規模と利益率です。どんなに利益率がよくても金額自体が少なければ、安定した経営を行っているとはいえません。また、取引規模が大きくても利益率が悪ければ、不効率な経営をしているといえるでしょう。

 

損益計算書を見る時に気を付けなければならないことは、ひとつの期だけでみて判断すべきではないということです。どれだけ取引規模や利益率がよくても、何年かを通してみて徐々に悪化しているのであれば、事業としての将来性は少ないと判断することができます。逆に、取引規模や利益率が悪くても、何年かを通してみて徐々に良くなっているのであれば、今後もどんどん良くなっていく可能性があるといえます。

 

 

 

 

4.貸借対書表

 

貸借対照表は、一定時点の事業や企業の状態を表す書類のことをいいます。「貸借対照表は財政状態を表す」ということができます。一言で財政状態といっても、いろいろな見方をすることができますので、代表的な2つの見方をご紹介します。

 

 

 

 

(1)資金調達の状況

 

貸借対照表には、大きくわけて、資産と負債・資本が記載されています。個人事業であれば、資本ではなく元入金、事業主勘定になります。

 

貸借対照表では、借金である負債や資本で調達した資金を、どのような資産に使っているかを見ることができます。つまり、資金をどのように調達してどのように運用しているかが分かるわけです。

 

資本や元入金に比べて借金である負債が多い場合には、返済しなければならない資金がたくさんあるということになり、返済しなければならない資金にたいして短期的に換金できる現金・預金・有価証券などがどれくらいあるかを考えなければなりません。

 

資産のほうをみてみると、事業の性質によっては現金や預金が多いだけでは事業が順調とは判断することができません。事業に使うことのできる資産がどのくらいあるか、在庫がどのくらいあるかも事業の状態を判断する材料になります。

 

さらに事業で使う資産ではなく、有価証券などの金融資産が多い場合には、本業ではなく投資に力を入れているのだろうか、という判断をすることになります。

 

 

 

 

(2)支払能力、企業価値

 

貸借対照表は、その時点の会社の支払能力を表すという見方もできます。貸借対照表に計上する金額は、基本的には売却価値ではありませんが、もし事業やその企業を解散した場合には、おおよそいくら残るかの判断をすることができます。また、その企業がどれだけの価値があるかを判断するのに使うことができます。

 

資産から負債をひいた自己資本や元入金などが、その会社や事業の支払能力、企業価値といえます。支払能力や企業価値は、貸借対照表に集計された金額だけでは判断しきれませんが、おおよその状況をつかむことができます。もし、資産から負債をひいた金額がマイナスになっていれば、支払能力がなく企業価値もマイナスと判断することになります。プラスであれば、支払能力に余裕があり企業価値もプラスと判断することができます。

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5.その他の書類

 

決算書には作成目的に応じて、損益計算書と貸借対照表のほかにいくつかの書類を作成します。

 

 

 

(1)青色申告決算書

 

フリーランスが青色申告決算書を作成するときには、損益計算書と貸借対照表のほかに、損益計算書の明細や減価償却表を作成して税務署に提出します。

 

 

 

(2)キャッシュフロー計算書、株主資本計算書

 

企業が財務諸表を作成するときには、換金性の高い現金などの動きを記載したキャッシュフロー計算書や、株主資本などの変動状況を表した株主資本等変動計算書を作成します。
企業が財務諸表を作成

 

 

 

 

6.まとめ

 

フリーランスが決算書の見方について知ろうと思う場合には、まずはなじみの深い自分の事業の青色申告決算書を理解していくことからはじめるとよいでしょう。上場企業であれば財務諸表が一般公開されていますので、いろいろな企業の財務諸表を見ることで決算書を読みとくことができるようになってきます。

 

フリーランスであれば経営者として、資金繰りや事業の状態を把握するためにも、決算書を見ることができるようになるとよいと思います。

 

 


この記事を書いたのは

Cool Workers運営部
Cool Workers運営部ライター
フリーランスや副業などの“自由なはたらき方”、税金、働き方改革に関する情報を発信しています。Cool Workers運営部は、様々な働き方をしているメンバーで記事を作っています。