残業が多い職種や業界一覧


残業が多い職種や業界一覧

安倍首相が掲げている一億総活躍社会を目指す上で重要な政策として「働き方改革」が進められています。働き方改革実現会議が定期的に行われ、その中で残業時間の抑制についても、現在議論されているところです。

 

 

会社員にとって、残業時間はナーバスな問題です。

 

私の周辺の反応を見ると、ただ上限を決めるだけで各人の業務に対して会社が何も手を打たないと、結局持ち帰って仕事をする方法を模索したり、どこの業務を省くかを考えたりと余計な気を使うという意見もありました。会社が業務にメスを入れないまま残業時間だけを抑制すると、個人の仕事によりばらつきができて、組織として機能不全になることも考えられます。

 

 

では、実際にどのくらい残業しているのか、残業時間が多い業種や職種について、考えていきたいと思います。転職を考えられている方や現在の仕事との比較のご参考になれば幸いです。

 

 

 

業種別残業時間

 

厚生労働省の「毎月勤労統計調査」

 

※「平成27年分結果速報」および「平成28年分結果速報」の「第2表 月間実労働時間及び出勤日数」から所定外労働時間のみを抜粋。

 

産業 平成27年 平成28年
所定外労働時間
[時間]
前年比
[%]
所定外労働時間
[時間]
前年比
[%]
調査産業計 11.0 -1.0 10.8 -1.6
鉱業,採石業等 12.2 -2.3 12.9  5.6
建設業 13.8  6.5 13.5 -2.2
製造業 16.0  0.4 15.7 -1.8
電気・ガス業 15.6 -0.9 15.9  2.2
情報通信業 17.7 -2.3 16.4 -7.2
運輸業,郵便業 23.8 -2.3 23.0 -3.3
卸売業,小売業  7.3 -0.9  7.5  2.5
金融業,保険業 11.8 -2.7 11.5 -2.2
不動産・物品賃貸業 12.3  3.1 12.2 -0.5
学術研究等 13.5 -9.4 13.4 -0.7
飲食サービス業等  5.7  4.5  5.9  3.5
生活関連サービス等  7.4 -6.4  7.2 -2.0
教育,学習支援業  7.9  5.6  7.6 -3.0
医療,福祉  5.1 -4.3  5.1  0.1
複合サービス事業  7.8  5.8  7.2 -7.4
その他のサービス業 11.4 -5.0 11.5 -0.2

 

 

 

 

 

Vorkers発表の「平均残業時間推移」

 

※「6万人の社員クチコミによる「平均残業時間推移」 Vorkers 働きがい研究所」より、残業時間の多い上位の20業種について抜粋。

 

業界 平成27年 [時間] 平成28年 [時間]
広告代理店、PR、SP、デザイン 64 59
コンサルティング、シンクタンク 65 58
建築、土木、設備工事 58 55
監査法人、税理士法人、法律事務所 48 48
放送、出版、新聞、映像、音響 58 47
証券会社、投資ファンド、投資関連 48 42
インターネット 46 41
住宅設備、建材、エクステリア 48 41
不動産関連、住宅 47 41
印刷、紙、パルプ、書籍、パネル 45 39
重電、産業電気機器、プラント関連 39 38
人材、コールセンター、業務請負 39 36
教育、研修サービス 38 36
生命保険、損害保険 41 35
SIer、ソフト開発、システム運用 39 35
機械関連 38 35
総合電機、家電、AV機器 36 35
官公庁、独立行政法人 39 34
コンピュータ、通信機器、OA機器関連 34 34
医薬品、医療機器 35 33

 

 

 

 

 

差異について

 

インターネットで公表されている業界別の平均残業時間のデータで見つかったのが、この2つでした。それぞれに調査方法の違いがあったため、どちらも載せています。この2つのデータについて、残業時間の差異が大きいように思いますが、その原因として以下の2つが考えられます。

 

・Vorkersでは、厚生労働省に比べて細かく業界で区分している

 

例えば、厚生労働省の統計調査では、その他のサービス業と一括りにされているものも、中には残業時間が短いものや長い業界があり、その長い業界がVorkersでは上位に入っていると考えられます。

 

 

・厚生労働省は企業調査から、Vorkersは社員の口コミから集計されている

 

企業調査では、企業は残業の全てを把握していない場合もあり実数値より少ないと考えられ、また、社員の口コミの集計では、現状に全く不満がなく転職等も考えていない社員の投稿割合は少なく、残業時間は実数値よりも多くなる可能性があります。

 

 

 

 

私の感覚では、社員が投稿されているデータを集計したVorkersの方が近いのかなと思いますが、皆様の感想はいかがでしょうか。

 

ちなみに、厚生労働省の調査では産業計の月平均残業時間数が27年11.0時間、28年10.8時間となっていますが、Vorkersの同ページの平均残業時間推移では27年39時間、28年35時間となっております。

 

 

 

 

 

残業時間が多い業界について(Vorkersから)

 

まず、これは厚生労働省の調査にも言えることですが、全体で見ると、平均残業時間は27年から28年にかけて減っています。政府の取組はもちろんのこと、過労死などの問題が出てきて、企業として残業時間抑制の取組を行っているためと思われます。

 

 

その中で、平均残業時間1位は「広告代理店、PR、SP、デザイン」の59時間です。

広告代理店と言えば、2015年末に痛ましい過労自殺があり、社会的にも大きく取りあげられました。

クライアントとの折衝を重ねながら期限を守って最良の作品をと考えると、社員側からも残業時間に抑制が効きづらくなる傾向があるように思います。クライアントの意向で制作物の使用変更が起こり得る状況の中での請負契約(納品によって仕事が完遂する)というのは、激務になりやすいと考えられます。

 

 

2位は「コンサルティング、シンクタンク」の58時間です。

コンサルティングは準委任契約(仕事の成果物が決められておらず、善管注意義務をもって仕事をすることで報酬を得られる)が主体と思いますが、クライアントから頼まれた仕事の期限はありますし、短い期間でその業界のことをキャッチアップしてクライアントをリードしていく必要があることを考えると、残業時間も自然と増えていくと考えられます。

 

 

3位の「建築、土木、設備工事」55時間は、広告代理店の状況に似ていると思います。

請負による期限厳守の中で仕様変更などが起こることもあり、当初の予定を超えた激務になりやすいと考えられます。

 

 

4位の「監査法人、税理士法人、法律事務所」は27年から28年にかけて平均残業時間が変わっていません。

人材不足も原因の一つだと思います。弁護士は、今や司法試験に合格しても就職先がないことがあると言われていますが、監査法人は、公認会計士の合格者の減少などにより特に中小の監査法人は人材不足となっています。

また、上場とは無縁のため、業界として残業を抑制する圧力がかかりにくいことも考えられます。その結果、現状の社員の残業時間がなかなか減らないという結果になっているのかと予想されます。

 

 

その他、全体的な傾向でいえば、サービス業が上位に来ています。無形のものを売るサービス業は終着点のない仕事が多いですので、その分、残業は増える傾向にあるのかと考えます。

 

 

 

 

職種別平均残業時間

 

Vorkers発表の「職種別残業時間(月間)ランキングTOP30」

 

※「約6万8000件の社員クチコミから分析した‘残業時間’に関するレポート Vorkers 働きがい研究所」から上位の10職種を抜粋。

 

No. 職種 残業時間 [時間]
1位 戦略コンサルタント 86.29
2位 マーケティングコンサルタント 85
3位 CIO、CTO 80
4位 プロデューサー、ディレクター(その他) 72.89
5位 組織・人事コンサルタント 71.44
6位 施工管理(建築・土木・設備・プラント) 71.23
7位 業務プロセスコンサルタント 67.74
8位 インベストバンキング・コーポレートファイナンス 67.06
9位 プロデューサー、ディレクター(WEB・モバイル・ゲーム関連) 66.22
10位 金融商品開発 66.15

 

 

 

 

残業時間の多い職種について

 

基本的に業種と連動しています。ただ、2013年6月から2014年5月に投稿されたレポートの集計であるため、平均残業時間が年々減っていることから、長めの時間になっています。

 

コンサルタントを始め、サービス業に関わるところがほとんどです。閣議決定されたまま暗礁に乗り上げているホワイトカラーエグゼプション(残業代0法案)の対象となるような職種が多いです。

残業が多い職種や業界一覧_2

皆様の状況と比べてどうでしたでしょうか。

 

平均残業時間について、これは確実に正しいと言える統計データはありませんので、上記の傾向を見て頂き、参考にして頂ければと思います。「働き方改革」もあり、おそらく残業時間は少しずつ減少していく傾向が続くと思われますが、裁量労働制が広がっていき、ホワイトカラーエグゼプションまで導入されれば、コンサルタントなど一部の職種では労働時間はさらに増え、他の職種との労働時間差がさらに広がっていくように思います。

 

 


この記事を書いたのは

Cool Workers運営部
Cool Workers運営部ライター
フリーランスや副業などの“自由なはたらき方”、税金、働き方改革に関する情報を発信しています。Cool Workers運営部は、様々な働き方をしているメンバーで記事を作っています。