
“脱税”と聞くと、イコール“犯罪”に繋がって、ちょっと怖いですよね。でも、一億円の脱税があって逮捕されましたというニュースが流れても、「へぇお金持ってる人はいろいろ考えるなあ」ぐらいの緊張感で見てしまいませんか?
実際に“脱税で逮捕される”となると、金額や悪質性も関係しますので、よほどのことが無ければ関係はありません。
ここでは、脱税、節税について説明した上で、フリーランスが税金全般について注意する7つのポイントを解説します。
脱税とは
脱税とは、所得税法238条第一項によると、「偽りその他不正の行為」によって税金を免れる、または還付を受けることを指します。罰則は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金(併科有)となっています。これは刑事罰になります。
「偽りその他不正の行為」とは、税の賦課徴収を不能又は困難にするような何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為を行っていることと解される。
ここには、金額の基準やどこからが不正の行為かというのは、個別判断になります。1億円以上でないと起訴されないというような時代もあったようですが、現在では、その悪質性と金額により総合判断されているようです。
では、金額がそんな大きくないし、不正行為もしていないから安心かというと、それはあくまで脱税により起訴される可能性が低いというだけで別にペナルティはあります。
少し混同してしまいがちですが、所得があるのに確定申告をしていなかった場合は、無申告加算税、所得を少なく申告していた場合は過少申告加算税、そしてその期間にかかる延滞税がかかります。そして、それが「隠ぺい又は仮装」に該当する場合は、重加算税がかかってきます。この重加算税の基準については、国税庁の「申告所得税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」というもので詳しく規定されています。
刑事事件に発展するような反社会性のある行為まではいかなくても、売上を隠して計上していなかったりすると、重加算税が課されます。こういった加算税を受けるのと、脱税は法律としては異なる扱いです。
少し乱暴ですが、「友達の家の冷蔵庫を開けて、勝手に友達のジュースを飲む」のと、「友達の家の金庫を開けて、勝手に100万円持って帰る」のでは、明らかに異なる行為ですよね。前者は「ごめんごめん今度昼飯おごるから」で許されかもしれませんが、後者は「警察呼ぶ」となると思います。
簡単にまとめます。
<脱税>
刑事罰で、10年以下の懲役、1,000万円以下の罰金
<重加算税>
行政罰で、過少申告や不納付の場合、税額の35%(無申告の場合、40%)
※5年以内に繰り返された場合は、さらに10%加算
節税
節税とは、法的に問題ない範囲で税金を少なくする行為です。この言葉が指す範囲は、非常に広いです。小規模企業共済を使ったり、減価償却資産の償却方法を変更したり、税金を少なくする目的で各種税法に則って行われるものが、節税と言われます。
ただし、税法にはっきりと規定されているわけではないが、税法の趣旨を歪める行為もあります。今は税法が改正されてできなくなりましたが、賃貸マンション建築時に自販機を使って消費税の還付を受ける方法がありました。消費税法上の抜け道を使った方法で、税理士によっては、この相談は受けないとしている方もいらっしゃいました。(興味のある方は、「消費税」「自販機」で検索してみて下さい)
また、保険商品を使った節税の中には一部グレーなものもあります。こういったものは、事例が出てくると法律で縛っていくという流れになるのかと思います。
節税という言葉に簡単に乗らない方がいいです。将来を思っての節税策でも、税法は変わりますので、いざという時に節税効果が無く、むしろ税負担が増えるといったことも考えられます。趣旨に反する方法はいずれ規制されると思っていた方がいいでしょう。
フリーランスが税金について注意するポイント
(1) 納期限後の納付には、銀行の金利より高いペナルティがつく(延滞税、加算税)
※ただし少額は切捨も有り
あまりに放っておくと、差し押さえもありますので、納付が難しい場合は、署や役所に相談に行きましょう。
(2) 申告していなくても、取引先の税務調査時に情報を集めているため、営業活動を隠しきることは、ほぼ不可能
無申告でも調査に来ます。それを無視して逃げようと思っても税務署ではっきりとした数字を掴んでいたら、更正処分を受けます。受けて納税しなければ、今度は差し押さえをされます。もちろん100%掴んでいるかというと、税務署もマンパワーの関係で難しいとは思いますが、ここまでくるとちょっと怖いですね。
(3) 期限内に申告しておけば、自分から修正申告をしても加算税は課されない
あまり知られていないことですが、過少申告加算税(収入漏れや経費の過大計上)については、調査の通知前に自分から修正申告を出せば課されることはありません。それに対して、申告期限後に正しい申告をしても無申告加算税は課されます。
これを逆手にとって、期限内に申告が間に合いそうにない場合は、所得を少なめに計算して税金を納めておいて、その後できる限り早く修正申告を出すという方法があります。延滞税はかかるため、できるだけ避けたい方法ですが、加算税は納めなくて済みます。
なお、この方法を採る場合、税金を多めに納めることはおすすめしません。申告後の還付には「更正の請求」という手続きが必要になり、これは税務署が決定するものですので、証明のために資料を準備する必要が出てくることが多いです。
※加算税:『加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし』(国税庁)
(4) 経費であることの証明義務は、基本的には納税者が負う
個人の場合は特に、業務に要した費用と業務と無関係の出費の区分が難しいこともあります。税務署側がこれを全て立証するのは難しいですから、基本的には納税者が証明責任を負うことになります。(判例では、場合によって異なりますので一概には言えませんが。)
よって、分かりにくい飲食などの経費についてはレシートの裏に相手などをメモしておくといいでしょう。
(5) 割合に応じて経費として計上しないといけない場合もある
例えば、自宅兼事務所の固定資産税や水道光熱費、業務と私用どちらでも使う車両の減価償却費やガソリン代。これらは、使用割合など合理的に計算して必要経費に計上します。業務で必要な車だから100%経費とはいきません。
(6) フリーランスの場合、福利厚生費は基本的に認められない
従業員を雇っている法人や個人であれば、その従業員に対して規則的に行われる福利厚生目的の経費は認められます。しかし、フリーランスが自分を対象として福利厚生目的で支出した費用は、私的な支出となります。イメージがつきやすいと思いますが、自分の慰安のための旅行は、業務とは関係ありません。
(7) 「業務に関連する支出=必要経費」ではない
たまに誤認されている方がいらっしゃるのが、新車を200万円で購入したからその年の経費になる(実際は法律で定められた耐用年数で按分して経費に算入)、借入金の元金も経費となる(実際には利息のみ経費となる)といったことです。
また、先に5年分の保守費用などを前払したときは、その年の分を按分して経費にしないといけないですし、逆に、商品を受け取ったが年末時点で支払っていないものについては未払費用として必要経費に計上できます。
まとめ
普通にしていれば脱税は怖くありませんが、油断していると無駄に多くの税金を納める必要が出てくることもあります。節税と言う言葉の甘い誘惑にも注意して、怪しいと思ったときは税理士などに相談しましょう。
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