会社員・自営業・フリーランスの100人に聞いた!「働き方改革」肯定派と否定派、受け止め方とは?

「日本人は仕事好きで働きすぎ、休みを取ることにあまり慣れていない。」
正しいかどうかは別として、これが私の所感です。
ほとんどの日本人が自分のために自主的に考え動き仕事をしているものの、なかには会社から強制的に長時間労働やサービス残業、休日返上を求められている方もいることでしょう。
ご存知のとおり、働き方改革関連法が2019年4月1日から順次施行され
●時間外労働上限規制導入(中小企業は2020年4月1日から)
●年次有給休暇の確実取得
などを企業側は社員に約束し、守らなければならなくなりました。[1]
しかし時を同じくして新元号発表に沸き、ゴールデンウィーク10連休突入、そして令和のスタートを迎え、どちらかといえば祝賀ムード。
働き方改革は鳴りを潜めていた印象です(これはフリーランスとしてひとり作業場で黙々と仕事をしていた私だけなのかもしれませんが…)。
そこで今回、10連休を終えたタイミングで、会社員・自営業・フリーランスの合計100人の方に、働き方改革について所感やエピソードなど思うところをクラウドソーシングサイト・ランサーズを通じてアンケートを実施し回答を頂戴しました。
この記事では考察も交え、肯定派・否定派の意見(受け止め方)をそれぞれピックアップしご紹介していきます。
アンケート概要
●実施日:2019年5月9日
●男女区分:男性58人、女性42人(有効回答100件)
●年代区分:20代:11人、30代:31人、40代:34人、50代:18人、60代:6人
●属性区分:会社員:67人、自営業:11人、フリーランス:22人
※ここでご紹介させていただく意見は一部、趣旨を変えない範囲で読みやすく編集し直しております。何卒ご了承ください。
働き方改革に肯定的な意見
まず特筆すべきは、有給休暇についての意見です。
・これまで有休が取れなかった人たちにとっては良いことだと思う。
・5日間の有給休暇取得が義務化されたので、有給を取りやすくなったと思う。
そのほか、
・残業や休日出勤が常態化している企業にとっては、勤務体制を考えるいいきっかけ。
・働き方改革には素直に期待しています。長時間勤務が少なくなるのはうれしいです。
・仕事と余暇のバランスが保てるようになることを期待します。
などが見られたのですが、
・基本的に働き方改革には賛成だが、個人的な事情を考慮すべきではないか。
など、肯定派の意見の特徴としては100%手放しで賛成というよりも、ほんの少しの憂慮を含めた回答が目立ちました。
なかには否定派ともとれる受け止め方もありましたが、ここでは肯定派の意見として方向性や趣旨が似ているものをグルーピングし、以下ご紹介していきます。
意識改革も必要なのでは?
・企業や経営陣が意識を変えることができれば良い取り組みだと思いますが、仕事量に変化はないので、しわ寄せが出て恩恵どころか負担が増える人も出てくるはず。
・雇う側が、従業員にメリットがあるように考えた上で行動しないと意味がないと思います。
・会社の意識改革だけではなく、自分自身の意識の変化も必要だと感じています。
・制度的なものをあれこれ変えるよりも、働く側の意識を変えていかないと、根本的には何も変わらないような気もする。
会社だけではなく社員も意識を変えなければという意見があるなか、そこから一歩踏み出すような意見もいただけました。
働き方改革を促進するために労使が話し合う
・仕事の効率を上げるため会社と労働者で話し合い、win-winになることが必要と考えます。
私たち働く側も努力したい
・これを機に残業を「減らせるもの」と「そうでないもの」に分別します。
・残業をなるべくしないで、就業時間内に成果を出すことを心がけるようになりました。
以上が肯定派の受け止め方です。
次章では否定派の受け止め方についてご紹介していきます。
働き方改革に否定的な意見
否定派の意見としては、
・政府が労働時間に規制をかけるということに、違和感があります。
・働き方改革ははっきりいって迷惑な話だ。家族がいるなかでの在宅勤務はムリ。
・実態と働き方をきちんと明らかにしないと変わらないのでは。
・企業毎に事情が異なるので、あまり細部にまで入り込んでほしくない。
そのほかにも
・対応できる企業とそうでない企業の現状を、もっと考えた内容にしたほうがいいと思う。
・時間に余裕はできたが収入が減った人が多く、あまりうれしい制度ではない。
・仕事量が変わらないのに、時間だけ厳しく管理されるようになった。
という意見も寄せられ、働き方改革で早速、何らかの不具合が出ていることもうかがえました。
回答をすべてチェックしていくうちに、より具体的な内容に触れたものがありましたので、以下にご紹介します。
残業減がかえって通常業務の負担増に
・残業を極力しない方針になったため、通常の仕事がタイトになって少し不満です。
・働き方改革で残業がなくなった分、主人は朝早くから職場へ向かうようになりました。
単純に仕事量はこれまでと一緒なのに働く時間だけが減り、処理速度のアップや自主的な始業時間の前倒しを余儀なくされたことがうかがえます。
残業減が給与減につながっている
・子の勤務状況を見るかぎり、恩恵を受けていないように感じる。給与減が痛いみたいだ。
・残業代がついてやっと生活ができるレベルの会社員は、結構いるはず。
・今まで残業代をあてにしていた分、経済的に回らなくなるのではと不安です。
サービス残業が増えている
・働き方改革に否定的な管理職が多いため、結果として仕事のやり方は変わっていません。なのに残業を減らせという指示だけは来るので、サービス残業が増えています。
・残業制限を謳っていますが実質的効果は薄く、かえってサービス残業などを助長している。
こういった問題が出てきているようです。
同アンケートのなかで、働き方改革による社内や周囲での影響についても複数回答可で訊ねた結果、以下のような回答が得られました。
2019年3月以前と何ひとつ変わっていない…75人
定時で仕事を終わらせることに必死…11人
みんなイライラしている…6人
残業はなくなったが仕事を持ち帰るようになった…5人
残業はなくなったが朝早く出勤するようになった…5人
穏やかな雰囲気になった…4人
仕事関係のトラブルが増えた…4人
タイムカードをきったあとサービス残業はしている…3人
残業が完全になくなった…2人
人間関係のトラブルが増えた…1人
数は多くないものの太字の部分が気になります。
これから繁忙期を迎える企業もあるでしょうから、逆に問題は増えていくのではないかというのが私の所感です。
またそこからさらに一歩踏み込み、制度の不備や準備体制が整っていないことを示唆する意見も寄せられました。
・働き方改革にスグ対応できる企業はかぎられています。残業を無くすのはいいことですが、その分の仕事を誰がいつどこでやるのか?みな平等に休んでいたらできないと思います。
・企業の人員不足の実情や実態を国は理解できていないです。仕事量がキャパオーバーし、家に持ち帰るなどサービス残業につながっています。
そのほか、
・満員電車は本当に苦痛なので通勤、帰宅時間を分散できるような改革も進めてほしい。
といった通勤改革を訴える声のほか、
・今のところ何も変わらない。
・周囲を見ても特に働き方が変わったという声は聞かない。
など、状況は旧態依然であると訴える声も聞かれました。
以上が、否定的受け止め方をされた否定派の意見です。
ここまで肯定派、否定派の意見をご紹介しましたが、比較してみると肯定派は希望的観測に基づくもの、否定派は問題提起を訴えるものであったといえます。
なかにはその2つを折衷した意見もあり、例えば、
・これからの改革で出てくるであろう不具合にも対応し、働く側が満足できるような環境にしていただきたいです。
と、問題が出てきても解決してくれればOKと受け止められます。
この章でご紹介した回答は問題提起の声がほとんどでしたから、それがクリアになれば肯定派が増える可能性は高いのではないかと私は感じました。
個人事業主・フリーランスは働き方改革をどう受け止めているか
最後にどうしてもお伝えしておきたかったのが、私も当事者である個人事業主・フリーランスの声です。
・個人事業主にも何かメリットがある改革を行ってほしい。
・フリーランス・自営業など不安定といえる人にも配慮した内容にしてほしかった。
といった意見があったほか、なかでも私が最も共感できたのは、
・個人事業主はこれまでどおり稼働時間を確保しなければ生活維持は困難です。仕事の効率化を検討し実現しなければ改革も困難な状況です。
という意見で、私もまた個人レベルでのさらなる働き方改革(仕事の効率化)が必要と感じています。
まとめ
日本人は上下関係に厳しく、なかなか上に物申すことはできません。
それゆえ意識が変わらなかった会社に社員がメスを入れることは難しいため、政府主導の働き方改革が実施されたといってもいいのでしょう。
しかし、個人事業主やフリーランスは比較的、自分で自由に指針を決めて行動を起こせます。
これまで働き方について一考されたことがなかった方はぜひ、これを機に見直してみられるのもいいのではないでしょうか。
<参考・参照サイト>
[1] 働き方改革【パンフレット】PDF「働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて」(厚生労働省、2019/4掲載)
この記事を書いたのは

- ライター
- 本業ライター。2014年12月、Lancers登録を機に業務開始。主にビジネスやライフスタイル関連の記事を執筆。必要に応じて取材・撮影もこなす。
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