
フリーランスの仕事で一番手っ取り早く始められるのが、ライターの仕事です。週刊東洋経済によると、約10%強が著述業、つまりライターの仕事に従事しています。[1]
手っ取り早く始められるというのは、ほかのライターと差別化できないと埋もれてしまうということでもあります。
差別化のひとつの手段が、英語です。英語教育の低年齢化が進むとはいえ、誰でもビジネスレベルで英語を運用できるとは言い難いのではないでしょうか。
フリーランスも同様で、英語を運用できると胸を張って言える人は多くないように思えます。
そこで、英語を運用できるとどのようなメリットがあるのかを、実体験に基づいてお話します。
留学で身に着けたこと
留学といっても、語学留学から帰国子女にみられるような高校までの教育課程での留学などさまざまです。私も大学院で海外に留学しましたが、現地で出会った日本人留学生やほかの国からの留学生の勉強目的はまったく異なります。
とくに、大学や大学院卒業後に現地に残って就職したい留学生にとって、英語を運用できるのはマストで、本業の勉強以外にも多くの努力が強いられます。
もちろん、私も英語だけを現地で身に着けたのではありません。
私の通った大学院は大半が留学生、英語圏出身者よりもノンネイティブの人が多い状況でした。英語の運用はもちろん、研究や勉強の仕方、就職やキャリアの準備など、大規模で行なっていました。
日本の大学の現状はわかりませんが、大学が非常に体系的に教育活動を行なっているわけですね。
ともかく、英語の運用だけでなく、リサーチの方法や論理的な文章の作成など、現在のライターの仕事に非常に役に立つことばかりであったことは間違いないでしょう。
ライターも英語が必要
私も最初から英語に関する仕事に従事したわけではありません。
企業に勤務する人ならもちろん、フリーランスでも自分のしたい仕事をそのままできるとは限りません。むしろ、やるのを躊躇したくなる仕事を請け負うのが、普通ではないでしょうか。
私は英語の読み書きを苦にしませんでしたので、フリーランスの仕事として翻訳の仕事とライターの仕事の両方を探していました。
翻訳業に関して詳しい人ならわかると思いますが、基本的に翻訳の仕事を請け負うにはトライアルに合格する必要があります。[2] 英語の実力があるのかよくわからない人に、翻訳を頼む人はいませんよね。アウトソーシングで翻訳の募集が散見されますが、実績がないと仕事をもらえないのが実状です。
その点、ライターというのはトライアルのようなシステムはありません。テストライティングを課すクライアントもありますが、マストではありません。
私も実績を積み重ねることが重要と考え、仕事を増やしていきました。もちろん英語の勉強法を教授するといった仕事もありましたが、ほとんどが英語とは関係のない仕事でした。
ライターの仕事がすぐに軌道に乗りましたので、英語に頼らなくとも仕事のアテはありました。
しかしライターの仕事を請け負ううちに、英語が必要であることに気づきました。紙の雑誌の売り上げが衰え、WEBベースのメディアに取って代わられるのは、情報のスピードの違いです。
通常、記事を作成すると、そこからは編集に仕事が回されます。校正や校閲、記事の趣旨に沿ったイラストやグラフの作業が入るなど、公開されるまで時間がかかります。
紙のメディアの場合さらに、印刷され、取次を経て書店へ並ぶといったプロセスを経ますので時間が非常にかかるのです。[3]
紙のメディアが情報のスピードに追いつかないのは、日本語や英語などで書かれた情報がWEB上に公開されているのが大きいでしょう。
最近ではIR(Information Retrieval:情報開示)の一環なのか、企業だけでなく大学などもニュースリリースをWEB上に掲載します。ときには、YoutubeやTwitterのようなSNSで動画をアップロードしたり、ライブ映像を配信したりします。日本から何万キロも離れた場所の情報を、スマートフォンさえあれば誰でも閲覧できます。
そのような情報のスピードに対応するには、紙のメディアでは公開までに時間がかかりすぎるのです。
英語の情報をスマートフォンで閲覧すればいいと思うかもしれませんが、それほど簡単な話ではありません。
ニュースリリースやSNSの情報は膨大にあり、その中から価値のある情報を取り出すだけでも作業がかかります。日本語ならまだしも、英語はもちろん現地の言葉で書かれていることもあります。
グローバルな時代になり、たとえばiPhone XRのような商品は全世界で販売されます。
リリースの発表は現地で行ないますので、日本語で情報を受け取るのはタイムラグがあります。日本語で情報を得るにせよ、英語でのリリース発表を読み、翻訳や意訳された文章を目にするので、時間がかかります。
ニュースは一次情報が重要といいますが、一次情報をすばやく受け取れるかが大事です。
ところが、英語やその他外国語をネイティブレベルで理解できる日本人は多くありません。
日本は人材不足ですので、優秀な人材は一部の業界に集まります。グローバル時代ですので英語を運用できるのであれば、国際的なビジネスに足を向けたほうが収入などのリターンが大きいわけですね。
つまり英語ができるからWEBライターが向いているのではなく、WEBライターは英語ができたほうが武器になるといったほうが適切でしょう。
私自身、英語とはほとんど関係のないライターから出発しましたが、気がつけば英語を活用するライターの仕事が半分くらいです。
どうすれば英語に関する仕事をもらえるか
では英語を活用するライターの仕事をどうすれば、請け負うことができるのでしょうか。
上述したように、翻訳のようなトライアルといったシステムはライターにはありませんので、これまでの仕事の実績が重要になります。英語でリサーチし記事にしたという実績がある場合は、それを提示すればいいのですが、ライターになりたての方にはハードルが高いでしょう。
そこで、まずは英語ができることをアピールするのが第一です。
日本ではTOEICが英語の実力を測る指標ですが、世界規模で標準とはいえません。文部科学省が英語の検定試験の比較参照表を公開していますので、それをもとに英語の実力(スコア)をプロフィールなどでアピールするのも一案です。[4]
アウトソーシングのサイトなどを確認するとわかるように、英語を使う記事の執筆も多く見つかります。
私が以前見たのが、海外の不動産情報をまとめるというもの。
不動産のような投資系の記事は専門的なので経済や法律の知識がないとなかなか執筆できません。加えて、海外と日本とでは不動産に関するシステムやルールが異なるので、英語で情報収集する必要があります。
英語での情報収集において日本語と同等のパフォーマンスを発揮する必要がありますが、日本語だけの案件に比べて1.5倍~2倍の報酬で仕事を請け負えることでしょう。
私のプロフィールを見て英語を使う仕事の依頼をしたという方もいますが、私から英語でも仕事ができることを先方にアプローチしたこともあります。すると英語で情報を収集してまとめる記事の依頼を請けました。
日本語で情報をまとめる記事は参入が容易なので、他のライターと競合する可能性が高く、そのため検索にひっかかるのが非常に難しい状況です。
一方で、英語をまとめた記事は希少価値があり、自分が執筆した記事だけしか日本語で情報が書かれていないこともザラです。そのため、検索にかけると上位に出現します。
英語のできる人材がライターとして重宝がられるのも、納得します。
まとめ
いかがでしたか。英語を読めるということはライター業にとって大きな武器であることがおわかりいただけたでしょうか。
私の場合、英語力だけでなく留学で培ったリサーチ力も随分と役立っています。海外の大学院では論理的な文章の書き方や文章の収集方法、リサーチの計画までしっかりと教えられます。そういう能力もまた、執筆に活かされていると実感します。
<参考・参照サイト>
[1] 「勝ち組負け組が二極化 フリーランスの前途」(週刊東洋経済 2017年7月22日号)中小企業庁「小規模企業白書 2016」をもとに週刊東洋経済が提示したデータ
[2] 『翻訳者になるためのトライアルとは』(翻訳会社JOHO)
[4] 『各資格・検定試験とCEFRとの対照表』(文部科学省 平成30年3月)
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