近年、インターネットの普及と発展により、物やサービスの流通がネットを介して行われることも増え、仕事をとってくるという行為が身近になったため、副業も身近な存在になってきました。例えば、ランサーズやクラウドワークス等のクラウドソーシングサイトを使えば、コピーライティングやwebサイトの製作、翻訳などの仕事を営業せずに受注することもできます。
ここでは、給与収入を得ている人が副業をする場合の手順や注意点をまとめていきます。
副業を思い立ったら
STEP1:あなたは公務員ですか?
公務員は、公務員法により、副業が制限されています。
以下、国家公務員法抜粋(※地方公務員法も似たような条文になっています。)
(私企業からの隔離)
第一〇三条 職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
(他の事業又は事務の関与制限)
第一〇四条 職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。
人事院の義務違反防止ガイドブックには「一定の規模以上の不動産等賃貸や太陽光電気の販売、農業等は、自営に該当しますが、所轄庁の長等の承認を得た場合には行うことができます。」とあります。
自販機の設置や、(実際には従事していない)名義のみの役員も副業とみなされますので要注意です。クラウドソーシングなどを利用して、反復して仕事をすることも副業とみなされるでしょう。相続等で止むを得ず、上記に該当するような副業ができた場合は、承認を受けましょう。
会社員の方は、STEP2へ進みます。
STEP2:会社の就業規則を見ましょう
法律で禁止されている公務員とは異なり、会社員の兼業は労働法では禁止されていません。むしろ逆の立場で、判例上「絶対的な禁止」については、就業時間中以外の時間の過ごし方は従業員に委ねられていることから認められていません。ただ、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」等の文言を就業規則に載せ、許可のない副業の禁止を定めている会社は多く、判例でも有効となっています。ただし、違反が懲戒事由となるのは、会社秩序を乱したり、約束された労務を提供できなくなるなど、本業に影響が出るような場合です。
他の事情も勘案されるため、一律には言えませんが、以下のような場合は懲戒事由となります。
・会社の取引先を利用し、個人の商売を行う
・毎日、深夜までアルバイトを行う
・自社のノウハウを使い、競合会社で働く
逆に、月に2、3回勤務時間外にアルバイトをするなど労務の提供に影響を及ぼさないような副業は禁止規定があっても、懲戒事由にはならないこともあります。
副業禁止規定がなくても、就業規則の他の文言「職務を利用して自己の利益を図らないこと」などに抵触して結果として就業規則違反となる場合もありますので、上記に照らし合わせ、会社へ影響が出る可能性のある副業については人事課や上司へ伺いを立てた方が無難です。
副業禁止について、「絶対的な禁止」「許可制の禁止」となっている場合、STEP3へ進みます。
STEP3:副業について、会社の許可を取りましょう
絶対的な禁止となっている場合、労働法上は認められておりませんので、それを会社へ伝え、許可を取るということも考えられます。しかし、会社がはっきりとした姿勢を示しているのに抵抗するように思われる場合もありますので、懇意にしている上司などがいれば相談することから始めるとよいかもしれません。
許可なく他の会社等の業務に従事しないこととなっている場合、会社へ申請して許可を取ることになります。この時のポイントは「仕事に影響がない」「会社に損害を与えない」ということをしっかりと伝えることです。副業を許可制にしている会社は、全面的に認められないことは分かっているが、本音としては副業をして欲しくないという場合が多いと思われます。
例えば、普段営業をしている従業員が週末に翻訳業を営むことについて、会社秩序の観点や十分な休養を阻害するものではないと思われても、翻訳の締め切りに追われて朝まで翻訳作業を行い、そのまま出社することも考えられます。そこで昼間の仕事に集中できないとなると、会社としては問題が出てきますので、やはり出来るだけ副業はして欲しくないと思います。
そういったリスクの管理も含め、問題が出ないことを伝えるのがポイントです。経済的な理由(配偶者が働けなくなり収入を得る必要に迫られている等)から副業を行うこともありますので、そのことを主張したくはなりますが、会社としては規則で処理することになりますので、理由がどうあれ、仕事に支障が出ないかという基準で判断するでしょう。
また、副業をする際には、同僚や上司に対しても配慮しましょう。会社として認められた副業であっても、その副業を行うことが仕事に影響すると思われて人間関係が難しくなることもあります。オープンにするのであれば、十分な理解を得られるようコミュニケーションを図っておくことが大切です。副業が会社へ還元できるノウハウとなるようなものであれば、さらに理解されやすいものとなりますので、そういった説明ができれば堂々と副業ができるように思われます。
副業が許可制となっている場合で、許可を取らずに仕事に影響がでないような副業を行っていた場合、即解雇の理由にはなりませんが、就業規則違反ということで人事考課へ影響することも考えられます。今は、インターネットの発達により情報が行き渡りやすくなっており、バレなければよいという発想を持たず、許可を得て副業を行った方がよいでしょう。
問題にならない範囲
サラリーマン大家という言葉が出てきたり、FXや投資信託など、最近になって個人の投資活動が活発になってきています。これらは時間があまりとれなくてもできる副業と言えるでしょう。
公務員についても、資産運用や一定規模以下の不動産収入については認められています。会社員については、就業規則の文言にもよりますが、程度はあるにせよ、株式投資や投資信託など資産運用まで禁止していることはないでしょう。ただし、銀行や証券会社に勤められている方は、禁止されていることも多いので要注意です。
会社員の不動産収入については、就業規則上も公務員のように明確な線引きがされていることはないと思いますが、公務員に適用されている基準(独立した戸建の場合5棟以上orアパート・マンションの場合10室以上他)も踏まえ、管理業務が仕事に影響する可能性があれば、人事課等で確認した方がいいと思われます。
副業を持つことは収入以外にも新たな可能性の発見などのメリットもあります。会社から見ても、縛り付けることで優秀な社員が離れていくリスクも一部にはあります。ただ、組織運営という観点からは、どうしてもデメリットが目立ちやすいですので、会社に影響はなく、むしろ新たに得た知識を会社へ還元するメリットもありますということを伝えて、周りも含めて気持ち良く副業を始められるよう意識しましょう。
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