30代・40代まで一つの会社で活躍してきた人は「将来このままでいいのだろうか?」と漠然とした不安をお持ちではないでしょうか。
プレイヤーからマネージャーへと転身を迫られ、これまでの仕事とは全く違うマネジメントの仕事に悪戦苦闘の日々を過ごしているかもしれません。
管理職となり、より経営に近い立場でのお仕事を始めた方もいるでしょう。経営・財務・会計・運営など管理職に求められる知識はプレイヤーのそれとは大きく異なります。
そのような知識を包括的に学ぶことができる資格が「中小企業診断士」です。
今回は、経営コンサルタント唯一の国家資格と言われる中小企業診断士にスポットを当てて、資格の概要と合格者のキャリアパスについて紹介します。
ビジネスでさらに活躍するための中小企業診断士の資格
企業に勤めている方でしたらおわかりかもしれませんが、一つの会社で決められた仕事をこなしているだけでは、どうしても知っていることや、できることに偏りが発生してしまいます。
プレイヤーとして決められた業務を淡々とこなす日々に迷いを感じているビジネスマンは、あなただけではないはずです。
転職をして新しい仕事を始めたり、退職して独立したりするのも一つの解決策かもしれません。しかしそこまで思い切った行動はとれないというのが、大半のビジネスマンの事情ではないでしょうか。
転職や独立を目指しているわけではない、しかし現状を変えたい。そんなビジネスマンにおすすめしたいのが、中小企業診断士の資格取得です。
日経キャリアマガジンの資格・スキルランキング[1] によると、取得したい資格ランキングの第1位に中小企業診断士が入っています。
試験の合格率は、一次試験・二次試験ともにストレートで4%程度の難関資格ということもあり、取得したいけどなかなか合格できない資格の一つです。
中小企業診断士は日本版MBAとも呼ばれます。
一般的なMBAの取得にかかるコストは数百万円ほど必要ですが、中小企業診断士の学習コストはそこまで必要ではありません。市販の書籍で独学すれば数万円程度、通学制の専門学校に通っても20~30万円ほどで学習をスタートできます。
中小企業診断士はあくまでも名称独占資格の一つです。無資格者が経営コンサルタントを名乗ることが許されているように、中小企業診断士には独占的な業務というものがありません。
これはデメリットに思えるかもしれませんが、中小企業診断士として活躍している人のフィールドの幅広さにもつながっています。
インターネットや書籍で中小企業診断士の資格に合格した方の感想では、多くの人が試験の合格を通じて人生が変わった、視野や人脈が広くなったと意見しているのを見かけます。中小企業診断士はただの資格かもしれませんが、これまで多くの人の人生を変えてきた価値のある資格であることは間違いありません。
中小企業診断士の試験概要
中小企業診断士の試験の概要を紹介します。中小企業診断士の国家試験は以下のような一次試験から三次試験までの3つの段階の試験となっています。
一次試験
【受験資格】
なし(誰でも受験可能)
【試験日程】
毎年8月上旬
【試験科目】
以下の7科目
①経済学・経済政策
②財務・会計
③企業経営理論
④運営管理
⑤経営法務
⑥経営情報システム
⑦中小企業経営・中小企業政策
【合格基準】
総点数の60%以上で1科目でも40%未満の科目がない事。
【科目合格制度】
60%以上の得点を得た科目は科目合格したものと見なされる。
科目合格の有効期限は3年間。その3年間で7科目すべての科目に合格すれば、一次試験合格となる。
一部科目のみ合格の場合、翌年度と翌々年度の一次試験は、受験の際に受験者が申請すれば該当科目が免除される。
【試験地】
札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の各地区
【受験料】
13,000円
二次試験
【受験資格】
一次試験に合格した者
【試験日程】
1. 筆記試験:10月の下旬
2. 口述試験:12月中旬
【試験方法】
中小企業の診断および助言に関する業務に関して、短答式または論文式による筆記試験を行い、筆記試験に合格した者に対して口述試験を行う。
【試験地】
札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の各地区
【受験料】
17,200円
三次試験(実務補習)
二次試験合格後の3年以内に実務補習を15日以上受けるか、診断業務に15日以上従事することで中小企業診断士として登録できます。
一次試験では経済学から中小企業経営まで全部で7科目の試験が実施されています。1科目100点満点で7科目合計では420点(60%)の得点が必要になります。しかも合計で420点を超えていても、1科目でも40点未満の科目があれば不合格となってしまいます。
二次試験は筆記試験と口述試験の2つの試験に合格する必要があります。筆記試験に合格した方は引き続き口述試験へと進みますが、口述試験の合格率はほぼ100%なので、実質的に二次試験は筆記試験が中心ということになります。
一般的に診断士の合格を目指している方は、会社勤めをしながら空いた時間を使って学習を進めているという方が多く、試験勉強の時間の捻出に苦労されています。
さらに試験の難易度が高いということもあり、完全合格まで2年以上、3年以上勉強を続けている方もいます。
中小企業診断士の仕事内容
中小企業診断士としての仕事を大雑把に一言で言ってしまうと「経営コンサルティング」ということになります。しかし経営コンサルティングと言っても、人によってやっている仕事は様々です。
なぜなら、中小企業診断士の資格取得で得られる知識は、いわば経営の土台部分に過ぎず、多くの診断士はその土台となる部分に加えて、独自の専門分野を掛け合わせて仕事をしているケースがほとんどだからです。
例えば、IT企業出身の診断士はITツールの導入などの支援をしていたり、もともと経理の仕事をしていた方であれば会計相談などをしているでしょう。人事をやっていた方は、中小企業の労務まで踏み込んで支援しているかもしれません。
このように経営コンサルティングの形は人によって大きく異なりますが、共通している点は「クライアントの課題発見から解決までのサポート」をする仕事であるという点です。
中小企業が抱える課題はいくつもの要因が重なり複雑な構造をしていることもあります。
そのような時は診断士が一人で解決するのではなく、パートナーとなる税理士・会計士・社労士・ファイナンシャルプランナーなどと協力して企業の支援を行います。中小企業診断士がその中心となって、パートナーを取りまとめる役割を担うということも仕事の一つです。
資格合格者はどのようなキャリアを歩んでいるか
社団法人中小企業診断協会が平成17年9月に実施したアンケート調査結果[2] によると、中小企業診断士として独立開業を予定している人の割合は30%ほどに過ぎません。
中小企業診断士は士業といっても名称独占資格であり、独占的な業務がないことも理由と考えられますが、資格の取得の動機として、独立よりもスキルアップを目的とした人が多いという点も理由にあげられます。
試験合格後に独立を目指さない診断士は、企業内診断士としてのキャリアを選ぶ人たちや、コンサルティング会社への転職などを目指している人たちです。現在勤めている会社の中で昇進や昇給を目指したり、診断士の試験合格で身につけた知識を活かして、まずはコンサルティング会社で経験を積もうと考える人も多いようです。
まとめ
中小企業診断士の資格を取得することで、ビジネスシーンで必要となる知識を幅広く身につけることができます。
その一方で、診断士の資格をただのスキルアップの手段としてしか見てないことを批判する人もいます。中小企業診断士は簡単には取得できない資格だからこそ、そのような批判が出てくるのかもしれません。
中小企業診断士を目指している方は、漠然としたスキルアップではなく、合格後の自分の人生がどうありたいのか、そして資格をどう活かすのかを明確にしましょう。
資格取得に対するはっきりとしたビジョンを作っておけば、試験勉強の辛い期間も耐えることができます。そしてそれが、中小企業診断士合格の第一歩につながってくるはずです。
<参考・参照サイト>
[1] 『第5回 取得したい資格ランキング – ランキング 資格ランキング2016』(日経キャリアNET)
[2] 『データでみる中小企業診断士』(J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト])
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