なぜ起こる?ハラスメント行為の心理的メカニズムと組織文化の関係性

    なぜ起こる?ハラスメント行為の心理的メカニズムと組織文化の関係性

    「あの上司の言動はハラスメントでは?」「うちの会社、ハラスメント対策が形骸化している気がする」こうした声が職場で聞かれることは珍しくありません。

    近年、ハラスメントという言葉は広く認知され、様々な種類のハラスメントが社会問題として取り上げられるようになりました。

    しかし、なぜハラスメントは発生するのでしょうか?また、組織文化とはどのような関係があるのでしょうか?

    本記事では、ハラスメント行為の心理的メカニズムと組織文化の関係性について深掘りしていきます。

    ハラスメントが生まれる心理的メカニズム

    ハラスメント行為には様々な心理的要因が絡み合っています。

    加害者の内面を理解することは、有効な対策を講じる上で非常に重要です。

    権力の不均衡と支配欲求

    ハラスメントの根底には、多くの場合「権力の不均衡」が存在します。

    上司と部下、先輩と後輩、正社員と非正規社員など、立場や権限の差がある関係において、優位な立場にある人が自らの権力を誇示したり、支配欲を満たしたりするために不適切な言動を行うことがあります。

    この権力の行使は必ずしも意識的なものではなく、自分の言動が相手にどのような影響を与えているかに無自覚なケースも少なくありません。

    「冗談のつもり」「叱咤激励のつもり」という言い訳はよく聞かれますが、これは自分の立場から物事を見る姿勢、つまり相手の視点に立つ能力(共感力)の欠如を表しています。

    ストレスとフラストレーションの発散

    自身が抱えるストレスやフラストレーションの発散口として、より弱い立場の人にそれを向けるという心理も見られます。

    職場での過度なプレッシャーや成果主義、長時間労働などが人の余裕を奪い、感情のコントロールを難しくすることがハラスメント行為につながる場合があります。

    例えば、上司から厳しい叱責を受けた人が、その後すぐに部下に厳しく当たるという「ストレスの連鎖」は職場でよく見られる現象です。

    こうした感情の転移は無意識のうちに行われることが多く、自分自身のストレス状態に気づきにくいという特徴があります。

    固定観念と偏見

    性別、年齢、国籍、学歴などに関する固定観念や偏見もハラスメント行為の原因となります。

    「女性だから補助的な仕事をするべき」「若いから無茶をきかせても大丈夫」など、個人の能力や特性ではなく属性によって人を判断し、それに基づいた不適切な言動を取ることがハラスメントにつながります。

    特に日本社会に根強く残る「男性中心主義」や「年功序列」の価値観は、セクシュアルハラスメントやエイジハラスメントの温床となることがあります。

    これらの固定観念は長い間社会に浸透してきたものであるため、自分自身の思考や行動の偏りに気づきにくい点が問題です。

    組織文化とハラスメントの関係性

    ハラスメントは個人の問題だけではなく、組織文化と深く関わっています。どのような組織文化がハラスメントを生み出しやすいのか、考えてみましょう。

    「空気を読む」文化と同調圧力

    日本の組織ではしばしば「空気を読む」ことが重視され、明文化されていないルールや慣習に従うことが求められます。

    この「暗黙の了解」を重視する文化は、新しい視点や多様な価値観の受け入れを難しくし、ハラスメントが生じても「昔からそうだった」「みんなそうしている」という理由で問題視されないことがあります。

    飲み会への参加強制や長時間労働の美化など、組織内で「当たり前」とされている慣行が実はハラスメントであるというケースは少なくありません。

    こうした同調圧力の強い環境では、ハラスメントの被害者も声を上げにくく、問題が潜在化しやすいという特徴があります。

    コミュニケーション不全と透明性の欠如

    組織内のコミュニケーションが不足していると、誤解や摩擦が生じやすくなります。

    特に、上下関係が厳しく、オープンな対話が制限されている組織では、小さな問題が大きなハラスメント事案に発展することがあります。

    また、意思決定プロセスが不透明であったり、評価基準が曖昧であったりする組織では、不公平感や不信感が募り、それがハラスメント行為を誘発する土壌となる可能性があります。例えば、なぜある人が昇進したのか、なぜある決定がなされたのかが明確でない場合、憶測や嫉妬が生まれ、人間関係の悪化につながることがあります。

    成果至上主義と過度な競争

    短期的な成果や数字だけを重視する組織文化では、目標達成のためなら手段を選ばないという風潮が生まれることがあります。

    このような環境では、「結果を出すためなら多少強引な手法も許される」という考え方が黙認され、パワーハラスメントが正当化されるケースが見られます。

    また、従業員間の過度な競争を煽る評価制度や、失敗に対して厳しいペナルティを科す文化は、職場の協力関係を損ない、互いを蹴落とすような行動や陰口、いじめなどのハラスメント行為を促進することがあります。

    ハラスメントを防ぐための組織づくり

    ハラスメントの心理的メカニズムと組織文化の関係を理解した上で、どのような対策が効果的なのでしょうか。

    心理的安全性の高い組織文化の構築

    ハラスメント防止の基盤となるのは、「心理的安全性」の高い組織文化です。

    心理的安全性とは、自分の意見や懸念を表明しても、拒絶されたり罰せられたりしないという確信が持てる状態を指します。

    リーダーが率先して自らの非を認めたり、失敗から学ぶ姿勢を示したりすることで、チーム全体の心理的安全性は高まります。

    また、多様な意見を尊重し、建設的な対話を促進する雰囲気づくりも重要です。

    こうした文化があれば、ハラスメントの芽は早期に摘み取られ、深刻な問題に発展する前に解決できる可能性が高まります。

    明確なポリシーと実効性のある研修

    ハラスメント防止のためには、明確なポリシーの策定と周知が不可欠です。

    どのような言動がハラスメントに当たるのか、問題が生じた場合どのような対応がなされるのかを具体的に示すことで、組織の姿勢を明確にします。

    しかし、ポリシーの存在だけでは不十分です。

    実効性のある研修を通じて、ハラスメントに関する正しい知識と対応スキルを全従業員に提供することが大切です。

    特に管理職向けの研修では、自らの言動が与える影響力の大きさを認識させ、部下との適切なコミュニケーション方法を学ぶ機会を設けることが効果的です。

    単なる「知識注入型」ではなく、ケーススタディやロールプレイを取り入れた実践的な研修により、実際の職場で活用できるスキルを身につけることができます。

    相談窓口と適切なフォロー体制

    ハラスメントの被害者が安心して相談できる窓口の設置も重要です。

    社内の人事部門だけでなく、外部の専門機関と連携するなど、相談者のプライバシーに配慮した仕組みづくりが求められます。

    また、相談後の対応プロセスを明確にし、被害者が不利益を被ることなく問題解決が図られるよう、適切なフォロー体制を整えることも大切です。

    相談しても何も変わらない、かえって状況が悪化するという経験は、組織への不信感を高め、問題の潜在化を促進するだけです。

    経営層のコミットメントと継続的な取り組み

    最も重要なのは、経営層がハラスメント防止に本気で取り組む姿勢を示すことです。

    トップダウンでの明確なメッセージ発信と、自らが模範となる行動を通じて、組織全体に「ハラスメントは許されない」という価値観を浸透させることができます。

    また、一度の研修や制度導入で満足するのではなく、定期的な実態調査や効果測定を行い、継続的に取り組みを改善していくことが大切です。

    組織文化の変革には時間がかかりますが、粘り強く取り組むことで、誰もが安心して能力を発揮できる健全な職場環境を実現することができるでしょう。

    ハラスメントのない組織文化を目指して

    ハラスメント行為には、権力の不均衡、ストレスの発散、固定観念など様々な心理的要因が関わっています。

    また、「空気を読む」文化、コミュニケーション不全、成果至上主義などの組織文化がハラスメントを助長することもあります。

    ハラスメント対策は単なるコンプライアンスの問題ではなく、組織の生産性や創造性、従業員のウェルビーイングに直結する重要な経営課題です。

    心理的安全性の高い組織文化の構築、実効性のある研修、適切な相談体制の整備、そして経営層の本気度が、ハラスメント防止の鍵となります。

    BasisPoint Academyのハラスメント研修では、ハラスメントの心理的メカニズムを理解し、組織文化を変革するための実践的なプログラムを提供しています。
    単なる知識の伝達にとどまらず、参加者が自分自身の言動を振り返り、新たな視点やスキルを身につけられるよう設計されています。
    ハラスメントのない、誰もが生き生きと働ける職場づくりのお手伝いをさせていただきます。

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    この記事を書いたのは

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