ハラスメント加害者にならないための自己チェックリスト5選

職場におけるハラスメントは、被害者の心身に深刻な影響を与えるだけでなく、企業文化や生産性にも悪影響を及ぼします。
しかし、意外にも多くのハラスメント行為は、加害者本人が「ハラスメントをしている」という自覚がないまま行われているケースが少なくありません。
今回は、知らず知らずのうちにハラスメントの加害者になってしまうことを防ぐための自己チェックリストをご紹介します。
日頃の言動を振り返る機会として、ぜひご活用ください。
言葉遣いと表現方法を見直す

私たちが日常的に使う言葉や表現の中には、相手を傷つけたり、不快な思いをさせたりするものがあるかもしれません。
特に冗談のつもりで発した言葉が、相手にとっては深刻なハラスメントとなることがあります。
日頃から「この発言は必要か」「別の言い方はないか」と自問することが大切です。
たとえば、個人の外見や年齢、性別、国籍などに関する発言は、本人が気にしている可能性があります。
また、声の大きさや話し方についても、威圧的に感じられないか意識してみましょう。
自分の言葉が相手にどう受け取られるかを想像することで、多くのハラスメントは未然に防ぐことができます。
何気ない一言が相手の心に深い傷を残すこともあるという事実を忘れないようにしましょう。
日常会話での自己チェック
- □ 相手の外見(体型、服装、髪型など)に関するコメントをしていないか
- □ 年齢や世代に関する決めつけや先入観を含む発言をしていないか
- □ 性別や性的指向に関する固定観念に基づく発言をしていないか
- □ 出身地や国籍に関する偏見を含むジョークを言っていないか
- □ 声のトーンや大きさが威圧的になっていないか
- □ メールやチャットでの文章が短すぎたり命令口調になっていないか
- □ 「俺なら」「私だったら」と自分の基準を押し付けていないか
- □ 冗談のつもりでも、相手が笑っていない場合は控えているか
- □ 「気にしすぎ」「そんなつもりじゃない」と相手の感情を否定していないか
- □ 飲み会や非公式な場でも言葉遣いに気をつけているか
業務上の指示・フィードバック時のチェック
- □ 具体的で建設的な指摘をしているか(「ダメだ」ではなく「ここをこう改善すると良い」)
- □ 人格否定(「君には無理」「向いていない」など)をしていないか
- □ 他者と比較する言い方(「Aさんはできているのに」など)を避けているか
- □ 公の場で恥をかかせるような指摘をしていないか
- □ 指示する際に「お願いします」「~していただけますか」などの丁寧な表現を使っているか
権力関係を自覚する

職場には、上司と部下、先輩と後輩、正社員と非正規社員など、さまざまな権力関係が存在します。立場が上の人は、自分の言動が持つ影響力の大きさを自覚することが重要です。
「ちょっとした指示」や「軽い注意」のつもりでも、受け取る側にとっては大きなプレッシャーになりかねません。
特に、業務時間外の飲み会への参加や私的な頼み事など、断りにくい状況を作っていないか振り返ってみましょう。
また、部下や後輩の成長を促すためのアドバイスと、過度な叱責や否定の線引きを明確にしておくことも大切です。
建設的なフィードバックを心がけ、相手の人格を否定するような言動は避けるべきでしょう。
権力の自覚チェック
- □ 自分の立場(役職、経験年数、雇用形態など)による権力を意識しているか
- □ 「断りにくい立場」を利用して頼み事をしていないか
- □ 業務時間外の飲み会や親睦会への参加を事実上強制していないか
- □ 仕事の割り当てに偏りがないか(特定の人に嫌な仕事が集中していないか)
- □ 部下や後輩の意見に耳を傾け、発言の機会を平等に与えているか
- □ 評価や昇進に関する基準を明確に説明しているか
- □ 個人的な感情で部下や同僚を冷遇していないか
指導とハラスメントの境界線チェック
- □ 指導の目的は「相手の成長」か「感情的なはけ口」か
- □ ミスに対して過剰に叱責していないか
- □ 「指導」の名の下に長時間の説教をしていないか
- □ 体調不良や私的事情を考慮せず、無理な業務を強いていないか
- □ 「昔はもっと厳しかった」という古い価値観で指導していないか
- □ 指導後にフォローアップやサポートを行っているか
個人の境界線を尊重する

人それぞれ、個人的な距離感や価値観は異なります。ある人にとって心地よい距離感が、別の人にとっては不快に感じることもあるのです。
たとえば、肩に手を置く、ハグをするなどの身体的接触は、親しみを表現するつもりでも、相手によっては不快に感じる場合があります。
また、プライベートな質問(結婚予定、恋愛事情、家族構成など)も、相手が話したくないと思っている可能性があります。
常に相手のリアクションに注意を払い、不快そうな様子が見られたら、すぐに行動を改めることが大切です。
また、明確な同意がない限り、相手のパーソナルスペースに踏み込まないよう心がけましょう。
物理的距離感のチェック
- □ 相手との適切な距離を保っているか
- □ 肩を叩く、背中を触るなどの身体的接触を相手の同意なく行っていないか
- □ デスクや個人的な持ち物に無断で触れていないか
- □ 相手の表情や反応から不快感を示していないか確認しているか
- □ 特定の人に対してだけ近い距離で話していないか
プライバシー尊重チェック
- □ 結婚・恋愛・出産予定など私的な質問を不用意にしていないか
- □ 家族構成や住んでいる場所など個人情報を詮索していないか
- □ 相手が答えたくなさそうな質問を繰り返していないか
- □ SNSやプライベートな写真を職場で共有するよう強制していないか
- □ 相手の許可なく個人情報を他者と共有していないか
- □ 休日の過ごし方や休暇の理由を必要以上に質問していないか
- □ 病歴や健康状態について不必要に尋ねていないか
多様性への理解を深める

私たちは皆、異なる背景や経験を持っています。自分とは異なる価値観や文化的背景を持つ人の視点を理解しようとする姿勢が、ハラスメント防止には欠かせません。
「自分は差別的でない」と思っていても、無意識のバイアスが言動に表れることがあります。
たとえば、「女性だから」「若いから」「〇〇国の人だから」といった先入観に基づく発言や態度は、相手を傷つけることがあります。
多様性に関する研修や書籍などを通じて学び続けることで、自分の無意識の偏見に気づき、より包括的な職場づくりに貢献できるでしょう。
異なる立場や経験を持つ人の話に耳を傾け、学ぶ姿勢を持ち続けることが重要です。
無意識バイアスチェック
- □ 「女性だから家庭を優先すべき」などの性別による固定観念を持っていないか
- □ 「若いから体力がある」「年配だからデジタルに弱い」などの年齢による決めつけをしていないか
- □ 特定の国や地域の出身者に対する先入観を持っていないか
- □ 宗教や信条に関する冗談や軽率な発言をしていないか
- □ 障害や病気に対する無理解や偏見を示していないか
- □ 特定の学歴や経歴を過大評価したり差別したりしていないか
包括的な職場づくりチェック
- □ 多様な背景を持つ人が発言しやすい雰囲気を作っているか
- □ 自分と異なる意見や価値観に対して耳を傾けているか
- □ 「当たり前」と思っている常識が特定の文化や背景に偏っていないか確認しているか
- □ 多様性に関する研修や学習の機会を積極的に活用しているか
- □ 無意識に特定のグループを排除するような言動をしていないか
- □ チームの中で孤立している人がいないか気にかけているか
フィードバックを素直に受け止める

自分の言動について指摘を受けたとき、すぐに反論したり、言い訳したりしていませんか?
ハラスメントを防ぐ最も重要なポイントは、自分の行動が相手にどう受け止められているかを素直に聞く姿勢です。
「そんなつもりはなかった」という言葉は、相手の感情を否定することになります。
意図せずとも結果として相手を傷つけてしまった場合は、まず謝罪し、今後同じことがないよう改善する意思を示すことが大切です。
また、定期的に同僚や部下に自分の言動について率直な意見を求めることも有効です。
信頼関係があれば、気づかないうちに行っているハラスメント行為について教えてもらえるかもしれません。
フィードバック受容チェック
- □ 自分の言動について指摘を受けたとき、まず謝罪と傾聴を心がけているか
- □ 「そんなつもりはなかった」と言い訳せずに相手の感じ方を尊重しているか
- □ 指摘された問題について具体的な改善策を考えているか
- □ 同じミスを繰り返さないよう意識的に行動を変えているか
- □ 定期的に周囲に自分の言動について意見を求めているか
- □ ハラスメントに関する相談窓口や報告制度を把握しているか
組織文化への貢献チェック
- □ 周囲の問題のある言動に対して適切に注意できているか
- □ ハラスメントを見かけたとき、傍観者にならず声を上げているか
- □ チーム内で相互尊重の文化を育むために行動しているか
- □ 新しいメンバーに対して包括的で歓迎する雰囲気を作っているか
- □ 自身のハラスメント防止に関する知識を定期的に更新しているか
さいごに

ハラスメント防止は、特別な対策というよりも、日常的な意識と行動の積み重ねです。
自分の言動を振り返り、相手の立場に立って考える習慣をつけることで、誰もが安心して働ける職場環境づくりに貢献できます。
今回ご紹介した5つのチェックポイントを定期的に見直し、健全なコミュニケーションを心がけましょう。
また、組織としても定期的なハラスメント研修を実施することで、全員の意識向上につながります。
BasisPoint Academyでは、実践的なワークショップを通じて、ハラスメントのない職場づくりをサポートしています。お気軽にご相談ください。
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