AIDMAとは?消費者購買心理モデルの全貌と最新マーケティングへの応用

消費者がどのように商品を認知し、購入に至るのかを理解することは、効果的なマーケティング戦略を構築する上で不可欠です。
そこで重要となるのが「AIDMA(アイドマ)」という消費者行動モデルです。
この記事では、AIDMAの基本概念から最新の活用法、他の消費者行動モデルとの違いまで、マーケターやビジネスパーソン必見の情報を体系的に解説します。
AIDMA:基本概念と成り立ち

AIDMA(アイドマ)は、消費者が商品やサービスを購入するまでの心理的プロセスを5つの段階に分けて説明するフレームワークです。
この理論は1920年代にアメリカの経済学者サミュエル・ローランド・ホールによって提唱されました。当初は1898年にセント・エルモ・ルイスが提唱した「AIDA」モデルの派生形として考案されましたが、特に日本ではAIDMAが主流となりました。
AIDMAは「Attention(注意)」「Interest(関心)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」の頭文字を取ったものです。
消費者の購買意思決定プロセスをこれら5つの段階で捉えることで、各段階に適したマーケティング施策を展開し、最終的な購買行動へと効果的に導くことができます。
マーケティング戦略を立案する上で、消費者がどの段階にいるかを見極め、適切なアプローチを行うことがAIDMAの本質と言えるでしょう。
AIDMAの5つのステップを徹底解説
AIDMAの各ステップについて、消費者心理とそれに対応するマーケティング施策を詳しく見ていきましょう。
1. Attention(注意)
消費者心理
商品やサービスの存在を初めて認識する段階
マーケティング施策
- テレビCMや屋外広告などで視覚的に目を引く広告
- 検索エンジンの上位表示を狙ったSEO対策
- 消費者へのダイレクトメール
- 印象的なキャッチコピーやビジュアルを活用した広告
この段階では、まず消費者に商品の存在を知ってもらうことが目的です。
認知度を高めるために、多くの人の目に触れる媒体を選び、印象的なメッセージを発信することが重要です。
2. Interest(関心)
消費者心理
商品に興味を持ち始める段階
マーケティング施策
- 製品の特徴や利点を詳しく伝えるコンテンツ
- 消費者の課題解決につながる情報提供
- 役立つハウツー動画やブログ記事
- メールマガジンやチラシによる情報発信
商品やサービスについて知った消費者に、さらに関心を持ってもらうための情報を提供します。
この段階では、製品そのものよりも、消費者にとって有益な情報を優先的に提供することで関心を高めていきます。
3. Desire(欲求)
消費者心理
商品を欲しいと思い始める段階
マーケティング施策
- 試供品やデモンストレーションの提供
- 無料トライアル体験の促進
- 競合製品との詳細な比較情報
- 製品の効果や品質を強調した詳細情報
消費者が「これは自分に必要だ」「購入すると良いことがある」と実感できるよう、商品の価値や効果を具体的に伝えます。
実際に商品を体験できる機会を提供することで、購買意欲を高めることができます。
4. Memory(記憶)
消費者心理
購入を検討し、商品を記憶にとどめる段階
マーケティング施策
- リターゲティング広告によるリマインド
- フォローアップのメールやDM
- 反復的な広告露出
- 印象的なブランドメッセージの発信
消費者が「欲しい」と思った後、実際に購入するまでの間に商品を忘れないようにするための施策です。
継続的なコミュニケーションを通じて、ブランドや製品を記憶に残すことを目指します。
5. Action(行動)
消費者心理
実際に購入を決断し行動する段階
マーケティング施策
- 購入手続きの簡素化
- 複数の購入チャネル(店舗・オンライン)の提供
- 期間限定セールやクーポンの配布
- シンプルで分かりやすい注文フォームの設計
最後のステップでは、消費者の購買意欲を実際の購入行動へと変換します。
購入の障壁を下げ、手続きをスムーズにすることで、最終的な購入決定を促進します。
AIDMAとAISASの違いを理解する

インターネットが普及した現代社会では、従来のAIDMAモデルに代わり、「AISAS(アイサス)」という新しい消費者行動モデルが注目されています。
AISASは2005年に電通が提唱し、商標登録したモデルで、インターネット時代の消費者行動により適合していると言われています。
AISASの構成要素
- Attention(注意): 商品・サービスに気付く
- Interest(興味): 興味・関心を持つ
- Search(検索): インターネットで情報を検索する
- Action(行動): 商品を購入する
- Share(共有): 体験を他者と共有する
主な違い
「Memory(記憶)」から「Search(検索)」へ
AIDMAでは商品を記憶することが重視されていましたが、AISASではインターネットで自ら情報を検索するプロセスが強調されています。
スマートフォンの普及により、消費者はいつでも情報にアクセスできるようになり、記憶に頼る必要性が低下しました。
AISASでは購入後の体験共有が重要視されています。
SNSの普及により、消費者は購入体験や商品評価を気軽に共有できるようになりました。この共有行動が他の消費者の「Attention」を引き起こし、循環的なマーケティング効果が生まれています。
Dual AISAS(デュアル・アイサス)の登場

さらに進化したモデルとして「Dual AISAS」があります。
これは「買いたいのAISAS」と「広めたいのA+ISAS」に分離したモデルです。
買いたいのAISAS
- Attention(注意)
- Interest(関心)
- Search(検索)
- Action(行動)
- Share(共有)
広めたいのA+ISAS
- Activate(活性化)
- Interest(関心)
- Share(共有)
- Accept(共鳴)
- Spread(拡散)
このモデルは、商品購入に至らなくても情報を拡散する消費者の行動を説明しています。
コンテンツ自体に価値を見出し、共有したいという消費者心理に着目した点が特徴です。
AIDMAを活用したマーケティング戦略

AIDMAを効果的に活用するには、各ステップに合わせた戦略的なアプローチが必要です。各段階での具体的な実践方法を見ていきましょう。
1. 段階別アプローチの設計
Attentionステージでの戦略
広告媒体の選定が重要です。テレビCMはリーチが広く効果的ですが、コストがかかります。一方、デジタル広告は比較的低コストで、ターゲティングの精度も高いというメリットがあります。目標とする認知度に応じて、適切な広告媒体を選びましょう。
Interestステージでの戦略
消費者が能動的に情報を探し始める段階なので、SEO対策やコンテンツマーケティングが効果的です。「役立つ情報」を提供し、商品への関心を高めていきます。業界のトレンドや活用法など、消費者にとって価値ある情報を優先的に提供しましょう。
Desireステージでの戦略
製品の具体的なメリットや、他社製品との違いを明確に示すことが重要です。口コミや専門家のレビューなど、第三者の評価を活用して信頼性を高めることも効果的です。
Memoryステージでの戦略
定期的なフォローアップコミュニケーションを行い、継続的に製品を思い出してもらう工夫が必要です。メールマガジンやリターゲティング広告を活用し、検討中の消費者に適切なタイミングで情報を届けましょう。
Actionステージでの戦略
購入のハードルを下げるための取り組みが重要です。複数の支払い方法の提供や、わかりやすい購入フローの設計により、最終的な購買決定を促します。また、初回限定の特典やセールなどの時間的制約を設けることで、購入の後押しをすることも有効です。
2. 効果測定と改善サイクル
AIDMAの各段階で適切なKPI(重要業績評価指標)を設定し、定期的に効果測定を行うことが重要です。
Attentionの測定
広告表示回数、リーチ数、認知度調査
Interestの測定
Webサイト訪問数、ページ滞在時間、資料請求数
Desireの測定
試用申込数、商品詳細ページのコンバージョン率
Memoryの測定
リターゲティング広告のクリック率、メールマガジンの開封率
Actionの測定
購入完了率、カート放棄率、顧客獲得コスト
これらの指標を分析し、どの段階で離脱が多いのかを特定することで、効果的な改善策を講じることができます。
AIDMAの効果を最大化する3つのポイント

1. KPIを明確に設定する
AIDMAの各ステップに対応するKPI(重要業績評価指標)を設定することで、マーケティング活動の効果を可視化し、改善点を明確にすることができます。
例えば
- Attention: 広告の到達人数、ブランド認知度
- Interest: サイト訪問数、問い合わせ数
- Desire: 資料請求数、商品詳細ページの閲覧時間
- Memory: リピート訪問率、メールマガジン開封率
- Action: 購入率、コンバージョン率
KPIを測定・分析することで、「どの段階で顧客が離脱しているのか」「どの施策が効果的だったのか」を客観的に評価できます。
2. ペルソナに適したコンテンツを発信する
効果的なAIDMA戦略を展開するには、ターゲットとなる顧客像(ペルソナ)を明確に設定し、各段階に適したコンテンツを提供することが重要です。
ペルソナの特性(年齢、性別、職業、興味関心など)を詳細に分析し、「この顧客はどのような情報を求めているのか」「どのような悩みを持っているのか」を理解した上で、各ステージに最適なコンテンツを設計しましょう。
例えば、20代の社会人女性をターゲットにした化粧品の場合
- Attention: インスタグラムでのビジュアル広告
- Interest: 肌トラブルに関する解決法を提案するブログ記事
- Desire: 実際のユーザーのビフォーアフター写真
- Memory: 季節の変わり目に合わせたスキンケアのリマインドメール
- Action: 初回限定のトライアルセット
3. 自動化して業務を効率化する
マーケティングオートメーションツールを活用することで、AIDMAの各段階における施策を効率的に実行できます。
- リードナーチャリングのための自動メール配信
- ユーザーの行動に基づいたパーソナライズされたコンテンツ配信
- A/Bテストによる最適な訴求方法の発見
- 顧客データの自動分析によるインサイト抽出
自動化により、マーケティング担当者はより戦略的な業務に集中でき、消費者にとっても適切なタイミングで最適な情報を受け取ることができるというメリットがあります。
AIDMA以外の消費者行動モデル7選

消費者行動を理解するためのフレームワークは、時代やメディア環境の変化に応じて進化してきました。ここでは、AIDMA以外の主要な消費者行動モデルを紹介します。
マスメディア時代の購買モデル
1. AIDA(アイダ)
- Attention(注意)
- Interest(関心)
- Desire(欲求)
- Action(行動)
AIDMAの原型とされるモデルで、「Memory(記憶)」のステップがない点が特徴です。即決性の高い低価格商品の購買プロセスに適しています。
2. AIDCA(アイドカ)
- Attention(注意)
- Interest(関心)
- Desire(欲求)
- Conviction(確信)
- Action(行動)
AIDMAの「Memory(記憶)」が「Conviction(確信)」に置き換わったモデルです。主にダイレクトマーケティングで活用され、購入への「確信」を高めるアプローチを重視しています。
3. AIDCAS(アイドカス)
- Attention(注意)
- Interest(関心)
- Desire(欲求)
- Conviction(確信)
- Action(行動)
- Satisfaction(満足)
AIDCAに「Satisfaction(満足)」のステップを加えたモデルです。購入後の満足度を高め、リピート購入につなげることを目的としています。
4. AMTUL(アムツール)
- Aware(認知)
- Memory(記憶)
- Trial(試用)
- Usage(本格的な利用)
- Loyalty(愛用・固定客)
長期的な顧客関係構築を重視したモデルで、商品の試用体験がファン化につながるという考え方が特徴です。継続利用を目指すサブスクリプションモデルなどに適しています。
5. ARCAS(アルカス)
- Attention(注意)
- Remind(思い起こし)
- Compare(比較)
- Action(購買)
- Satisfy(満足)
店頭販売に特化したモデルで、来店から購入、そして再来店までのプロセスを説明しています。小売業のマーケティングに適しています。
インターネット時代の購買モデル
6. AISCEAS(アイシーズ/アイセアス)
- Attention(注意)
- Interest(興味)
- Search(検索)
- Comparison(比較)
- Examination(検討)
- Action(行動)
- Share(共有)
AISASをさらに詳細化したモデルで、インターネット上での比較・検討プロセスを重視しています。慎重な購買判断を行う高額商品などに適しています。
7. SIPS(シップス)
- Sympathize(共感)
- Identify(確認)
- Participate(参加)
- Share/Spread(共有・拡散)
SNS時代に対応した新しい概念のモデルで、企業からの一方的な情報発信ではなく、ユーザー同士の「共感」から始まる情報伝達を重視しています。
変化する消費者行動とAIDMAの今後

AIDMAは1920年代に提唱された古典的な消費者行動モデルですが、その基本的な考え方は現代のマーケティングにおいても有効です。
一方で、デジタル化やSNSの普及により、消費者の情報収集や購買行動は大きく変化しています。
今後のマーケティング戦略を考える際には、AIDMAの基本を理解した上で、AISASやDual AISASなど、現代の消費者行動により適した新しいモデルも柔軟に取り入れていくことが重要です。
特に「Search(検索)」や「Share(共有)」といった、インターネット時代特有のプロセスを組み込んだアプローチが求められています。
ただし、どのようなモデルを採用するにせよ、最も重要なのは自社の商品特性やターゲット顧客の特性を理解し、それに合ったマーケティング戦略を構築することです。
消費者心理の基本を押さえ、時代の変化に合わせて柔軟に戦略を進化させていくことが、成功へのカギとなるでしょう。
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