DESC法とは?4つのステップでコミュニケーションを改善する効果的な手法

DESC法とは?4つのステップでコミュニケーションを改善する効果的な手法

ビジネスシーンにおいて、相手を納得させながら自分の意見を効果的に伝えることは非常に重要です。

そのための優れた手法として、DESC法が注目されています。

この記事では、DESC法の基本的な概念から実践方法、メリットとデメリット、活用例まで詳しく解説します。

DESC法の基本概念

DESC法(デスク法)とは、相手を不快にすることなく自分の言いたいことを伝え、納得感を持たせるコミュニケーション技法です。

アメリカの心理学者ゴードン・バウアーらによって提唱されました。この手法は、英語の以下の4つの単語の頭文字を取って名付けられています。

  • Describe(描写する)
  • Express/Explain(説明する)
  • Suggest/Specify(提案する)
  • Choose/Consequences(選択する)

DESC法は、アサーティブコミュニケーションの一種として、自分の意見を主張しながらも相手の意見や感情を尊重する対話方法です。

単なる説得技術ではなく、相互理解と協力を促進するためのフレームワークとして機能します。

コミュニケーションスタイルの種類と特徴

DESC法を理解するためには、まず異なるコミュニケーションスタイルについて知っておくことが重要です。主なコミュニケーションスタイルには以下の3つがあります。

1. アグレッシブ型

自己主張が強く、他者の意見や感情を軽視してしまうタイプです。

自分の意見を通すことを優先するため、時に他者との関係性を損なう危険性があります。意見は通りやすいものの、長期的な信頼関係の構築が難しくなります。

2. ノンアグレッシブ型(受動型)

自己主張が弱く、他者の意見や要求に従いがちなタイプです。

衝突を避けられる反面、自分の意見や感情を表現できないためストレスが蓄積しやすくなります。相手に配慮しすぎるあまり、自分の本当の気持ちを抑え込んでしまいます。

3. アサーティブ型

自己主張をしながらも他者の意見や感情を尊重するバランスの取れたタイプです。

自分と相手の両方を大切にする姿勢で、建設的な対話を実現します。DESC法はこのアサーティブ型のコミュニケーションに該当します。

DESC法の4つのステップ

DESC法は4つのステップに分けて会話を展開していくことで、納得性の高い結果へと導きます。それぞれのステップについて詳しく見ていきましょう。

1. Describe(描写する)

最初のステップでは、解決しようとしている課題に対して、現状の状態や相手の行動を客観的に描写します。

ここで重要なのは、事実のみを伝えることです。自分の感情や主観的な解釈、推測を混ぜないようにします。

ポイント

  • 客観的な事実だけを述べる
  • 具体的な状況や行動を描写する
  • 「あなたは〜だと思う」といった推測を避ける
  • 「いつも」「絶対」などの極端な表現を使わない

例えば、「あなたはいつも期限を守らない」ではなく、「先月のプロジェクトでは、3回の提出期限がありましたが、すべて1日〜3日遅れて提出されました」というように事実を伝えます。

2. Express/Explain(説明する)

2つ目のステップでは、Describeで述べた事実に対する自分の考えや感じていることを伝えます。

ここでは、自分の気持ちや意見を素直に表現することが大切です。このステップは、Express(表現する)やExplain(説明する)、Empathize(共感する)などと表現されることもあります。

ポイント

  • 「私は〜と感じる」という主観的な表現を使う
  • 感情を押し付けすぎない
  • 相手を責めるのではなく、自分の立場から伝える
  • 相手の立場にも理解を示す

例えば、「提出が遅れたことで、後工程のスケジュールに影響が出て、私はチーム全体の調整に苦労しました。

納期に間に合わないのではないかと不安になりました」というように自分の気持ちを伝えます。

3. Suggest/Specify(提案する)

3つ目のステップでは、課題を解決するためのアイデアや代替案を提案します。

相手に承諾してほしいこと、対応してもらいたいことを具体的に伝えます。ここでは、命令や強制ではなく、あくまで提案として伝えることがポイントです。

ポイント

  • 具体的で実行可能な提案をする
  • 相手の立場や状況を考慮する
  • 「〜してください」という依頼形で伝える
  • 命令口調を避ける

例えば、「今後は、提出が遅れそうな場合、事前に一報をいただけると助かります。

また、大幅な遅れが予想される場合は、一緒に対策を考えることもできますので、早めにお知らせいただけませんか?」というように提案します。

4. Choose/Consequences(選択する)

最後のステップでは、相手がこちらの提案を受け入れた場合と受け入れなかった場合、それぞれに対して結果や選択肢を示します。

ここでは、提案が全て受け入れられるとは限らないことを意識し、代替案を用意しておくことも重要です。

ポイント

  • 提案を受け入れた場合のメリットを示す
  • 受け入れなかった場合の影響について言及する
  • 相手に選択権があることを尊重する
  • 脅しではなく、論理的な結果として伝える

例えば、「期限を守っていただけると、チーム全体の作業が円滑に進み、プロジェクトの成功につながります。

もし難しい場合は、作業の分担や期限の調整を検討する必要があるかもしれません」というように伝えます。

DESC法のメリット

DESC法を活用することで、以下のようなメリットが期待できます。

コミュニケーション力の向上

DESC法を用いることで、自分の考えを整理して伝える力が養われます。

また、相手の立場も考慮しながら対話するため、より深い相互理解が生まれ、組織全体のコミュニケーション力が向上します。

円滑な情報共有が可能になることで、業務効率の改善や新たなアイデアの創出にもつながるでしょう。

信頼関係の構築

自分の考えを正しく相手に伝えつつも、相手の意見や感情を尊重するDESC法は、長期的な信頼関係の構築に貢献します。

一方的な主張や感情的な対立を避け、建設的な対話を重ねることで、相互理解と信頼が深まります。この信頼関係は、将来的な協力体制の基盤となります。

提案力の強化

DESC法に基づいて自分の意見や提案を整理することで、より論理的で説得力のある提案ができるようになります。

事実を基に自分の考えを説明し、具体的な提案と選択肢を示すという流れは、顧客へのプレゼンテーションや社内提案にも応用できます。

生産性の向上

組織内でDESC法が活用されることで、意思疎通がスムーズになり、誤解や対立が減少します。

その結果、業務の進行がスムーズになり、生産性が向上します。

また、互いの意見を尊重する文化が醸成されることで、チームの協働意識が高まり、より質の高い成果物が生み出されるようになります。

企業成長の促進

良好なコミュニケーションと信頼関係に基づく組織は、顧客満足度の向上や品質の改善、新たなサービス創出の土壌となります。

DESC法の活用は、組織の健全な成長を支える基盤となり、長期的な企業成長に寄与します。

DESC法のデメリットと注意点

DESC法には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットや注意点も存在します。

自分の意見を強く押し通せない

DESC法はあくまでも相互理解と協力を重視するため、自分の意見を強く押し通すことには向いていません。

明らかに自分が正しく相手が間違っている場合や、緊急を要する状況では、必ずしも最適なアプローチとは言えない場合があります。

準備に時間がかかる

効果的なDESC法の実践には、事前の準備が必要です。

とくに「Choose」のステップでは、相手が提案を受け入れなかった場合の代替案を用意しておく必要があります。

このような準備には時間と労力がかかり、すべての状況で実践するのは現実的ではないかもしれません。

常に納得が得られるとは限らない

DESC法を用いたからといって、必ずしも相手の納得や同意が得られるわけではありません。

相手の性格や状況、議題の性質によっては、十分な効果が得られないこともあります。手法に過度に依存せず、状況に応じた柔軟な対応が求められます。

DESC法を用いる際の注意点

DESC法を効果的に活用するためには、以下の点に注意することが重要です。

結論から考える

DESC法の組み立てには、最終的な結論(Choose)から逆算して考えるアプローチが効果的です。

相手に何を伝え、どのような合意を得たいのかを明確にした上で、それに向けた事実の描写や感情の表現、提案を構成していくと、より一貫性のある説得力の高い対話が可能になります。

感情的になりすぎない

DESC法では、自分の感情を伝えることも重要ですが、感情的になりすぎると本来の目的からずれてしまいます。

特にExpress/Explainのステップでは、感情を表現しつつも冷静さを保ち、相手を非難するのではなく自分の立場から伝えることを意識しましょう。

相手は思い通りにはならないことを理解する

DESC法は相手の納得を促すための手法ですが、必ずしも思い通りの結果が得られるわけではありません。

相手には選択する権利があり、提案を受け入れないこともあります。そのような状況も想定した上で、柔軟に対応する姿勢が大切です。

類似している手法との違い

DESC法と似た手法として、PREP法とSDS法があります。

それぞれの特徴を理解し、状況に応じて使い分けることで、より効果的なコミュニケーションが可能になります。

PREP法

PREP法は「Point(結論)」「Reason(理由)」「Example(実例・具体例)」「Point(結論)」の順で話を構成する手法です。最初に結論を述べ、その理由と具体例を説明した後、再び結論を強調するというシンプルな構造が特徴です。

PREP法は、プレゼンテーションや報告など、要点を明確に伝えたい場面で効果的です。聞き手は最初に結論を知ることができるため、話の全体像を把握しやすくなります。

▶ PREP法とは?具体例で学ぶ効果的なビジネスコミュニケーション術【完全ガイド】

SDS法

SDS法は「Summary(要点)」「Details(詳細)」「Summary(要点)」の順で話を組み立てる手法です。最初に全体の概要を伝え、次に具体的な説明を行い、最後に再び要点をまとめるという流れになります。

SDS法はニュース番組などでよく使われる方法で、聞き手が情報を整理しやすいという特徴があります。情報量が多い場合や、複雑な内容を伝える際に適しています。

▶ SDS法とは?効果的なコミュニケーション手法を徹底解説

DESC法の活用例

DESC法は様々なビジネスシーンで活用できます。具体的な例を通して、その実践方法を見ていきましょう。

例1:クライアントとの価格交渉

Describe(描写する)

「ご提案いただいた予算では、当社の品質基準を満たすサービスの提供が難しい状況です。現在の市場価格と当社の原価を考慮すると、最低でも○○円のコストがかかります。」

Express(説明する)

「御社とは長期的な関係を構築したいと考えており、高品質なサービスを継続的に提供したいと思っています。予算内で品質を下げることは、御社の期待にも当社の基準にも合わないと感じています。」

Suggest(提案する)

「そこで、サービス内容を一部調整することで、品質を保ちながらコストを抑える方法はいかがでしょうか。具体的には、○○の部分を簡略化し、△△の部分に重点を置くという方法です。」

Choose(選択する)

「このプランであれば、御社の予算内で最大の効果を得られると考えています。もし難しい場合は、別の角度からの提案も可能ですので、ご検討いただけますでしょうか。」

例2:チームメンバーへのフィードバック

Describe(描写する)

「先週提出された報告書には、3箇所のデータ誤りと5箇所の計算ミスがありました。また、提出が締切を2日過ぎていました。」

Express(説明する)

「このような状況が続くと、プロジェクト全体の信頼性に影響が出る可能性があり、チーム全体の評価にも関わってくると心配しています。あなたの能力は高く、もっと正確な仕事ができると信じています。」

Suggest(提案する)

「今後は、提出前にダブルチェックの時間を設けていただけないでしょうか。また、締切に間に合わない場合は、事前に相談してもらえると助かります。」

Choose(選択する)

「こうすることで、チーム全体の業務が円滑に進み、あなた自身の評価も向上すると思います。もし時間管理や確認作業に課題を感じるなら、一緒に改善策を考えることもできます。」

例3:プレゼンテーションの構成

DESC法はプレゼンテーションの構成にも応用できます。特に問題解決型のプレゼンテーションでは、以下のような構成が効果的です。

Describe(描写する)

市場の現状や顧客の課題、競合状況などの客観的事実を示す。 

「現在の市場では○○という需要が高まっており、競合他社は△△という対策を講じています。」

Express(説明する)

その事実に対する自社の見解や課題認識を伝える。 

「このトレンドは今後も続くと予測され、対応が遅れると市場シェアの低下につながる可能性があります。」

Suggest(提案する)

解決策や新しい提案を具体的に示す。 

「そこで当社では、○○という新サービスの導入を提案します。この特徴は…」

Choose(選択する)

提案の採用によるメリットと、採用しなかった場合の影響を示す。 

「この提案を採用いただくことで、△△%の効率化と□□円のコスト削減が見込まれます。導入をご検討いただけますでしょうか。」

さいごに

DESC法は、相手を尊重しながら自分の意見を効果的に伝えるためのコミュニケーション技法です。

「Describe(描写する)」「Express/Explain(説明する)」「Suggest/Specify(提案する)」「Choose/Consequences(選択する)」の4つのステップを通じて、納得性の高い対話を実現します。この手法は、信頼関係の構築やコミュニケーション力の向上、提案力の強化など、様々なメリットをもたらします。

一方で、自分の意見を強く押し通すことには向かないという特性もあります。DESC法を効果的に活用するためには、手法に過度に依存せず、状況に応じて柔軟に適用することが重要です。

また、PREP法やSDS法など、類似した手法との違いを理解し、シーンに応じて使い分けることも大切です。ビジネスシーンでのコミュニケーションにおいて、DESC法は相互理解と協力を促進する強力なツールとなります。

これを習得し、日常的に活用することで、より良好な人間関係と高いパフォーマンスを実現していきましょう。

法人向けビジネス研修・IT研修・人材育成コンサルなら「BasisPoint Academy
企業のDX推進、DXリテラシーの向上なら「ユーミル
お仕事場所をお探しならコワーキングスペース「BasisPoint」へ!!新橋/五反田/池袋/神保町/西新宿/吉祥寺/八王子/名古屋/福岡に展開中!
フリーコンサル案件(戦略/PMO/SAP等)の紹介なら「コンサルポータル
営業・マーケティング・採用・エンジニアの副業紹介なら「副業ポータル

この記事を書いたのは

Cool Workers運営部
Cool Workers運営部ライター
フリーランスや副業などの“自由なはたらき方”、税金、働き方改革に関する情報を発信しています。Cool Workers運営部は、様々な働き方をしているメンバーで記事を作っています。