OJT研修とは?効果的な進め方から失敗しないコツまで徹底解説
新入社員の研修制度は、企業によってさまざまです。なかでも先輩社員から直接実務を学べるOJT研修は、新入社員を早期に即戦力化できる育成法として、多くの企業から注目を集めています。
しかし、DXの進展や働き方改革など、企業を取り巻く環境が大きく変化する中で、従来型のOJT研修だけでは十分な効果を得られないケースが増えています。
「ベテラン社員の業務が忙しく、指導時間が確保できない」
「教え方が属人化して、部署によって研修の質にばらつきがある」
「DXスキルの指導方法がわからず、育成が追いついていない」
このような課題を抱える企業は年々増加しており、特に中小企業では、限られたリソースの中で効果的な人材育成を行うことに苦心されているのが現状です。
本記事では、これからの時代に求められるOJT研修の進め方について、具体的な事例と実践的なノウハウを交えながら解説します。OJT研修による人材育成に課題を感じている方や、これから本格的にOJT研修を導入しようとお考えの方に、すぐに活用いただける内容となっています。
OJT研修とは
OJT(On the Job Training)とは、実際の業務を通じて必要な知識やスキルを習得する研修方法です。新入社員やキャリアチェンジした社員に対して、実務経験豊富な先輩社員が、実際の業務の中で指導を行いながら育成していく手法として広く採用されています。
Off-JTとの違い
OJTが実際の業務現場で行われるのに対し、Off-JT(Off the Job Training)は業務から離れた場所、つまり研修室であったり外部の研修施設などで行われます。
Off-JT
- 業務から離れた環境で実施
- 体系的な知識習得が可能
- 理論的な学習に適している
- 標準化された教育内容
- 集中的な学習が可能
- 大人数に対し均一な内容の教育が可能
OJT
- 実際の業務現場で実施
- 実践的なスキル習得が可能
- 即戦力の育成に効果的
- 現場特有のノウハウ習得
- リアルタイムでのフィードバック
- 研修生のレベルに合わせた柔軟な進行
一言でいうと、Off-JTは「体系的な内容を一度に大人数に」、OJTは「実践的なスキルを個人に合わせて」教えられることがポイントとなります。
なぜ今OJT研修が重要なのか
近年、企業を取り巻く環境が急速に変化する中で、OJT研修の重要性は従来以上に高まっています。特に以下の4つの観点から、その必要性が指摘されています。
DX時代の人材育成ニーズ
DXの波は、ビジネスの在り方を根本的に変化させ、この変化は人材育成にも大きな影響を与えています。
従来の座学中心の学習では、日々進化するデジタル技術やその活用方法を効果的に習得することが困難です。例えば、クラウドサービスの利用やデータ分析ツールの活用など、実際に触れて体験することで初めて理解できる要素が増えています。
また、実際の業務の現場では、ツールを使う際のルールやファイル管理方法などが定められているはずです。さまざまなサービスやツールの一般的な使い方、原則的なルールを把握した上で現場に即して使いこなす必要があるため、OJTによる両輪のサポートが重要になってきます。
デジタルスキルの二極化
近年、特徴的な課題として、新入社員のデジタルスキルの二極化が挙げられます。スマホネイティブ世代の入社により、この傾向はより顕著になっています。
たとえば、プログラミングやデータ分析のスキルを独学で身につけている層がいる一方で、PCでの基本的な操作に不慣れな層も増えています。スマートフォンが主なデジタル機器だった世代にとって、以下のようなビジネススキルが必ずしも身についていないケースが見られます。
- PCの電源の入れ方、ロック、シャットダウンの方法
- キーボードによるタイピングスキル
- 複数のウィンドウを使用した効率的な作業
- Excelでの基本的な表計算やデータ処理
- ビジネスメールの作成とPC上でのメール管理
- 社内文書の作成や資料のファイリング
このような状況下では、一律の研修プログラムでは効果的な育成が難しくなっています。
基礎的な内容に時間をかけすぎると、スキルの高い層が退屈を感じてしまい、逆に、進度が速すぎると、基礎からの習得が必要な層がついていけなくなり、どちらの場合も社員のモチベーション低下やその後の研修プログラムの進行に影響が出る可能性があります。
働き方改革による変化
リモートワークの普及により、従来型の対面でのOJTに加え、新しい形式での実践的トレーニングが求められています。業務効率化の要請が強まる中、より効果的な人材育成手法が必要とされており、限られた時間の中で最大限の教育効果を上げるための工夫が必要です。
世代間ギャップの課題
価値観の多様化により、画一的な研修では効果が限定的になっています。コミュニケーションスタイルの変化に対応した、柔軟な指導方法が求められているのです。新しい学習スタイルを取り入れた、ハイブリッド型の育成アプローチが重要になっています。
OJT研修のメリット・デメリット
メリット
実践的なスキル習得
実務に直結した形でのスキル習得が可能なため、学んだ内容をすぐに活用できます。特に、暗黙知の伝承や、マニュアル化が困難な判断力の育成に効果的です。
実際の業務課題に対して、上司や先輩からリアルタイムでフィードバックを得られることで、より深い理解と実践力を養うことができます。
即戦力としての育成
実際の業務環境で学ぶことで、理論と実践の統合が自然に行われ、即戦力となる人材を育成できます。また、業務上で発生する様々な問題に対する解決能力が養われ、現場感覚を早期に身につけることができます。
コミュニケーション能力の向上
日常的な業務の中で上司・先輩との密接なコミュニケーションが発生するため、ビジネスコミュニケーション能力の向上に直結します。また、チーム内での連携を通じて、組織における効果的な関係構築スキルを習得できます。
デメリット
指導品質のばらつき
指導者の能力や経験によって、教育の質に大きな差が生じる可能性があります。特に、指導経験の少ない上司・先輩の場合、体系的な指導が難しく、また評価基準も統一されにくいという課題があります。これは、組織全体の人材育成の質にも影響を及ぼす可能性があります。
指導者による品質差の具体例
- ベテラン社員A:体系的な指導計画を立て、段階的な育成を実施
- 中堅社員B:自身の経験のみに基づく断片的な指導
- 若手社員C:指導方法が分からず、単なる業務の振り分けに終始
体系的な指導が難しい理由
- 指導者自身が体系的な研修を受けていない
- 「暗黙知」を「形式知」に変換するスキルの不足
- 指導に充てられる時間の制約
- 指導ノウハウの蓄積・共有の仕組みがない
評価基準が統一されない問題
- 部署によって求められるスキルレベルの解釈が異なる
- 指導者の主観的な判断に依存しがち
- 定量的な評価指標の設定が困難
- 評価者訓練の不足
組織全体への影響
- 部署間での人材育成レベルの格差
- 異動や配置転換時のスキルミスマッチ
- 全社的な人材育成戦略の実行困難
- 中長期的な人材ポートフォリオの歪み
これらの要素が、「指導品質のばらつき」という問題の本質であり、多くの企業が直面している課題となっています。
リソース確保の課題
指導者となる社員の業務負担が増加し、本来の業務遂行に支障をきたす可能性があります。また、適切な研修時間の確保が難しく、人員配置の調整も必要となります。特に、小規模な組織や業務繁忙期には、この課題が顕著になります。
限定的な知識習得
特定の業務領域に限定された知識・スキルの習得になりやすく、より広範な視野や最新のトレンドの習得が困難になる可能性があります。また、基礎的な知識の体系的な習得には時間がかかり、業界標準的なスキルセットの獲得に時間を要する場合があります。
効果的なOJT研修の進め方
人材育成の要となるOJT研修。その効果を最大化するためには、「事前準備」「実施」「評価・改善」という3つのフェーズを意識した展開が重要です。それぞれのフェーズについて、実践的なアプローチをご紹介します。
1. 事前準備フェーズ
育成計画の策定は、効果的なOJT研修の礎となります。まず求められるのは、明確な目標設定です。具体的には以下の要素を検討する必要があります。
- 目標設定
- 短期的な習得スキルの明確化
- 中長期的なキャリアパスの設計
- 具体的な達成指標の設定
目標を定めたら、それを実現するための具体的なスケジューリングに移ります。研修期間の設定では、以下の点を明確にしましょう。
- 研修期間の設定
- フェーズごとのマイルストーン
- 習得スキルごとの目標期間
- 評価・フィードバックのタイミング
また、計画の実行に必要なリソースを確実に確保することも重要です。
- リソースの確保
- 指導担当者の選定と役割分担
- 必要な時間の確保
- 教材・ツールの準備
次に重要なのが指導者の育成と準備です。優れた実務能力を持つ社員であっても、必ずしも優れた指導者とは限りません。以下の点に注力して、指導者の育成を行いましょう。
- 指導スキルの向上
- コーチング・メンタリング手法の習得
- フィードバック技術の向上
- 効果的な質問力の開発
また、指導の質を均一化するため、以下の準備も必要です。
- 指導内容の標準化
- 指導マニュアルの整備
- チェックリストの作成
- 評価基準の明確化
2. 実施フェーズ
OJT研修の実施には、段階的なアプローチが効果的です。各段階で習得すべき内容と、期待される成果を明確にしながら進めていきます。
観察(See)
まず、「観察(See)」の段階では、研修生は指導者の業務遂行を注意深く観察します。この段階で重要なのは、単なる見学に終わらせないことです。業務の流れやポイントについて、その場で解説を加えることで、より深い理解を促します。
実践(Do)
次の「実践(Do)」段階では、基本的な作業から着手します。この際、指導者は適切なサポートと、こまめなフィードバックを心がけましょう。失敗を恐れずにチャレンジできる環境づくりも重要です。
応用(Practice)
「応用(Practice)」段階では、より複雑な業務に挑戦させます。この段階では、問題解決力の向上と、独自の工夫を促すことが重要です。
自立(Master)
最後の「自立(Master)」段階では、完全な戦力として独り立ちさせます。この段階では、他者への指導や業務改善の提案なども期待されます。
フィードバックは、OJT研修の効果を最大化する重要な要素です。以下の点を意識して実施しましょう。
- フィードバックの原則
- タイムリーな実施
- 具体的な事実に基づく
- 改善点と良い点のバランス
- フィードバックの方法
- 1on1ミーティングの定期開催
- 日報・週報を活用した進捗確認
- 360度評価の実施
3. 評価・改善フェーズ
定期的な進捗評価は、研修の効果測定と改善に不可欠です。以下の観点から評価を行いましょう。
- 評価の観点
- 設定目標の達成度
- スキル習得の度合い
- 業務遂行の質と速度
- 評価方法
- 客観的な指標による測定
- 自己評価とのギャップ分析
- 周囲からの評価収集
評価結果を基に、継続的な改善を図ることが重要です。以下の点について定期的に見直しを行いましょう。
- 研修プログラムの改善
- カリキュラムの見直し
- 指導方法の調整
- 目標設定の適正化
- 個別対応の検討
- 習得ペースに応じた調整
- 追加サポートの検討
- キャリアパスの再考
このように、計画的かつ段階的なアプローチを取ることで、効果的なOJT研修の実施が可能となります。ただし、これらは基本的なフレームワークであり、自社の状況や研修生の特性に応じて、柔軟にカスタマイズすることが成功の鍵となります。
OJT研修の課題と対策
昨今、多くの企業がOJT研修の実施において様々な課題を抱えています。特に深刻なのが、教育リソースの不足です。新入社員の人数に対して指導できる社員が不足していたり、ベテラン社員の業務が多忙で十分な指導時間が確保できないといった状況が、多くの企業で見られます。
このような状況下で注目されているのが、外部研修の戦略的な活用です。基礎的なビジネススキルの習得を外部研修に任せることで、社内の指導工数を削減し、限られたOJTの時間をより実践的なスキル伝達に集中させることが可能になります。
また、部署や指導者による教育内容のばらつきも大きな課題となっています。
外部研修を活用することで、標準化された質の高いカリキュラムによる基礎教育が可能となり、客観的な評価基準に基づく成長度の測定も実現できます。
さらに、他社の新入社員との交流が、研修生の成長を促進する効果も期待できます。
新しい時代のOJT研修の在り方
ハイブリッド型研修の導入
従来型のOJTだけでなく、外部研修を効果的に組み合わせることで、より効果的な人材育成が可能となります。
OJTの補完
- 体系的な基礎知識の習得
- 標準化された品質の確保
- 最新技術・トレンドへの対応
外部研修のメリット
- 1名からでも受講可能な柔軟性
- 他社事例からの学習機会
- 客観的な評価基準の導入
ケーススタディ:IT企業A社の事例
新人研修において、OJTと外部研修(BasisPoint Academy)を組み合わせることで、以下の成果を実現しました。
時間と人員の最適化
- 4月は集中的に基礎研修を実施
- 5月以降はOJTと外部研修を並行
- 指導者の負担を大幅に軽減
教育品質の向上
- ビジネス基礎からDXまで体系的に学習
- 他社新人との切磋琢磨による成長
- 客観的な評価指標の活用
コスト面での最適化
- 人材開発支援助成金の活用
- 研修効率の向上による早期戦力化
- 教育設備投資の削減
外部研修を活用したOJT研修の補完
こんな課題を抱える企業におすすめ
OJT研修を実施する中で、多くの企業が以下のような課題を抱えています。これらの課題に対して、外部研修の活用が効果的な解決策となる可能性があります。
教育リソースの不足に悩む企業
「新入社員の人数に対して、指導できる社員が足りない」「ベテラン社員の業務が忙しく、指導の時間が十分に取れない」といった状況は、多くの企業で見られる課題です。
このような場合、外部研修を活用することで、以下のような効果が期待できます。
- 基礎的なビジネススキルの習得を外部研修に任せることで、社内の指導工数を削減
- 限られたOJTの時間を、より実践的なスキル伝達に集中させることが可能
- 指導者の負担を軽減しながら、効果的な人材育成を実現
教育の品質にばらつきがある企業
「部署や指導者によって教育内容にばらつきがある」「体系的な指導ができていない」という課題を抱える企業では、外部研修の活用により、以下のような改善が見込めます。
- 標準化された質の高いカリキュラムによる基礎教育の実施
- 客観的な評価基準に基づく成長度の測定
- 他社の新入社員との交流による刺激と成長機会の創出
最新のスキル教育に課題を感じる企業
特に、DXやIT関連のスキル教育において「社内に十分な知見がない」「最新の技術トレンドに追いつけない」という課題を抱える企業では、外部研修の活用で次のような効果が期待できます。
- 最新のDX・IT知識を体系的に学習
- 実践的な演習を通じたスキルの定着
- 業界標準的な知識・スキルの習得
費用面での課題を解決するために
外部研修の活用を検討する際、費用面での懸念を抱く企業も多いのではないでしょうか。しかし、実は研修費用を大幅に抑える方法があります。
人材開発支援助成金の活用
人材開発支援助成金を利用することで、研修費用の最大75%が助成されます。この助成金は、従業員に対して職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための職業訓練等を実施した場合に受給できます。
ただし、助成金の申請手続きには専門的な知識が必要で、多くの企業が申請のハードルの高さを感じています。そのため、研修会社を選ぶ際は、助成金申請のサポート体制も重要なポイントとなります。
おすすめの外部研修活用法
上記のような課題を効果的に解決する選択肢として、BasisPoint Academy(BPA)の新人研修がおすすめです。BPAの特徴は以下の点にあります。
- 1名からでも受講可能な柔軟な研修体制
- ビジネス基礎からDX領域まで、幅広い分野をカバーする総合的なカリキュラム
- オンライン・集合研修のどちらにも対応
- 他社の新入社員との交流による成長機会の提供
- 助成金申請のサポート体制が充実
特に、人材開発支援助成金の申請については、助成金に精通した社会保険労務士を紹介するなど、手厚いサポートを提供しています。これにより、企業は研修の質を落とすことなく、コストを抑えた人材育成を実現できます。
これからのOJT研修に求められるもの
効果的なOJT研修実施のポイント
OJT研修は依然として人材育成の要となる手法ですが、現代の企業環境においては、その在り方を見直す必要があります。これまでの内容を踏まえ、効果的なOJT研修を実施するための重要なポイントを整理します。
1. 従来型OJTの限界を認識する
ビジネス環境が急速に変化する現代において、従来型のOJTだけでは十分な教育効果を得ることが難しくなっています。特に、以下の点について認識を新たにする必要があります。
- 指導者の負担増加は、単なる工夫や努力では解決が難しい構造的な課題となっている
- DXやIT技術の進展により、求められる知識・スキルの幅が従来より大きく広がっている
- 世代間ギャップの拡大により、従来の指導方法が必ずしも効果的でなくなっている
2. 新しい人材育成の方向性
これからの時代に求められるのは、OJTと外部研修を効果的に組み合わせたハイブリッド型の人材育成です。このアプローチには、以下のようなメリットがあります。
- 基礎教育は外部研修で効率的に実施し、実践的なスキルはOJTで習得するという役割分担が可能
- 最新の知識やスキルを体系的に学ぶ機会を確保できる
- 他社の同期社員との交流を通じて、視野を広げることができる
3. 研修投資を最適化する
人材育成は投資です。しかし、その投資を最適化するためには、以下の点を考慮する必要があります。
- 人材開発支援助成金などの制度を活用し、費用対効果を最大化する
- 研修内容と自社のニーズを適切にマッチングさせる
- 教育効果を測定・評価し、継続的に改善を図る
今後の展望
変化の激しい現代のビジネス環境において、人材育成の重要性はますます高まっています。特に、新入社員の育成については、より効率的かつ効果的なアプローチが求められています。
BasisPoint Academyでは、このような企業の課題に応えるため、充実した新人研修プログラムを提供しています。お見積もりやご相談だけでも、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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