副業するなら雇用契約と業務委託とどちらが良いのか? 少なくともその違いは知っておいた方が良い。

政府の後押しもあって、最近では副業解禁の企業が増え始めました。そこで、副業をするにあたり、雇用と業務委託とどちらが良いのか、メリット・デメリット両方を考察していきます。

政府の働き方改革には、テレワークという自由な働き方もあります。

育児や介護で仕事との両立が難しくなった有能な人材の雇用の確保のため、あるいは通勤費削減のために、政府が数年前から率先してテレワークを導入し、その経験からガイドラインを作成しています。テレワーク式の副業も多いです。

そこで、テレワークをするなら、雇用式の本業でのテレワークと副業テレワーク(委託・雇用両方)とどちらが良いのかもあわせて考察していこうと思います。

業務委託

業務委託に関して、思いつく限りのメリットとデメリットを挙げてみました。

副業するなら雇用契約と業務委託とどちらが良いのか?-表1_業務委託のメリット・デメリット

現在、私も主婦業の合間に業務委託契約でライターの仕事をしています。私は、個人契約の業務と、クラウド上のサイトを介しての業務の両方で仕事を受けています。

個人契約の場合はトラブルをなるべく回避するために、私の場合、信頼できる紹介者を介してでないと契約をしません。お仕事の紹介者が、何かあったときの保証人のようなイメージです。

その代わり、興味本位の仕事や新たな分野への挑戦ができにくいのが現状です。

一方、クラウド上の仕事は、サイトに登録してそこに掲載されている気に入った仕事を受けて、サイトを介して報酬を払い出して貰えます。そのため、契約や報酬に関するトラブルはサイトの管理会社が可能な限りサポートしてくれるので安心です。

また、クラウド上の業務はクライアントの募集に対する応募なので、依頼して貰えるかどうかわからないものの、ご縁があれば長いお付き合いもでき、自分で開拓する喜びが味わえます。

このように2種類の契約形態を、私は楽しんでいます。

そして、税法上は、個人事業主として確定申告で白色申告をしています。

私の場合、夫の両親と同居し、家業の手伝いもあるため、自宅で行えるライターの仕事は自分のライフスタイルにあわせて働ける、とても快適な働き方です。

一方、デメリットもあります。

まずは、確定申告を自分でしなければなりません。

スケジュール管理の上手でない人の場合は、マネージャー的な存在が必要かもしれません。そうしなければ、納期や自己の健康管理が上手く処理できずに、仕事を失ってしまうこともあります。

業務委託契約の場合、納期厳守が基本ですから、健康管理とスケジュール管理が一番重要です。一度でも納期を守れなかったら「次は無い」と言っても過言ではありません。

また、労働基準法で守られた労働者ではなく、全てが自己責任となる丸裸の労働者なので、契約書を交わすことで自分の身を自分で守らなければなりません。(ただし、クラウド上のサイトの仕事は例外です。)

契約書については、労働基準法のように決まったモデルフォーマットというものがないため、自分が必要と思うことを仕事の依頼者と話し合って決めます。企業側が用意することが多いのですが、その時十分に吟味する必要があります。

私が過去に経験した契約書に恐ろしいものがありました。当時私は署名記事を書いていたわけでもないのに、契約書には次の項目がありました。

・成果物の著作権を放棄する。
・将来永久的に当該成果物に関して損害が発生したときは、甲(私)がその賠償責任を負う。

署名記事を書いているわけではありませんので、著作権放棄には異存はありません。しかし、著作権を放棄させその記事を買い取り、利益配分を一切渡さないにも拘わらず、「何か起ったときには、『将来永久的に』一切の責任を負わせる」という恐ろしい内容です。

ちなみに無記名記事の場合、「コピペが発覚したときは報酬を支払わない」というのが一般的です。

ここで少し、著作権の責任の所在について解説します。

署名記事は、著作権を放棄しても、署名記事である以上内容の書き換えは著者の許可が必要です。そのため、将来的に著作権侵害問題が生じた場合、賠償責任を負うこともあります。

一方、無記名記事は編集も可能ですから、編集可能である以上記事買い取りと同じなので、もはや著者の記事に関する著作権責任は存在しません。ただし、買い取りの際に、コピペ等が多かったり、悪質な著作権侵害がある場合は、記事の買い取りを拒否する権利が企業側(依頼者側)にはあります。

話を戻すと、先ほどの企業様は「何か起こったときの用心のために弁護士が書き加えただけで、そんなことは滅多にないから気にしないでサインしてくれたら良いから」と気軽な署名といった感じでサインをさせようとしてきました。

でも将来、著作権関連のトラブルが発生したとき、その企業は責任を丸投げしてくる事は目に見えています。

このような、あまりにも不平等な契約は無効となる可能性も高いのですが、契約は双方の合意ですから、契約書がある限り、その契約書を無効とするには裁判が必要となります。安い報酬で、将来裁判沙汰に巻き込まれるのは、割に合わないものです。

このような理不尽な契約内容がないかどうかをチェックして、成果物に対してちゃんと報酬を支払って貰える正当な契約を交わす必要があります。(余談ですが、未来永劫著作権の責任を負うのは、それなりの報酬と利益配分を得て、署名記事を書いた場合です。)

ライターの契約書を例にとって解説しましたが、何の仕事においても、報酬・納期、契約解除の条項、責任や賠償関係に関する事項等は、十分吟味する必要があります。

契約書を交わすことについて自信がない場合は、保護機能があるクラウド上のサイトに登録して、多少手数料を取られてもそのサイトを介して契約をし、報酬をもらう契約形態がお勧めです。

副業するなら雇用契約と業務委託とどちらが良いのか? 少なくともその違いは知っておいた方が良い。-1_r

雇用契約の副業に関して

副業するなら雇用契約と業務委託とどちらが良いのか?-表2_雇用契約のメリット・デメリット

雇用契約の副業のメリットは、何といっても労働基準法の保護のもとの労働者でいられるということです。何か問題が生じたときには、会社が責任をとってくれます。

労働時間が決められていますので、自分ができる範囲でシフトを組んでしまえば決まった収入が確保できます。

一方、上司の指揮命令下で働いていますので、自分の自由にする事はできません。その分自己責任の範囲が業務委託に比べて大幅に削減されますので、自分で負う責任が小さい点についてはメリットといえるかもしれません。

自由度と責任の大きさは反比例の法則にあると言って良いでしょう。時間的な拘束が生じますし、その上非正規雇用ですから、同じ仕事をしているにも拘わらず、正社員に比べて賃金が安いこともデメリットとして挙げられます。

たとえば、ライターを例にとっても、雇用形態の時給で働くライター兼編集という仕事もあります。この場合、時給で賃金が支払われるのですが、どんな人気記事を書いても、記事のできが良くなくても、時給は同じです。委託業務契約ほどの報酬は得られません。

次は、副業に多いテレワークについて解説します。その前に、政府が推し進める正社員のテレワークによる働き方改革におけるメリット・デメリットを検証してみましょう。

政府が推し進めるテレワークのメリットとデメリット

働き方改革によって、2000年当初からクリエイティブ系の職種で広まりつつあったテレワークが改めて注目を浴びています。現在はDVI(仮想デスクトップ)よるテレワークを取り入れる企業が増えています。

厚生労働省は、新時代に合ったテレワーク導入のために、政府が自らテレワークを導入し、その実体験をもとにさまざまなガイドブックをつくっています。

厚生労働省「テレワークではじめる働き方改革 テレワークの導入・運用ガイドブック(平成26年度)」に、政府が導入して見て感じたメリットが掲載されていたので抜粋してみました。

副業するなら雇用契約と業務委託とどちらが良いのか? 少なくともその違いは知っておいた方が良い。-2

出典:【厚生労働省】テレワークではじめる働き方改革 テレワークの導入・運用ガイドブック(平成26年度) からのスクリーンショット

このガイドブックには良いことばかりですが、デメリットも検証してみました。

・プライベート時間が削減される
・時間がルーズになる
・休憩が取りにくく、仕事に追われる
・チームワークが必要な業務に関してはコミュニケーションの壁ができる
・上司への報連相が疎かになりがち

このようなデメリットがあるものの、スケジュールの共有や業務の進行を上司が管理する工夫もできます。

これらの工夫を徹底すれば、家族の介護や育児、病気療養中等で、家にいた方が働きやすい人にとっては、働けるメリットを重視するでしょう。

また、雇用されている以上、労働基準法で守られています。

しかも、働き方改革による2020年の労働基準法大改正に向けて、労働時間や健康管理、休憩時間のとり方など、さまざまなルールによってテレワークによる自由な働き方を守るべく、政府が一生懸命検討を重ねています。

副業解禁に向けてのモデル就業規則の改定もそのひとつです。

業務委託の副業と雇用の副業と本業のテレワーク、どれが一番お得なの?

副業を認める企業の目論見とは?

副業が解禁になったとはいえ、副業には、さまざまな規制をもうけている企業がほとんどです。

副業解禁を推進する政府と企業の本音。〜働き方改革のメリットデメリット〜
で副業解禁についての企業の本音を詳しく解説していますので、そちらもご参照ください。

従業員が効率よく副業をする場合、働きやすい普段の業務内容で副業をするのが一番です。しかし、多くの企業はそれを許しません。

なぜなら、お金をかけて社員を育て上げたスキルがそのまま外部の企業の即戦力として利用される事を、本業の企業は納得しないからです。しかも、企業の情報が漏洩してしまうリスクもあります。

そのため、多くの企業は同業種での副業を認めていません。

そして、副業解禁を実施した企業は、副業をする場合は会社への届け出を義務づけ、情報漏洩がないことを企業が確認をするルールを設けています。

こうして、副業解禁の新たな就業規則を設けて、この改訂就業規則に少しでも反して勝手な副業を行った従業員は、懲戒解雇処分が待っているというわけです。

では、企業はどのような副業を認めているのでしょうか。

旅行会社で翻訳のアルバイトを推進することで、旅行会社の業務に活かそうとする企業もあります。他にも入社2~3年の社員に限り副業を許し、グループ企業での副業を斡旋したり、業種を定めて、まるで社外で給与をもらって研修を積んでいるかのように、その副業業務を社内の業務に活かせるような職種に限定したりしています。

さらに、企業としては、賞与や昇給のダウンを副業で賄ってもらって、従業員の不満を抑えたりするメリットを求めています。

副業するなら雇用契約と業務委託とどちらが良いのか? 少なくともその違いは知っておいた方が良い。-3_r

従業員は業務委託副業と雇用副業、本業でのテレワークのどれがいい?

雇用副業 vs 業務委託副業

副業の業務に楽しく従事している場合、従業員は副業に対してストレスを感じることなく、本業の業務のプラスにもなって、従業員の収入アップにも繋がり一石二鳥といえるでしょう。

副業の時間が少なく給料もわずかなら、労働基準法で守られ、責任の範疇が狭い雇用副業が安心です。

一方、副業といってもピンキリですから、副業でスキルアップした結果口コミで業務の幅が広がる可能性もあります。また、自分で営業して仕事を獲得する技量があるなら、業務委託の方がお勧めです。業務委託の副業収入が本業を上回ることもあるからです。

ただし、スケジュール面、健康面、業務委託契約面において全てが自己責任となるので、法的知識だけでなく、自己管理の覚悟も必要です。

ストレスの多い副業は本業を危うくするので、テレワークがお勧め?

しかし、副業は、同業種を禁止する企業がほとんどです。

自分のスキルを活かした副業ができない場合、新たな業種の副業を楽しめないばかりか、効率の良い副業ができずに、ストレスの要因になってしまうこともあるので、こういったケースでの副業はお勧めできません。

家計のため、お小遣い稼ぎのためとはいえ、ストレスにしかならず、本業に支障をきたすこともあるからです。

お小遣い稼ぎで仕方なく副業を試みるくらいなら、本業で残業をした方が時間給的にも圧倒的にお得です。

このようなタイプの人こそ、テレワークで自分の得意な業務を正社員の状態で自由な働き方をした方がお勧めです。

なぜなら、労働基準法で守られた中で残業代も支払って貰えるし、トラブルが生じた時も上司や会社に頼れば処理して貰えるし、労災も適用され、さまざまな点で安心して働くことができるからです。

ただし、これは本業の仕事が好きな人の場合です。

本業の仕事もそんなに楽しいわけではない人は、どっちをやってもストレスです。自分に合った仕事を探すために、自分に合った異業種の楽しめる仕事を探すのがお勧めかもしれません。だったら、人生のほとんどを仕事に費やすのですから、楽しめる仕事に就くために自分探しを試みているのも一興かもしれません。

まとめ

この検証は、2018年11月現在の働き方改革関連法案情報をもとに書いています。

2020年の労働基準法大改正に向けて、働き方改革の法案は、山積みになっている課題撲滅を目指し、内閣府主導で政府が議論を重ねています。

そんな中、あなたはどの形体で副業をしますか? それとも、あなたはテレワーク派ですか?

副業やテレワークのメリット・デメリットをしっかりと認識した上で、自分に一番合った働き方を選択しましょう。

今後、政府が働き方改革を進める以上、あらゆる選択肢が用意される時代がいずれやってきます。

AIの導入により、弁護士の簡単な法律相談くらいならAIがこなしてしまう時代です。いつあなたの仕事がAIによって削減されてしまうかわからない時代でもあります。

そんな時代に、副業を本業に転換して、企業に迫られる時代が来るかもしれません。

そんな近未来の働き方に向けて、あなたも自分に合った仕事の在り方を見つめ直す時期が来たのかもしれません。

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