年末になると年末調整、3月15日になると確定申告をしなければならないとアナウンスされますね。会社員は年末調整、自営業であるフリーランスは確定申告と思っている方も多いと思います。しかし、年末調整をして確定申告をする場合もありますし、年末調整の時期に確定申告をするかどうか聞かれる場合もあります。
年末調整と確定申告は同じことをするものなのでしょうか、それとも違うものなのでしょうか。年末調整と確定申告の違いはわかりづらいですよね。
今回は、フリーランスにとって年末調整と確定申告は何が違うのかをわかりやすく解説していきたいと思います。
フリーランスにとって年末調整とは?確定申告とは?
フリーランスが年末調整をするとき
フリーランスでもパートやアルバイトをしている場合、パート先やアルバイト先から給料を受け取ります。この場合、ほとんどのパート先やアルバイト先の会社で、給料から所得税を天引きされていると思います。これを、所得税が源泉徴収されているといいます。
所得税の源泉徴収は、社会保険料を控除した金額をもとに、国税庁で発表されている「給与所得の源泉徴収税額表」を使って行います。給与所得の源泉徴収税額表には月額表と日額表があり、給料を月額払いしている場合には月額表を使います。
この月額表は、会社に提出した扶養控除等申告書を提出したかどうかで、提出した人は甲欄、提出していない人は乙欄で金額をみます。また、甲欄の人は、扶養控除等申告書に記載した扶養家族の人数によって金額が変わってきます。
一般的に、源泉徴収税額表の源泉所得税の金額は、1年間を通して計算した源泉所得税の金額より高くなります。1年間を通して源泉徴収税を計算するときには各種控除額を考慮するので、その分の税金が安くなるからです。源泉徴収された1年分の所得税の金額と、1年間を通して計算した所得税の金額の差額を調整するのが「年末調整」です。年末調整で、源泉徴収で払いすぎた所得税があるときには還付され、不足がある場合には追加で納付を行います。多くの場合は、還付になります。
フリーランスが年末調整をするときは、パートやアルバイトをしていて、会社で給与から所得税を源泉徴収されているときです。
会社員の方が副業でフリーランスの仕事をしている場合については、
『会社員が副業をする場合の税金について』
に詳しく掲載しています。
また、会社員(パートやアルバイトを含む)とフリーランスを掛け持ちしている場合の確定申告については、
『ダブルワークの確定申告!フリーランスとアルバイト掛け持ちで注意すべき税金』
に注意点を掲載していますので、参考にしてください。
フリーランスが行う確定申告
フリーランスの仕事をしていて収入があるときには、確定申告を行わなければなりません。確定申告は1月1日から12月31日までの所得について、翌年の3月15日までに所得税を計算して申告し納付する手続きです。確定申告期限に間に合うように、日頃から経費の集計などをしておくとよいですね。
パートやアルバイトを行っている場合でも、フリーランスとしての所得が20万円を超える場合や、パート先やアルバイト先が2か所以上ある場合には、パート先やアルバイト先で行う所得税の源泉徴収や年末調整だけでは、1年間の所得をあわせて計算する所得税の計算を正しく行うことができません。したがって、1年間の所得と所得税を確定申告で確定し、税務署に申告しなければなりません。
確定申告では、誰でも基礎控除額38万円を所得から控除することができます。つまり、所得が38万円を超えなければ基礎控除額の範囲内になり、確定申告は不要となります。
フリーランスが確定申告をするとき、フリーランスとしての収入が原稿料などの報酬の場合には、報酬から源泉徴収されている金額があるかどうかに注意しましょう。源泉徴収されている金額がある場合には、すでにその分の所得税を納付していることになりますので、計算した所得税から差し引くことができます。どれだけ報酬と源泉徴収されているかは、報酬の支払先からもらう支払調書で確認することができます。
フリーランスが確定申告をするときの注意点などは、
『【これだけわかれば安心】フリーランスは忘れずに確定申告をしよう!』
『【フリーランス必見!】確定申告で陥りがちな間違いや迷うポイント』
にまとめてありますので、参考にしてください。
年末調整と確定申告の違い
年末調整も確定申告も、1年分の所得から正しい所得税を計算する手続きという点では同じです。
年末調整は、給料の金額、会社に提出する扶養控除等申告書と保険料等控除申告書をもとに、会社が行います。これに対して確定申告は、自分で所得税を計算し申告と納付を行う手続きです。
年末調整は、限られた情報をもとに会社が行うものですので、たとえば医療費控除や他に事業所得がある場合には、会社で年末調整を行っても正しい所得税を計算することができません。これに対して確定申告は、正しい所得税を計算するために、あらゆるケースを想定した計算方法が用意されています。
年末調整ではできない手続き
フリーランスの仕事をしていない会社員は、ほとんどの場合は確定申告をする必要がありません。しかし、給料での年間の収入が2,000万円を超える場合、2か所以上の会社から給料をもらっている人については、確定申告をしなければならないことが定められています。
以下の場合には、年末調整でこれらを行うことができませんので、確定申告をすることで制度を適用します。
・医療費控除をしたい場合
・住宅ローンを組んで住宅ローン控除をしたい場合
・ふるさと納税をして寄付金控除をしたい場合
・災害や盗難で損害を受け雑損控除をしたい場合
年の途中で退職 かつ 年末に所属している会社がなく年末調整をしていない場合も、確定申告をすることで1年間の正しい所得税を計算できます。
これらの控除を受けたい場合や退職して年末調整をしていない場合には確定申告をしないこともできますが、確定申告をしたほうが税金や安くなります。
年末調整をしたあとでも確定申告をするときがある?
年末調整と確定申告は、どちらも1年間の正しい所得税を計算して納付する手続きですので、多くの場合はどちらか1つの手続きをすればよいことになります。
しかし、年末調整をしたあとで、年末調整で手続きできない医療費控除などの控除を受けたい場合や、生命保険料控除などの控除証明を年末調整で会社に提出し忘れた場合には、改めて確定申告をすることができます。
またフリーランスの方は、パート先やアルバイト先で年末調整をしてもらっても、フリーランスとしての収入については会社で申告してもらうことができませんので、確定申告もしなくてはなりません。
年末調整をした人が確定申告を行うときには、年末調整で考慮しなかったフリーランスとしての収入や医療費控除などの情報を確定申告書に記載し、年末調整をした部分については年末調整をした結果が記載されている源泉徴収票にもとづいて記載します。
スタッフを雇っている場合の年末調整
フリーランスが年末調整と関係する場合には、自分がパートやアルバイトをしている場合のほかに、スタッフを雇っていてスタッフの給料から所得税を源泉徴収している場合があります。この場合には、スタッフの年末調整をしなければなりません。
スタッフの年末調整をするには自分で計算するのは大変ですし、間違えるとスタッフの所得税の計算を間違えてしまうことになりますので、給与計算ソフトで行うか税金の専門家である税理士に依頼するとよいでしょう。
フリーランスがスタッフを雇った場合の年末調整のポイントについては、
『フリーランスが従業員を雇ったときの年末調整の準備のポイント』
にまとめてありますので参考にしてください。
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